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心にのこる出会い159 虐待事例だったNさん

2023年02月26日  

【お知らせ】
都合により3月4日(土)は 休診とさせていただきます。
御迷惑をおかけし申し訳ございませんが、どうぞ御了承ください。

 

昨日も 新規の在宅患者さんの往診がありました。
「まだまだ大丈夫」・・・
本人も御家族も、癌の進行を認めたくないという気持ちはわかりますが、
癌の末期では、いったん状態が下り始めると 急降下となります。
残された時間は あまりない。
はやく訪問診療や訪問看護の体制を整え、 信頼関係作りをはじめないといけません。
「まだまだ」と 先延ばしにするのではなく、早め早めに体制をととのていきましょう。

 

さて、毎月 最終日曜日は 心にのこる出会いです。

Nさんは81歳。
夫から暴力をふるわれ、食事も食べさせてもらえない、という通報があり、
市が介入し、緊急対応として 特別養護老人ホームに入所されてきました。
いつから認知症があったのか、以前のことは 不明なのですが。
認知症の高齢者が 家族から虐待を受ける事例は しばしば みられます。
当事者を引き離し、本人の安全を確保する、というのが 最優先となります。
こうして入所されたNさんと 当方のはじめての出会いです。

入所されて3日目。
食欲がない、便秘である、と 報告がはいりました。
下剤などで排便コントロールをおこないましたが、
それでも食欲は出てきません。
前の医師からは かなりたくさんの薬が処方されておりましたので
不要不急の薬は 全部中止したところ、
その2日後からは食事がとれるようになり、笑顔もみられるようになってきたのでした。
ホームで友達も出来ました。

認知症の症状には波がありました。
よい時は にこにこ笑顔で 何の問題もありません。
「先生」、「先生」と 笑顔で慕ってくれておりました。

時には妄想、暴言、暴力、感情失禁が出ることもありました。
このため 認知症の再評価をおこなったところ、
長谷川式認知症スケールで5点(30点満点)という、高度の認知症でした。
認知症の興奮を抑えるタイプの薬を使用し、 少なくとも暴言・暴力・感情失禁は消えていきました。

Nさんには 大腿骨骨折の既往歴があり、
歩行が不安定で、しばしば転倒もされました。
腰椎圧迫骨折、のちには恥骨骨折もおこし、
寝たきりになってしまったのでした。

入所されて3年目。
Nさんの食事量が減り、眠る時間も多くなってきました。
心不全など持病も悪化してきており、今度は 回復は難しい。
本人および御家族(御兄弟)と相談し、最期までホームで、可能な範囲内の対応で、
ということになりました。

そこからも 小さな山あり谷ありが続きましたが
その2年後 Nさんはホームで静かに旅立たれました。

 

【解説】
認知症の高齢者が 家族と暮らしていると 虐待を受ける場合があります。
「ものを忘れる」程度であれば 虐待までに至ることも少ないのでしょうが、
尿・便の失禁がはじまると 虐待がみられるような印象があります。
夫婦二人暮らしの場合においては
家庭内で どのように生活されているのか、外部の目が届きにくいです。
とくに 高齢男性が 認知症の妻を介護する、という状況だと 虐待がおこりやすいです。
「何度言ってもわからないので 叩いた」ということになるようです。

虐待する側の人間にも 認知症が生じている場合もあります。
認認介護 と呼ばれる状態です。
こうなると ケアマネージャなど 外部の人間が介入して生活全般を支えるしかありません。
早く適切な状況に落ち着かせないと いけません。

虐待疑いの通報があれば 市が介入します。
助言程度で改善する場合もありますし、
強制的に別居させ 本人の安全を確保する事例もあります。
場合によっては、本人についての情報は 虐待している人物には 一切知らせない、という対応となることもあります。
Nさんも こうした方式がとられたのでした。

家族がついているから 大丈夫だろう、とは限らないので
御近所さんの目が とても大切になっているのですね。
「あれ? 何か ヘンだな?」 と感じたら
とにかく民生委員さんや地域包括支援センターに 御一報をお願いいたします。

 

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