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心に残る出会い1

2009年06月28日  

新型インフルエンザH1N1情報 大きな動きはありません。

18日、大阪での日本緩和医療学会帰りに姫路駅で珍しい車両をみました。
山陽新幹線と九州新幹線の乗り入れにそなえての試験車両です。
2年後に乗り入れする予定だそうです。
九州各地が、便利になりますね。
P1090560.JPG
毎月の最終日曜日のブログには、心に残る出会いを御紹介しようと思います。

心に残る出会い1
わずか1回だけの出会い

Mさんは84歳、奥さんと2人暮らしです。
数年前に大腸癌の手術を受け、人工肛門となっていましたが、
ストーマ処置も自分でできるほど しっかりした方でした。
次第にパーキンソン病が進行し、ねたきり生活となってきましたが、
ときどきは介助で病院に通院していました。
ふだんはヘルパーさんが時々はいる程度で、
訪問看護、訪問診療なしで 自宅でおだやかに生活されていました。

ある日、ケアマネージャーさんから電話がありました。
数日前から熱が続き、下がらない。
食事もとれなくなってきたので往診してほしい、と。
緊急往診しました。私たちの、はじめての出会いです。
診察したところ、肺炎でした。
しかも酸素がかなり下がっており、重症の肺炎です。
「肺炎で、しかも重症です。ただちに入院したほうが良いです。肺炎は、命にかかわります。」
とお伝えしました。
すると、
「私はもう死ぬ覚悟はできている。病院には行きたくない。」
とおっしゃったのです。
それを聞いた奥さん、とたんに涙があふれはじめました。
体調が悪くなったらどうする、死ぬときはどうしたい、というような話は、夫婦でこれまでまったく交わされたことのない話だったのです。

普通なら、肺炎は入院です。
でも、本人はもう入院はしたくない、と常々思っていた。死んでもよい、とも思っていた。
在宅で診ること、そのものは可能です。
毎日点滴治療を自宅で受けることは可能です。
その治療で、回復する場合もあるし、残念ながら助からない場合もあります。
最期を自宅で看取ることも、できます。
しかし、奥さんにとっては寝耳に水の話で、そんな覚悟は全くできていない話でした。
「急にそんなことを言われても・・・。」
涙は止まりません。

それからしばらくの時間、ご夫婦と私たち、それにヘルパーさんのみんなで相談しました。
結局、入院することに本人も同意され、創立記念日で休診日だったかかりつけ病院へ連絡し、緊急入院となりました。
肺炎は、治療によって回復することが期待できる病気だから、
治療して、良くなって、また家に帰ってくればいいじゃない、と。

しかし数日後、連休明けに、病院で亡くなられました。
あのまま自宅で診療させていただいていても、結果は同じだったのかもしれません。
本人と御家族にとって、入院治療と自宅治療と、どちらが良かったのか・・・。

本人が「覚悟を決める」のは、わりと簡単だと思います。
一人でじっくり考える時間を持つことは 可能でしょうから。
その次には、御家族と、ぜひお話なさってください。
普段から、悪くなったらどうしたい、死ぬときはどうしたい、というお話をしていて下さい。
「急にそんなことを言われても・・・」 とならないように、普段から何度でも繰り返し そういう話をしていて下さい。
そうすれば、いざという時に、普段の御希望のとおりに対応させていただくことが出来ますから。

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