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インフル死 推計200人

2010年04月29日 ,

今日はいい天気ですね。
山も新緑で、いい感じです。
でも、街ゆく車に茶色い点々が・・・

黄砂ですね。
呼吸器疾患の持病のある人は、用心を続けましょう。
外出時にマスクは必須。
当方は、ジョギングをするのは まだちょっと待て、の状態です。

インフル死 推計200人 低水準「新型は弱毒」裏付け
4月26日23時52分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100426-00000653-san-soci

昨年度の新型インフルエンザH1N1の検証作業が続いています。
日本の死亡者数は200人弱、
世界的にみても最も低い部類の死亡率におさえることに成功しています。

みなさん、日本の医療水準は 世界最高レベルなんです。
誰でも安く保険診療を受けられる日本の医療制度は、世界のお手本なんです。
アメリカでは国民皆保険制度が ようやく実現できそうだ、
という状況なんです。

日本について、もっと自信と誇りを持ちましょう。

ジャムくん。
雨上がりの公園。草原大好きなので、芝生の上は落ち着きます。
今では立つのがやっと。ほとんど歩けなくなっています。
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機内検疫で発見したのは4人

2010年04月28日

昨日のカープ、マエケンよくやりました。
マエケンでしか勝てませんね~。
開幕時に大竹も離脱、ということがわかった時に、
ルイス・大竹が抜けたらマエケンしかいないじゃないの、と
不安に思っていたのですが、
心配したとおりになってしまっています。
出てこい若手投手!
ぜひ2軍から抜擢してきましょう。

新型インフルエンザ
22万人の機内検疫で発見したのは4人、とのこと。
4月26日11時30分配信 読売新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100426-00000552-yom-sci

現在、昨年度の新型インフル騒動の総括が行われています。
あれだけ ものものしい装備でおこなわれた機内検疫ですが、
機内で発見した感染者は4人だけだった、とのこと。

検疫が実施されている時点で
私たちは 「こんなの意味がない」
ということは指摘していました。

キーワードは、「潜伏期」です。
ウィルスや細菌が体に入ってきたとしても、
すぐに病状として出てくるわけではありません。
ある程度 体内で病原体の数が増え、
そこではじめて症状が出るのです。
感染してから症状が出るまでの時間を
「潜伏期」 といいます。
潜伏期の間は、本人も周囲も、この人が感染者であるかどうか
まったくわかりません。
なにしろ症状がないのですから。
でも体内には病原体はおり、
数時間~数日後には症状が出てくることになります。
(症状が出ないまま終了することも もちろんあります)

潜伏期 というものがあるので、
検疫をすりぬけて国内に新型インフルエンザが入ってくるのは避けられず
時間の問題だ、ということは 専門家は皆わかっていたのです。
舛添大臣(当時)の人気取りパフォーマンスに利用されただけにすぎません。
現在、舛添さんが人気で、将来の総理大臣に期待する人No.1 と
言われていますが、
どーなんかなー、と 思ってしまいます。
ワクチンを大量に輸入する決断、というのは良かったのですけど。

それはさておいても、
来るべき本番、強毒性H5N1のときに 我々はどうすべきか。
今回の騒動をしっかり検証して
次の対応に生かしていかねばなりません。

今月の花
カーネーション、トルコキキョウ、ガーベラ、センニチコウ(?)。
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リウマチの診断基準が変更に

2010年04月27日

学会での報告を一つだけ御紹介します。

関節リウマチの診断基準、新しいものが作られています。
ある病気について検討するときに、
みんながバラバラな病気について検討していたのでは
比較も何もできません。
そこで、みんなで本当に同じ病気について検討できるように
というための基準が 診断基準 と呼ばれるものです。
これまでのリウマチの診断基準は
「明らかに、これは間違いなくリウマチである」
というグループを確定させるための基準でした。

しかし
今やリウマチは早期に診断治療をおこなえば
治癒が期待できる病気になってきています。
そこで
今度の新しい基準は、
「いかに早期にリウマチ患者を見つけ出してくるか」、
という点を重視した基準となっています。

