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心に残る出会い3 しあわせな認知症

2009年08月30日  

Mさんは78歳、夫と二人暮らしです。
数年前からアルツハイマー病と診断されており、
身の回りのこともほとんどできなくなっていました。
近所に住んでいる娘さんが毎日夕食を届け、そうじ・洗濯をおこなっていました。
玄関には、Mさんがふらっと外に出て行かないように張り紙がしてありました。

最近Mさんがやせてきたので心配になった夫が病院に連れて行き、
胆嚢癌、多発肝転移と判明しました。
他の自覚症状はなく食欲はあるので、内服の抗癌剤治療が開始となりました。
最初は効果あったのですが、次第に腫瘍マーカーも上昇し、
どうやら抗癌剤の効果も期待できなくなってきたようです。
御家族も覚悟を決める時がやってきました。

できるだけ長く自宅で生活させてあげたい。
いよいよ悪くなったら入院しよう。
御家族はそう考え、当院に訪問依頼となりました。

訪問してお話してみると、
Mさんは非常ににこやかに笑顔で応対されました。
私が医師であることを告げ自己紹介すると、
まあまあ、よくおいでいただきました、と手を合わせて感謝されます。
でも、何のために私が訪問しているのか、そんなことは理解できていません。
次の訪問時も、その次も、また最初から同じ会話です。
アルツハイマー病による認知症は、昔のことは覚えているけれども、新しい情報を記憶することはむつかしいのです。

病気に対する不安や心配は、まったくおっしゃいませんでした。
いつも笑顔でニコニコと対応してくださいます。
食欲が少し落ちたり、体重が減ったりしても、むくみが出ても、本人はまったく気になりません。
何か気がかりなことはございませんか?
とお尋ねしても、心配なこと・困ったことが全くないのです。

癌の療養をおこなう時に、どうしても不安・心配という部分があります。
心が悲しく暗くなってしまいやすいのです。
認知症というのは本来であれば大変な病気なのですが、
Mさんの場合、認知症のおかげでとても幸せな療養生活がおくれたのではないか、と思います。
毎日ニコニコとした笑顔で、まわりの御家族、私たちもずいぶん救われました。

次第に下肢のむくみ(リンパ浮腫)、腹水(癌性腹膜炎)というように病状はじょじょに悪化していきました。
息苦しさも出現するようになり、病院主治医の判断で腹水穿刺をおこなうこととなり入院されました。
腹水穿刺というのは、お腹に針を刺して腹水を抜き、体外に捨てる処置です。
腹水が減るので腹部膨満感は楽になり、呼吸も楽になります。
しかし効果は一時的で、すぐにまた腹水が貯まり、同じことの繰り返しになります。
入院後、腹水穿刺は2-3日おきに施行されたそうです。
Mさんはその1ヶ月後に入院のままお亡くなりになりました。

写真は夏ばてぎみのジャムくん。
食事いろいろ工夫しています。
090812_221342jamnatubate.jpg
★新型インフルエンザH1N1情報
設問:
妊婦・授乳婦が新型インフルエンザに感染してしまったら
あるいは妊婦・授乳婦の家族が感染してしまったら
妊婦・授乳婦はタミフルやリレンザを使用すべきかどうか?

日本産婦人科学会のホームページにまとめられています。
http://www.jsog.or.jp/news/html/announce_20090804a.html
答:
検査結果を待たずできるだけ早期に使用開始する。
リレンザよりタミフルが推奨されている。
治療は5日間、
予防は半分量で7-10日間。
副作用は報告されていない。

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