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メディア報道は癌治療に楽観すぎ

2010年06月1日  

Medical Tribune に最近掲載されたニュースです。
同サイトの記事へのアクセスは登録者に限られるため、
同じ記事を紹介しているサイトを捜してきました。
以下に御紹介します。

海外 癌医療情報リファレンス というサイトです。
http://www.cancerit.jp/xoops/modules/cancer_reference/index.php?page=article&storyid=850
一部のみ引用
***
「癌に関するニュース報道では、積極的治療および生存については頻繁に議論されているが、治療の失敗、有害事象、終末期または死亡についての議論はほとんど行われていない」とペンシルベニア大学の研究者らは報告している。

研究者らは、癌に関する436件の新聞記事または雑誌記事を評価し、以下の考察を行った。

調査した記事の32%が生存率を、7.8%が死亡と臨終を扱っていた。
13%の記事が「積極的癌治療は効果を示さない場合がある」と報道していた。
→ 87%の記事は、この可能性を報道していない。
30%の記事が「積極的治療は有害事象を引き起こす場合がある」と報道していた。
→ 70%の記事は、この可能性を報道していない。
57%の記事が、積極的治療について議論しているが、終末緩和ケアまたはホスピスについて議論していた記事はわずか0.5%であった。

コメント:「癌治療についてメディアがこのように報道すると、患者は、癌治療、転帰および予後に関して不適切なほど楽観的な見方を持つ可能性がある」と本研究の著者らは示唆している。
***引用終わり

癌との闘いを続けていく中で、
どうしても「寿命」を考えなければならない時があります。
残り時間が見えてきた時にも闘いをあきらめる必要はありませんが、
もう抗癌剤を使用する体力が残っていない、
次の抗癌剤治療に時間と体力を消耗するよりも
なにか別なことに時間と体力を回した方が
結果として有意義な時間を持てそうな状況にもかかわらず、
それでも強い抗癌剤治療を望む人がおられます。
強い抗癌剤は食欲を失わせ体力を奪い、副作用が生じやすく、
かえって寿命が短くなることも多いことを
我々は知っていますが、
そのことを説明しても理解されない・納得されない人もおられるのです。

抗癌剤治療では、
「とっておきの代打、とっておきの切り札」というものはありません。
効果があり副作用の少ない薬から使用していくのです。
良い薬から、優れた薬から、順に使用していくのです。
つまり、
2番手、3番手、4番手の治療になればなるほど
「効果が弱い または 副作用が強い」
ということになっていくのです。
エースになれなかった薬が2番手3番手以下の薬なのです。
2番手3番手以下の薬に 「過大な期待」 をかけてはいけない
というのが実状なのです。

治療に対する公平な報道は少なく、
「新しい手術法が発表された」、とか
「新しい抗癌剤が開発された」、とかいう情報ばかりが
おおきく取り上げられ報道されています。
ネズミに抗癌剤を使用して効果がどうの、こうの、という情報は
その薬が実用化されるまで5年10年はかかるしろもので、
今がんと戦っている現場の患者・医療者には全く関係がないことです。
専門の学会誌ならともかく、一般の新聞テレビが報道する意義はありません。

こうした 「楽観的癌情報」ばかり報道されていたのでは
自分の置かれた現状の認識を誤ってしまう患者・家族が多いのも
やむを得ないことかもしれません。

そして
これがニセ科学・ニセ医学にはしる人を産む原因の一つであろう、
とも思っています。
現状を把握できない、現状を受け容れられないから
「万病に効く」、「どんな癌にも効く」なんていう情報に
飛びついていくことになってしまう・・・。

マスコミによる癌情報は、状況を正しく伝えて欲しい、と思っています。
(でも、
アメリカですら こうなのですから、
日本のマスコミだと もっとひどいかもしれません。)

今週の花 あじさい
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★新型インフルエンザ情報
とくに新しい情報はありません。

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