リウマチだ、と診断されて
抗リウマチ薬だけを使用されていた場合と
早期から生物学的製剤を使用された場合とで
病気をおさえこめる率に 明らかに違いがある、というデータも出ています。
つまり
リウマチを早期に診断することが重要、
診断したら早期に生物学的製剤を使用するのが重要、
ということです。

関節変形などが完成した段階でリウマチの診断をつけることは容易です。
しかしリウマチを早期に診断する、ということは
典型的な症状・所見が出そろっていない段階であり、
リウマチ以外の病気を除外診断することが重要である、
ということでもあります。
これはリウマチ専門医の仕事です。

関節が腫れる・痛む、という方は
できるだけ早期にリウマチ専門医を受診してください。
当院院長はリウマチ学会専門医です。

めかりパーキングエリア。
3月の光景です。まだ元気な頃のジャムくん。
後ろは関門橋です。
犬を連れて休憩するには 特に何の設備もないところなのですが、
帰りに九州みやげを買うため ここで休憩。
(王司PA上り線の売店は7月まで休止中です)
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★新型インフルエンザ情報
とくに新しい情報はありません。

広島で学会ができるか?

土日で、神戸のリウマチ学会に参加しました。
土曜日は教育講演など、
日曜はレクチャーコースに参加して、まとまった最新知識を学んできました。
実は学会参加はこれだけではなくて
ほぼ同じ日程で京都で呼吸器学会も開催されていたのです。
そこで日曜昼からは移動して呼吸器学会にも参加。
学会の はしごをしてきました。

広島の開業医、E先生やM先生にも会場でお会いしました。
みなさん、開業医は遊んでばかり、と思ってはいませんか?
もしそうであれば、それは誤解です。
熱心な先生は土日を返上して学会に参加したりして
ちゃんと勉強をされていますよ。

さて、
呼吸器学会やリウマチ学会など、
会員数1万人、学会参加者4-5000人以上、というような大きな学会となると
開催できる能力のある会場は限られてきます。
1000人以上は楽に入るメインホールは当然必要として、
数百人規模の部屋が10室前後は必要になるのです。
このため、こうした大きな学会は、最近では
東京国際フォーラム
横浜国際会議場
京都国際会議場
神戸ポートピアホテル(あるいは国際会議場)
福岡国際会議場
での開催が集中しています。
以前は、学会会長のいる大学の所在地で開催するのが当然で
参加者も全国を旅行する楽しみもあったのですが、
今では中小都市では とても開催できなくなっています。
ですから、近隣地域の大学が主催する学会会場は
地元ではなく上記の会場にて開催するようになってきています。
例えば関東地区の大学が主管する学会は、全て東京で、という具合です。

では、広島では、大きな学会開催はどうでしょうか?
広島にも国際会議場がありますから、開催できるでしょうか?

いいえ、はっきり言って困難です。
国際会議場メインホールは良いとしても
分科会を開催していく部屋が全然足りません。
国際会議場の近くに文化交流会館(旧:厚生年金会館)、アステールプラザも
あるのですが、それでも足りませんし、
そもそも参加者が会場間を移動する、という時点で もう失格です。

4000人の医師が宿泊し、飲食し、おみやげも買います。
経済波及効果は 膨大なものとなることは おわかりいただけると思います。
しかし、適した会場がなければ学会を呼んでくる・開催することが
不可能なのです。

広島駅北口開発、旧市民球場跡地利用など
いろいろな案が出ていますが、
ぜひ 国際コンベンション会場 というものも
念頭においた案を作っていただきたい、と思います。

写真は京都国際会議場
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★新型インフルエンザ情報
とくに新しい情報はありません。

肺炎予防推進プロジェクト「怖いぞ、肺炎! 予防が大事」キャンペーン

心に残る出会い10 便の症状に苦しんだBさん

2010年04月25日

Bさんは71歳、肺気腫のため在宅酸素になっていました。
自宅2階のベッドで生活しており、1階まで下りられず病院への通院もできなくなってきたため訪問診療の依頼でした。

