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心に残る出会い64 家にいたかったKさん

2014年12月28日  

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毎月 最終日曜日は心に残る出会いです。

Kさんは70歳、一人暮らしです。
自由気ままに生活しており、食事も不規則。
しばしば脱水で病院に受診し点滴を受けたりしてきました。
病院へ通院治療中に、血液検査の異常がみつかり
血液内科で 骨髄異形成症候群と診断されました。
白血病への移行が高いタイプであったため
強力な抗癌剤治療がおこなわれ
クリーンルームでの生活も必要となったのでした。
ところがKさん、
入院が長引くにつれ、クリーンルームから出たい、家に帰りたい
と言うようになりました。
クリーンルームの必要性を説明しても理解されず
医療者に対して暴言・暴力も出てきました。
病院側では、これ以上の入院治療は不可能で
本人のためにもならないと判断され
今後は入院でなく在宅で管理を、
ということになり 当院に在宅医療の依頼がありました。
退院後の患者さんの御自宅で、はじめての出会いです。
ぐったりしている状態での退院であり
じょくそうも出来ていました。
体調はかなり悪い段階での在宅療養開始です。

Kさんは もともと食事も不規則で
水分もあまり摂るほうではなく
ふだんから脱水・発熱・点滴を繰り返しておられました。
退院して数日後には、脱水兆候がみられました。
自宅でも点滴は可能です。
訪問看護にて連日のように点滴をおこないましたが
体調は楽にはなりません。
発熱もみられ、食欲もなくなってきましたが
それでもKさんは 病院に行こうとは言いません。
最期まで家にいる、病院には行かない、という意思表示をされました。

病状は急速に悪くなりました。
痰がからむようになり、吸引器を手配します。
息苦しさも出てきて在宅酸素の導入が決まりました。

Kさんの呼吸が止まっているのを発見したのは
在宅酸素の担当者でした。
その担当者は、まだ入職して日が浅く
人の死に出合わせたことがなく
あわててしまって まず救急隊に連絡、
その次に当院に電話をしてきたのでした。

電話を受け、私が急いで到着した時には
すでに救急隊が心肺蘇生を試みていましたが
反応はまったくありません。
その場で死亡確認となったのでした。

Kさん、短い間でしたが家ですごせてよかったですね。
家に帰りたい、というKさんの強い希望を
病院側も了承して送り出してくださいました。



在宅療養を支えるのは、多職種のチームです。
医師・歯科医師・看護師・薬剤師だけではなく、
ケアマネージャ、民生委員、介護ヘルパー、訪問入浴サービス、
訪問リハビリ、介護ベッドや在宅酸素の業者さんなどと
連携してチームで支えます。
死亡に立ち会う可能性は、チームの誰でも可能性はあります。
息を引き取られた状態を
朝、定期訪問したヘルパーさんが発見することも多いですし、
今回のように在宅酸素の担当者や、訪問薬剤師が発見することもあるのです。
それぞれが、覚悟をきめて担当する必要があります。


望み通り家で最期まですごせて、良かったですね。
私たちは そう考えています。


いただき物です。
マッコリ

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★インフルエンザ情報
静岡県の基幹病院で集団感染。
100名以上の感染者が出ており
2名の死亡があるそうです。
今回流行中のインフルエンザはA香港型。
症状が重くなることも多く、高齢者では命とりになります。
基幹病院に入院して治療しても、死ぬときは死にます。
インフルエンザ死亡は年間2万人程度と見積もられています。
インフルエンザそのもので死亡することもあるし
細菌性肺炎を併発することもあるし、
もともと持病がありギリギリで生きてきていた方にトドメを刺すこともあります。
それは医学の限界です。
インフルエンザは、現代でも「こわい」病気なんですよ。

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