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イタい話 1

2009年06月17日  

私どもは、科学や医学を一般市民の方々にわかりやすく説明し理解していただく、と
いう側面ももつ職業でもあります。
こういった作業は科学コミュニケーションと呼ばれ、これに従事する人を科学コミュニケータとも呼んでいます。
医学・医療だけではなく、もっと広い概念です。
私どもは日本科学未来館で実施された科学コミュニケータ養成講座も受講して、日々はげんでいるところです。

さて、こうした活動をしていると、さまざまなイタい状況に出くわすことがあります。
根拠のない治療を信じてしまい(信じこまされてしまい)、高額なお金をむしり取られている人々が存在するのです。
ニセ科学、ニセ医学という分野であり、科学コミュニケーションの分野では大きな課題となっています。

昨日、某ファ○ケンという血液検査会社が飛び込み営業に来ました。
当院の血液検査は福山臨床と契約しており、電子カルテ連動で充分満足いくシステム運用となっているので即刻お引き取りいただきました。
一冊 会社の情報誌を置いて帰ったのですが、ここにイタい話が2つ掲載されていました。

一つは、ホメオパシー医療をすすめる記事。
象徴的な最もイタい部分を引用すると、
「この玉をレメディと呼び、量子力学的な波動が成分として入っている。」
医師が、こんなことを書いている。
これを、血液検査会社が冊子に掲載している。
まことにイタい!

中学生以下ならば、この文章のおかしい点は指摘できないかもしれません。
高校生でも、物理が好きな人でないと無理かもしれません。
それ以上の、大学生や社会人でも、物理の授業をまじめに受けた人でないと、むりでしょうか。
とくに外国人の名前が書いてあり、○○氏がこれを証明している、と書いてあれば、「よくわからないな」と思いつつ 信じてしまうかもしれません。
素直な人であれば、ほほー、すごいんだ、と感心してしまうかもしれません。

しかし、まじめに物理を学んだ人にとっては、ありえない文章です。
「量子力学」の知識が ほんのちょっとだけでもあれば、おかしい文章だと感じます。
私は理論物理学科を目指していて、途中で医学部に進路変更していますが、その程度の物理知識でも この文章がありえない、というのは よくわかります。
これは、あとから理論を無理に組み立てようとして(こじつけようとして)、馬脚を現した例だと思われます。

でも、この文章、お医者さんが書いたんでしょ?
お医者さまって、秀才でしょ、かしこいんでしょ?
医学的に正しいことを言っているんでしょ?
そう思われる方もおられるかもしれませんね。

医学部を受験するのも、生物、化学、物理から2科目選択の大学が多く、物理で受験していない人もたくさんいます。
人によっては、物理がわからない医師(中学生なみ)、という人も います。
高校で物理を選択しなかったら、そうなりますね。

この話、まだ続きます。
正しい知識を身につけましょう。
知識のワクチン=正しい知識が自分や社会を守ります。

今週の花 バラなど
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新型インフルエンザH1N1 大きな動きはありません。
各地で患者が確認され 30都道府県になっています。予想の範囲。
現在は軽症患者も入院させていますが、今後は軽症者は自宅治療になりそうです。
正式な発表は週末あたりでしょうか。

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