日常生活の上で、ふだんは息切れで困る場面はほとんどありませんでした。
しかし、Bさんは、便の症状に長年苦しんできていました。
便が残った感じがして何回も便意をもよおすとともに、排便のときに痛みがあるのです。これまでに何軒もの医院や病院で大腸・肛門の検査などを受け、いずれも異常なし、とされてきていたのでした。
そうした病院で下剤などが各種試みられていましたが、それでも症状がおさまらず、涙を流すほど苦しんでおられました。
そして排便のためのトイレ移動やいきみで、息切れがするのです。
排便の時には一時的に酸素を増やすなどの対応をおこなう必要がありました。

整腸剤、漢方薬、抗うつ薬など、いろいろ調整して、少しいい方向に向かうように見えた時期もありましたが、効果は長続きしませんでした。
過敏性腸症候群の新薬が出たので、それを試みることにしたのですが、薬の効果が出る前にBさんの体力気力が参ってきて、入院することになりました。

入院してからは息苦しさも急速に悪化。
鎮静薬の使用が開始され、その数日後に亡くなられました。
もっと早く新薬が発売になっていれば、
きっともう少しは楽になっていたのではないか、
と思われることでした。

土日は、日本リウマチ学会に参加してきました。
昨日24日(土曜日)の診療時刻を短くさせていただいたのは
リウマチ学会に参加するためでした。
リウマチ専門医として、新しい情報を知っておくことは欠かせません。
まとまった知識が頭にはいるように
教育セミナーやレクチャーコースといったプログラムを中心に参加しました。
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★新型インフルエンザH1N1情報
とくに新しい情報はありません。

カープ、ほめて伸ばす

本日は都合にて午前11時までの診療です。
ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願い申し上げます。

昨日のRCCラジオ、終盤から聞けたのですが、
解説は関根さんでした。
この関根さんの解説が、すばらしかったので御紹介します。

8回、嶋のホームラン。
インコース低めいっぱいのストレート、この球をライナーで
スタンドまで運び込む、これは素晴らしいバッティングです、とべたぼめ。
もう一度打ってみてくれと言っても打てないくらい
素晴らしい打撃です、と。
続く代打前田。結局討ち取られたのですが、
それまでの間 ずうっとほめっぱなし。
東出が出塁して、盗塁するぞと投手に揺さぶりをかける、
この選手は素晴らしいと絶賛。
走れる(盗塁できる)と思えば走っていいよ、というサインが
出ていると思います、と解説し、
直後に東出が盗塁を決めると、今度は野村監督とチームをべたぼめ。
梵が内野ゴロをヘッドスライディングで内野安打にすると
気迫がすばらしい、と絶賛。
この段階で、試合そのものについても、
これは素晴らしいゲームです、と連発。
8回裏、篠田については
この投手は外角のコントロールが素晴らしい、とほめる。

カープの選手は試合中に直接この関根解説を聞いているわけはないでしょうが、
後から「解説の関根さんが こう言ってほめていたよ」 というのを聞くと
うれしいことでしょう。
がんばろう、と思うでしょうね。
選手を、ほめて伸ばす。

その後、打ち込まれて結局大敗となったわけですが、
大敗にもかかわらず、腹が立つとか無力感とかはありませんでした。
関根さんの解説を聞いていたので
敗戦の中にも、暖かい、明るい希望が 心に光っているのです。

全ての試合を、ぶっちぎり全勝するなんていうことはできません。
勝つ時も、負ける時もある。
負ける時にも応援を楽しみ、試合を楽しみ、
また明日からも応援しよう、と思わせてくれます。
ファンを、ほめて伸ばす。
関根さん、名解説ではないでしょうか。

原爆資料館 無料休憩所の さくらソフトクリーム。
たしかに、さくら餅のような香り、味がします。
この時期にはよいかも。
日曜日にこども文化科学館から歩いて帰りましたが、
川べりの桜、ソメイヨシノはだいぶ散っていますが、
木によっては まだ十分花見が楽しめる程度には咲いていました。
この雨でどうなったでしょうか・・・。
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★新型インフルエンザ情報
インフル患者が12週ぶりに増加
4月23日14時11分配信 医療介護CBニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100423-00000000-cbn-soci

