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救急車とオオカミ少年

2010年02月10日  

2月5日、広島市中消防署との意見交換会に出席しました。
たくさんのデータが報告されましたが、一点だけ御紹介します。
救急車の 不搬送 について。

広島市消防局の救急出動は平成21年は48189件でした。
その前年は48048件で、出動件数は増加しています。
このうち、搬送人員は 42210でした。
およそ6000件、約15%は、
救急出動したが患者を病院へ搬送していない、
ということになります。
(1回で患者1名を搬送するとした場合。ふつうは救急車1台では患者1名です)

この6000件は、「不搬送」と呼ばれるものです。
なぜ不搬送という状況が生じるのか?

たとえば、
路上に誰か倒れている、という119番。
救急車が行ってみると、よっぱらいが寝ているだけで、
呼びかけてゆすると目をさまして、起きて歩いてどこかへ行ってしまった、
(つまり救急車は必要なかった) という場合。
まあ、倒れているのが病人かどうかわかりませんので、
この119番通報や出動は仕方ないです。

困るのは、119番をかけてくる常習者がいる、ということなのです。
よっぱらって119番通報してきて、
行ってみると、体がしんどいだの、あそこが痛いだの、いろいろ言って
「病院に連れて行け」と言います。
で、連れて行った病院では 「入院させろ」 と騒ぎます。
病院というのは3食・風呂つき・冷暖房完備・昼寝付きなので
自宅にいるよりよっぽど居心地がよい、という人がいるのですよ。

でも、診察しても単なる酩酊者=いわゆるアル中=ですので、
入院させる必要性はないので、帰っていいですよ、ということになります。
そうしたら対応した医師や看護師にあたりちらしはじめ、
ヨッパライ特有のカラミもあり、
みんな時間の無駄、さらには身の危険を感じます。
どなったり、脅かしたり、ひどい言動をする人もいるのです。
そのうえ点滴や検査のお金も払わずに帰っていきます。
以前に入院したことがあれば、その入院費も踏み倒しています。
病院にとっては未収金となり、病院赤字の原因にもなるわけです。

職員が身の危険を感じ、金も払わず赤字になるアル中を、あえて引き受ける病院はありません。
ブラックリストに載るわけです。
どこの病院でも同じことを繰り返しているので
どこの病院でもブラックリストに載っており、
どこも救急隊からの搬送受け容れ要請を引き受けてくれません。

こういう時にも救急隊は通報者宅から帰ってはいけないのだそうです。
可能性のある病院に全部連絡し、救急車引き受けを依頼しないといけないそうです。
でもどこも受け容れてくれませんので、
そのまま救急車は動けないまま何時間でも経過します。
そうして時間がたち酔いがさめて、本人が「もういい、帰れ」 と言って
それではじめて救急隊は帰れるのだそうです。

この間、数時間、救急隊が1チーム そのアル中にかかりきりになります。
その場所から動けないのです。
その時間帯に事故や急病が発生すれば、
他の救急隊がカバーするしかありません。
遠方の救急隊がカバーすることもあります。
救急隊の現場到着が遅れれば遅れるだけ、重症患者の命が助かる可能性は減ります。
救急隊到着が遅れる原因を、こうしたアル中、「119番常習者」が作っているという実状があります。

救急車は有料にすれば良いのではないか、という議論も
こうした背景から出てきます。
救急車が有料になれば、不要不急の119要請は減るのではないか、と。
(→ でも、どうせ「確信犯」の人は 救急車料金も払いやしません。踏み倒すでしょう。)

大嘘つきのことを「千3つ」と言います。
千の話のうち本当のことは3つしかない、という意味です。
こうした119常習者が毎日毎日電話してきて、1000回のうち3回本当の病気があった、としますと、333回に1回、ほぼ年間に1回は本当の病気のことがあるかも、ということになります。

119常習者からの電話は無視すればいいのではないか、とも思いますが、
もしかしたら年1回くらいは本当に病気かもしれない。
ウソだろうとは思いつつも行ってみるしかない。
まさにオオカミ少年の世界です。
救急出動の約15%は、「不搬送」。
このオオカミ少年問題、みなさんは どう考えますか?

私の思う一つの解決策は、
不払いの人は逮捕してはどうか、ということです。
無銭飲食の人が逮捕される、ということと同じような状況のはずなのに
医療費踏み倒しの人は逮捕されていないのです。
広島市民病院クラスの規模の病院では、
年間2億円程度は「医療費不払い」による未収金が発生しており、
病院赤字の原因にもなっています。
逮捕されるとなれば不払いが減り、119常習犯も減るでしょう。

もう一つは、
こんな119番に付き合わなくてよい、
もし本当に病気のことがあっても それは本人の自業自得であって市や消防局は責任とらなくてよい、
と 市民みなさんが認めて、文書化(=条例)することです。
1名の人間が救急車を何時間も不当に占拠することは、
他の大多数の市民にとっては 「公共の利益に反する」 わけです。
公共の利益に反することは、止めていただくしかありません。
止めていただけないのならば市として対応しなくてもよい、ということを条例で定め、
しかも憲法違反ではないという保証が得られたならば
オオカミ少年に振り回されることはなくなります。

消防局も病院もみんな困っています。どうしたもんでしょうか・・・。

頂いたお花~その2
ツバキ、シュロチク
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★新型インフルエンザ情報
予防接種法の改正が検討されています。
現在は高齢者に限定されている「インフルエンザ定期接種」ですが、
新型については高齢者限定をはずしてしまおう、
という方向のようです。

よいことだと思います。
来月くらいの国会で審議される見込み、とのことです。

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