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喘息や花粉症に筋肉注射1本 はダメ

2010年03月24日 , 

ケナコルト(R)というステロイド注射があります。
ものすごい大力価のステロイドを筋肉注射するというものです。
私たちアレルギーやリウマチの専門医にとって、
昔から非常に大きな問題となっている治療法なのです。

なぜ問題か、というと、
副作用がおこると取り返しがつかない、ためです。

ステロイドはリウマチ・アレルギー疾患には確かに効きます。
しかし、
高血圧、糖尿病、骨そしょう症、感染症、大腿骨頭壊死などを引き起こしたり
悪化させたりする という副作用があります。
ケナコルトは非常にステロイド量が多く、
しかも筋肉注射なので 約1ヶ月 体からステロイドが抜けないのです。
副作用も強烈なものが長く続くことになります。
これだけ大量のステロイドを打てば、
1本打っただけで 大腿骨骨頭がやられて
自力では歩けなくなり、
人工関節置換術を受けねばならない可能性もあります。

かつては、
リウマチを月1回の注射で治してしまう
と 口コミで患者が押し寄せる医院 というのがありました。
引退間近のおじいちゃん先生がやっているイナカの医院で
ケナコルト筋肉注射をおこなっていたわけです。
広島でも その話は聞いたことがあります。
しかし、
患者さんは副作用の説明を受けていません。
この注射をおこなっている医師も副作用をわかっていないのですから
説明がおこなわれているはずもなかったのです。

結局 大量ステロイドの副作用で体はぼろぼろになり、
専門医・専門医療機関は この後始末に追われることになります。
ねたきりになってしまった人、寿命を縮めてしまった人も
珍しくありませんでした。
医師会が そのおじいちゃん先生を説得して その治療法をやめさせた
(事実上 引退させた)
という事例もあったようなのです。
現在、リウマチではケナコルトを打つ医師は皆無となっています。

現在でも、
花粉症シーズンには筋肉注射1本! と言っている患者さんがいます。
絶対にやめてください。
花粉症は死ぬ病気ではありません。
治療による副作用で命がけ、という治療をおこなう必要はないのです。
副作用についての説明を受けてはいないでしょう??

喘息に関しては、
絶対にやめて、とまでは言いません。
このままだと喘息死するおそれがある、
という高齢者のみ ケナコルトの対象になる可能性があります。
内服や吸入といった治療がうまく使えない高齢者に限って、です。

本日のお勉強
気管支喘息:管理と治療の進歩
喘息維持療法のコツ
日本内科学会雑誌 2009年12月
神戸市立医療センター西市民病院 石原 亨介 先生
要点
軽症例では全ての症例にICS/LABA合剤が必要ではない。
過去に発作を繰り返した症例ではICSの減量は急ぐべきではない。

この論文でトリアムシノロン(ケナコルト)についての記載があります。
ステロイド依存例や短期ステロイド内服頻度の高い例では、抗IgE療法が考慮されるべきであろう。しかし、それでもコンプライアンスに不安があり発作入院や喘息死が危惧される症例では長時間作用型のトリアムシノロン筋注の緊急避難的使用もやむをえない選択であろうと思われる。
となっています。
いろいろ標準治療や新薬を試みて、
それでも入院や喘息死が避けられそうにない、という時の
「緊急避難」として、
考えるということです。

けっして
花粉症に注射1本!
といった手軽なものではない、ということを御理解ください。

今週の花 カーネーション、アルストロメリア、スイートピー。
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★新型インフルエンザ情報
3月23日、ワクチンの流通在庫を販売会社に回収する、
ということが厚生労働省ホームページにアップされました。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/info_medical.html#section02

でも、内容は
卸業者から販売会社の引き上げについてのみの記載で、
しかも3月26日までに手続きされた分しか
厚生労働省は関知しませんよ、となっています。
実質3日間しかなく、
月末・年度末の現場はまた厚生労働省通知1枚でドタバタに巻き込まれます。

医療機関の在庫分については何も記載がありません。
卸業者のみを救済するつもりなのでしょうか?

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