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防府老人ホーム土石流は人災

2009年07月27日  

先日、防府市でおこった老人ホームの土石流災害、
被災当日に施設理事長が これは人災である、とTV取材に答えていました。
県が、上流の木を切ったのが原因だ、と言っていました。
その後、県からの災害警戒情報を防府市が理解せず避難勧告を出すのが遅れた、
という指摘もされています。
情報処理・伝達のミス。これも人災と言えます。

しかし、私は別な考えです。
ここに建物を建てた、ということが人災であり、施設側の責任だと考えています。
それを説明いたします。

その前に、当方の姿勢を まず御理解いただこうと思います。
被害について何か言うとき、
「自分は安全な場所にいて、外野から好きなことを言っていやがる」と
いうように思われてしまえば 反発を招くだけなので、
そうではない、ということをまず説明いたします。
1:当方は阪神大震災の時、医療救援チームとして志願して神戸市に行っています。
今後も医療救援チームの必要があれば現地に行くつもりはあります。
また新型インフルエンザ対策の外来診療協力医療機関にも立候補しており、
自らへの感染のリスクは負っていきます。
自分だけ安全な場所にいて発言、というつもりはありません。
2:阪神大震災までは、私は医療機関の 「建物としての安全」 ということは
考えたことがありませんでした。
鉄筋コンクリートの6階建て、8階建ての病院が倒壊・崩壊し使用不能になるとは 考えたこともなかったのです。
このため、医療救援チームとして神戸に滞在した時、
どういう医療施設が倒壊・崩壊したのか、ということを
できるだけ自分の目で見て確かめ、
今後の安全対策について自分の意見を持とうと考えました。
交代勤務での自由時間には、可能な限り市内をあちこち見て回りました。
それにより「危険な医療施設」のポイントは抽出し、自分なりに理解できたつもりです。
某病院で建て替えが話題になったときには、意見を言わせてもらいました。

このとき培われた「施設の安全・危機管理」という観点から 述べる意見です。

今回の老人ホームは、立地選択を誤りました。
断言してよいでしょう。
そこに建物を建てた人間は、オオバカヤロウであり、人災です。
細い沢(谷)が流れてきて、平地になるという まさに典型的な扇状地に立地しています。
山から下りてきた川が2分岐していく、ちょうど分岐部に立っているのです。
ここに建物を立てれば、もし土石流や鉄砲水が発生した場合にはモロに直撃するだろう、というのは 現地を見なくてもニュースでの航空撮影などを見るだけで 容易に理解できます。
扇状地では、山の斜面から離れて家を建てる、というのは常識です。
しかし、この施設は 安全な場所に建てる、という常識から逸脱しています。
今回、複数の原因=人災=が積み重なって被害につながっているようですが、
その最大の原因は 施設をその場所に建てた判断が間違っている、と言えます。
施設長が、他の原因を非難しているのは 見当ちがいです。

昔から、集落というのは安全な場所に形成されています。
逆に、昔から家が建っていない場所、というのは、何かの理由・歴史があるのです。
日当たり、湿気、洪水、土石流、強風など、何らかの理由で 「家には適さない」 と1000年2000年以上にわたって避けられてきた場所なのです。
昔から地元の人は その場所には家を建てないので、土地代は安い。
新しく家なり施設なりを建設しようとした時に、
空き地に建設するわけですが、
・なぜその土地が空いているのか?
・なぜ安いのか?
ということを考えてみることが絶対に必要なのです。

ブルドーザーやシャベルカーで土地を整地し、
建設できるようになったのは、昭和30年代からの話です。
少々の難しい土地にも 建物を建てるのが 「技術的に」 可能になったのは、ほんの最近のことにすぎません。
しかし、「技術的に建設可能」 というのと 「建設して安全」 というのは 違います。

今回の施設を建設する時には、
「広くて安い土地が入手でき、安く建設できてラッキー」
と思われたのでしょう。
民間老人ホームですので、採算性が重視されるのは仕方ないことです。
しかし、安全性は置き去られました。

もし、どうしても この場所に立てる必要性があるのならば、
安全を確保するために、
敷地の周囲、沢の上流側に がんじょうな防波堤のようなもの を建設する必要がありました。
あるいは、上流側に建物本体の壁面を配し、しかも頑丈な壁に設計する必要がありました。
(上流側に広くガラス戸・窓ガラスを配置したデザインは設計ミスとも言えます、これも人災のひとつ。)

安全には かなりのお金がかかります。
安くて広くて安全な土地建物 というのはない、と考えるべきでしょう。

さて、
ここまで防府市老人ホームのお話でした。
教訓を次に生かしていかねばなりません。
で、 広島市にも、ぎょっとする事例はあります。
地層、地震などの専門家の先生方が、みな一様に
「この場所に建設した人、住んでいる人がいるのは信じられない!」
「自分だったら絶対に住まない!」
と言う場所があるのです。
ヒントは 己斐断層。
この話はまたいつか。

またまたOPI新色のグラデーション☆
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新型インフルエンザH1N1情報
H1N1ワクチンの国内製造がはじまりました。
日本はワクチン製造国なのに、2000万人分の輸入をしようとしている、として
世界から非難を受けそうな状況です。
裕福な国は、発展途上国にワクチンや治療薬を提供するべきであるのに、逆に自国のことしか考えていない日本はヒドイ国である、と言われかねません。

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