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心に残る出会い137 娘さんが泊まり込んだMさん

2021年04月25日  

選挙に行きましょう! しっかり意思表示しましょう!!
広島県民は わずかな金で転ぶじゃろ、金握らせとけ、とバカにされたんです。 だまっとれん!!!!

 

毎月 最終日曜日は 心に残る出会いです。

Mさんは74歳。
妻をなくし一人暮らしです。
娘さんは遠方で、月1回程度しか帰ってくることが出来ません。
そのMさんが脳梗塞をおこし、家から出るのが難しくなりました。
エレベーターのないアパート3階に住んでいたのです。
介護ヘルパーの導入と、ときどきの通院介助にて生活が続いておりました。
あるとき、検査で肺癌の疑い(画像診断としては ほぼ間違いない)が指摘されました。
精密検査・治療をMさんは拒否し、それ以後 病院に行くこともやめてしまいました。
それから1年くらいたち、急速に食欲が低下し寝たきり状態になってきました。
これはいけない、とケアマネージャさんを通じて訪問診療の依頼があり
御自宅で私たちの初めての出会いです。
今後の在宅支援プランを立てるとき、娘は仕事しており忙しいので、娘のことはアテにしないでくれ、とMさんはおっしゃっていました。

好きだった焼酎・ビールもほとんど飲めなくなっており、
体重が減り、やせが目立っています。
とくに嫌いな食べ物はない、とのことで 栄養補助飲料を処方し、試みることになりました。
念のために血液検査をおこないました。
肺癌の腫瘍マーカーはかなり上昇しておりました。
ほかには、食欲低下をきたしそうな特別な異常値はみられません。
肺癌が指摘されてから1年ですから、癌の終末期にさしかかってきたと考えられます。

 

そこからの進行は急でした。
ほとんど食べられなくなり、食欲増加をねらっての漢方薬やステロイド薬も効果がありませんでした。
脱水であれば点滴の効果があるかも、と点滴を試みても全く改善がありません。
痛みも出てきて オピオイド(医療用麻薬)も開始になり、
息苦しさで在宅酸素も開始になりました。

娘さんの会社には 介護休暇のような制度がありませんでした。
1ヶ月単位で休暇は申請できるが、それを越えたら 会社を辞めるしかない、と言われており、休暇をとることを ちゅうちょされておりました。

癌末期で食べられなくなった場合には 余命は1ヶ月はキビシイです。
すでに食べられなくなって2週間くらい経過していますので、休暇はとられたほうがよい状況です、とお伝えしました。
こうして娘さんは 翌月は休暇をとり、泊まり込むことになりました。

娘さんが同居されるようになり、少し安心されたのでしょうか。
最初は、入浴はしない、着替えもしない、と言っていたMさんですが
介護ヘルパーのすすめで着替えをしたり、 訪問入浴を試みようか、ということにもなってきたのでした。

次第に呼吸はしんどくなってきます。
何度も確認をしましたが、Mさんは入院は希望されませんでした。
最期まで自宅で。
終わりが近くなってきたので、在宅チームが集まって支援プランの変更を相談しました。
その会議のときに娘さんは少し離れたテーブルにいたのですが
「わしの娘を呼んでくれ」 と このときはじめてMさんは 「わしの娘」と呼んだのでした。
娘さんは とてもうれしかったそうです。

その月の中旬のある夜、痰がからんだ感じの息苦しさが出てきました。
でもMさんは、 医者も看護師も呼ばなくてよい、明日朝になれば来るじゃろ、
それでいい、と 話されたそうです。
酸素をめいっぱいに増量しての対応のみです。
翌朝、ストローでお茶を少し飲まれたそうです。
そうしてMさんは その日の昼、静かに旅立たれました。

 

【解説】
残された時間は どれくらいあるのか、見通しはどうなのか。
これは医療側にとって、じつに難しい判断です。
ほとんど食べられなくなっていた方の食欲が回復してきたり、食べないままでも予想をはるかに超えて生きられた方、というのも 私たちは経験しておりますので。
在宅緩和ケアの経験を積めば積むほど 百人百様であることが わかってきます。
ですから 断言は出来ないのです。
あくまで「可能性が高い」として お伝えすることになります。

それでもMさんは 来月を超えて その翌月になることは ないでしょう。
という判断になりました。
休暇を申請したり、誰かに代わってもらう手配をしたり、ということが必要な御家族も多いですから、我々医療者側の判断は大事です。
診断能力・予測能力に 磨きをかけ続けたいと 思っております。

 

花夢の里 ネモフィラ

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当ブログを御覧になり、院長の理念に賛同された方、どうぞ御連絡よろしくお願い申し上げます。

在宅診療は楽しいですし、やりがいありますよ!

“心に残る出会い137 娘さんが泊まり込んだMさん” への2件のフィードバック

  1. おはようございます。

    最後まで在宅治療の意思を貫き通したMさん、強い方だと感じました。

    人が死ぬときはどうしてこんなに苦しいのでしょうか。

    それを見守る周りの人たちも苦しむわけですが、
    そんな家族も支援する、在宅医療を担う皆さまを心から尊敬します。ありがとうございます。

    • origuchi より:

      安芸ときたまご さま
      コメントありがとうございます。

      最期、苦しいですか? 苦しそうな あえぐような呼吸になることが多いですが、(下顎呼吸)、 その段階ではもう苦しくはありません。何十億人・何百億人もの先人たちは 苦しくなく人生を終えてきています。 苦しいとしたら、「最期まで点滴をおこなうなど 不自然なことをして亡くなられる場合」と思います。 食べなくなって、あるいは 食べられなくなって死ぬ場合は 最後は苦しくないんです。
      御家族に対して、自然に、脱水気味で経過したなら 最後は苦しくありませんよ、と 事前に充分お伝えすることが 私ども医療者のつとめだと思っております。

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