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心にのこる出会い154 自分で建てたビルに住めなくなったSさん

2022年09月25日  

カープ、
巨人がまけてくれたので 差が縮まりました。
今日も 中日の大野投手が 巨人に勝ってくれないですかねえ。
最終戦までもつれこみそうなら 最終戦のチケット買いたいところですね。

 

さて、毎月最終日曜日は 心にのこる出会いです。

Sさんは87歳
自分のビルの2階に 御家族で住んでおられました。
1階は駐車場、3階より上は賃貸となっておりました。
エレベータはなく、階段での上り下りですが、階段がせまく手すりは設置されておりませんでした。

Sさんは 心臓の病気や 癌など、大きな病気を何度もくぐりぬけて来ました。
ところが最近では 肺炎入院を繰り返すようになってきておりました。
今回は、肺炎が治って退院した その2日後に また肺炎をおこして再入院となったのでした。
体力低下もみられますので、在宅医療の体制をととのえて退院しましょう、ということになり、病院の地域連携室から 当院に依頼がありました。
コロナ禍のため、病院での退院前カンファレンスは ありません。
退院後の御自宅で 在宅チームが勢揃いすることになったのでした。
御自宅で 私たちのはじめての出会いです。

Sさんは 足が弱っており、室内のつかまり歩行が やっとです。
また、水分でムセることが わかりました。
トロミをつけるよう指導されての退院です。

リハビリをおこなうのに、栄養も必要です。
栄養と運動は 2本柱で、どちらが欠けてもダメなんです。
ところが Sさんは 歯も悪くなっておりました。
肉も これまでのようには食べられない状況でした。

Sさんは、これまで がんばってきたプライドもあったのでしょう。
自分の体力・体調が落ちてきていることを 認めたくない気持ちもあったのだろうと思います。
「自分は出来る」、と 在宅チームの提案はなかなか受け入れてもらえませんでした。
たとえば。
介護保険はこれまで要支援1という、一番軽いランクでした。
このままでは訪問看護など 必要な回数 はいることが出来ません。
本人は 「介護保険などいらない」と言うのを 奥さんが説得を重ねて、再認定(=区分変更)の申請を出すと、要介護3でした。

水分は飲んでいる、とSさんは言うのですが、 実際には飲んでいる量はかなり少なく、脱水気味となって、訪問看護さんによる点滴も何度か必要なほどでした。
区分変更して、訪問看護さんがしっかり入れるようにしておいて良かった、というのは Sさんは その時がきて 初めてわかったのでした。
(在宅チームは、「最善を期待し、最悪に備える」、というのが 基本姿勢です。)

歯の治療について、訪問歯科の導入も提案したのですが、Sさんは 同意されませんでした。
足がよくなったら かかりつけの歯科に通院する、と言い張ります。
歯を治さないと しっかり食べられない、栄養が足りないとリハビリはすすまない。
そこで 栄養補助食品を摂ってもらうことは なんとか同意してもらいました。

 

退院して3ヶ月。
Sさんのリハビリも なんとか順調にすすんでいました。
「理学療法士さんといっしょに外を歩いてみましょう、疲れたら座れるように車いすを用意して」
というところまで来ました。
ところが、
ある日 また肺炎をおこしてしまいました。誤嚥性肺炎で入院です。
一人で外に出てしまい、さがしたところ喫茶店でコーヒーを飲んでいるところを 発見されたのだそうです。
喫茶店にはトロミ剤は もちろん ありません。
「自分は歩ける、飲める。トロミなんてイラナイ!」と 思われていたのでしょう。

今回の入院では、さすがに 御家族も 限界と思われたようです。
Sさんに 認知症症状も少し出てきておりました。
無断外出を繰り返されたのでは たまらない。
有料老人ホームに入居されることになったのでした。
ここで私たち在宅チームとは お別れです。

Sさんは、その3ヶ月後に お亡くなりになったそうです。

【解説】
自分が建てた家、自分が建てたビル に 住んでおられる方は おられます。
その2階あるいは3階に住んでいるという方も 珍しくありません。
ところが
要介護状態になってきて、はじめて気づく問題点があるのです。
「階段しかない、家から外に出られない・・・」
あとからホームエレベータが追加設置できる家・ビルは ほぼ皆無です。
階段の幅が広ければ、「階段昇降機(リフト)」が設置できる場合もありますが、
階段が狭ければ それも無理です。

そうなると選択肢は3つです。
1:外出が必要な時には 誰かに背負ってもらう。
息子さんやお孫さんが若くて屈強であれば可能ですが、
それでも「病院通院時」など 限られた場面しか出来ないことでしょう。
2:家から出ない生活を続ける。
在宅チームが全面的に関与できれば 可能です。
最期も自宅で、も可能です。
急変時は病院へ、ということであれば 救急隊員が担いで降りてくれます。
3:自宅生活はあきらめて、バリアフリーの施設・老人ホームに入居する。

働いて働いて、ようやく建てた我が家に 住めなくなる。
そういう方も けっこうおられるのです。
「年取って 弱ったら 階段は上り下りできなくなる」
働き盛りの頃には そんなことは想像も出来なかった、ということなのですね。

家やビルを建てるのであれば。
「年をとったら1階に住む」という設計にしておけば
この問題は 解決できるかもしれないです。

 

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広島ブログ

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考えを深めた方・考えを改めた方も多いと思います。
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