インフルエンザウイルスのうち、新型の割合は61.2%、A香港型は9.7%、B型は25.2%だった
とのことです。
B型が増えてきていますね。
B型は呼吸器症状ではなく下痢嘔吐など消化器症状が中心のこともありますので
注意が必要です。

肺炎予防推進プロジェクト「怖いぞ、肺炎! 予防が大事」キャンペーン

ワクチンのパブリックコメント募集開始

厚生労働省のパブリックコメント募集です。
予防接種制度の見直しにかかる意見募集について

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495100050&Mode=0

ワクチンを無料化し、定期接種とするチャンスです。
国を動かすのに、多くの人の声が必要です。
4月23日から募集開始、5月31日までです。
ぜひ意見を書き込んでください。

ワクチン後進国から脱しましょう。
多くの国では、ワクチンは公費、無料です。
ワクチンがあれば死なずにすんだ、という悲劇を、一人でも減らしましょう。

ちゅるるちゅーら の ラーメン、青ヒゲおやじ。
豚骨、細麺に青ネギです。
ネーミングも変わっていますね。
焼き餃子、おろし餃子も食べましたが、とくにおろし餃子は絶品。
北九州に行かれる時には、ぜひどうぞ。
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911テロ後のレスキュー隊員の肺機能

2010年04月22日 ,

昨日のカープ、勝ってよかったです。
あれで負けてはマエケンも浮かばれませんからね。
打線そのものは悪くないと思いますので
あとは どう得点に結びつけるか、ですね。

New England Journal of Medicineという医学雑誌に出た論文です。
世界トップレベルの雑誌です。

Lung function in rescue workers at the World Trade Center after 7 years.
Aldrich TK,他
N Engl J Med. 2010 Apr 8;362(14):1263-72.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20375403
要点
911世界貿易センタービルテロ事件では数千人のニューヨーク市消防局のレスキューが粉塵を吸入した。
1年後には肺機能低下が認められていた。
今回、長期影響をみるために7年後の肺機能の検討をおこなった。
肺機能(1秒量)の障害は継続しており回復していなかった。

緊急事態だったので、
マスクしていても多量の粉塵を吸入したのは
仕方なかったかもしれません。
しかし、粉塵吸入は呼吸機能に良いはずはない。
しかも影響は長期にわたる。
これがデータとして明らかにされました。

黄砂や火山爆発による微粒子なども
おそらく体によくないであろう、と思います。
(私は黄砂で苦しくなります。
黄砂シーズンが終わるまでは、ジョギングを控えています。)

粉塵の吸入による健康被害について
臨床上の疑問点は
肺癌などの悪性腫瘍の発生が増加するのか、
COPDや肺線維症などの良性疾患の発生は増加するのか、
最終的に寿命は変わらないのか短くなるのか、
そして
粉塵吸入後の障害の発生や進行を防ぐにはどうすればよいのか、
ということです。
今後の研究がすすむことを期待したいと思っています。

ちゅるるちゅーら の ラーメン、チャーちゅる。
チャーシュー麺のことですね。
チャーシューは器からはみ出そうなほど大きいのが1枚。びっくり。
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★新型インフルエンザ情報
とくに新しい情報はありません。

学会での無断撮影禁止

2010年04月21日

最近の学会や研究会で、気になる光景がありました。
わりと前の方に陣取っている参加者が、
表示されているスクリーンをデジカメあるいはビデオで
ずっと撮影をしているのです。
何人もが、同じ行動をしています。
スライド画面が変わるたびに、何台ものデジカメのシャッターが押されるのです。
(スライドといっても、パワーポイントですが)

何のために撮影しているのでしょうか?
自分が、あとで振り返って詳細に検討するためでしょうか?
それとも学会に参加できなかった仲間のために
持ち帰って報告会をおこなうためでしょうか?
そうであれば許容範囲かもしれません。
しかし、
全く別の目的に利用されない、とは限りません。

学会での発表は、まだ正式な成果発表ではありません。
日本の場合だと、学会発表のときの質疑応答も加味して
論文を仕上げて発表する、ということが多いのです。
正式でないものが、確定したかのように情報がインターネット上に流れた場合、
もう情報を回収、取り消すことはできません。

あるいは
デジカメで細部まで発表原稿をとらえ、
大急ぎで同じような実験をして
本人よりも早く論文発表してしまえば
成果を横取り、ということも不可能ではないかもしれません。
また、
苦労して作った図やグラフの著作権が保護されるかどうか、
これも保証のかぎりではありません。
翌日から、全然知らない人の講演会に
自分のスライドが使われる、ということも起こりえます。

これまで、実験の詳細な条件などは
発表スライドを見ながら必死にメモをとり、
疑問点があれば質疑応答にておこなう、というのが
日本式の学会発表スタイルでした。
デジカメ撮影が横行すれば、
従来の学会スタイルは維持できなくなるおそれがあります。

そういう理由だかどうだか知りませんが、
日本アレルギー学会は、
今春の学会から 発表の無断撮影を禁止いたしました。
学会情報を紹介する医療系マスコミなど一部のみの、許可制になりました。
無断でデジカメ撮影をおこなっている人が
著作権に配慮をするだろう、とは とても思えません。
それほど目に余る光景だったのです。

これをきっかけに、
学会・研修会での変な光景がなくなることを期待します。

ぼたん 咲きました。八千代椿。
昨年 赤名ぼたん園で購入したもの。
今年のぼたんまつりは5月10~16日だそうです。
http://www.satoyamania.net/event/510162010in.html
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★新型インフルエンザ情報
とくに新しい情報はありません。
私が情報収集に活用させていただいているブログでも
新しい情報が出なくなったため
毎日の更新をやめてしまったブログも現れてきています。

癌性胸水の治療

2010年04月20日 ,

カープ、中日戦3連勝、いいですねえ。
この調子でいきたいものです。
3塁側内野席に空席が目立つようです。
ここは安くしてはどうでしょうかね?
学生さんは3塁側内野席をドーンと安くし、外野席と同じくらいの価格にするとか。
学割!!

本日のお勉強
OK-432を用いた胸膜癒着術に伴いアナフィラキシーをきたした1例
日本呼吸器学会雑誌 2009年12月号
東京厚生年金病院内科 柏田 建 先生ほか
要点
子宮内膜癌の両側肺転移、両側癌性胸膜炎による呼吸困難。
胸水ドレナージに続きOK-432による胸膜癒着術を施行したところ
10分後にアナフィラキシーをおこし人工呼吸管理を要した。
これまで文献としてアナフィラキシーが報告されたものはないが
重篤な合併症を呈する危険性を認識することが肝要である。
(患者は72時間後に人工呼吸を離脱したが、
その4日後に癌の増悪のため永眠された。)

癌による悪性胸水(癌性胸膜炎)では、
息苦しいのを軽減してあげるために
まずチューブを胸に装着して胸水をできるだけ減らし、
その後 胸膜癒着術をおこなって胸水再貯留を防ぐ
という方法がよく実施されます。
多くの場合、OK-432(商品名ピシバニール)が胸腔内に注入されます。
多少の発熱はみられますが、
疼痛などの副作用が少なく、効果もまずまず期待できる方法で
使用実績も非常に多いからです。

ただし、製品の特性として
ペニシリンアレルギーの人にはアナフィラキシーなどアレルギー反応を
おこす可能性があります。
ペニシリンアレルギーを事前に予知することは困難なので、
率は低いのだけれども、そういう可能性はあります、
という説明をおこなって承諾書をもらって施行する、というのが実際です。

この論文を読んで、思ったこと2つ。
1:癌末期には癌性胸水をきたすことも多く、
OK-432を使用することも多いので、気を付けよう。
・・・これは全くありふれた普通の感想ですね。
医師が10人いれば10人がそう思うでしょう。

2:もし、この方が在宅医療をおこなっている人なら、どうだったか?
病院勤務医時代には、この視点は浮かばなかった、と思います。
では、少し考えてみますね。
この患者さんは、胸水の処置をおこなって、
結局7日目に癌で亡くなられています。
それだけ癌により全身状態が悪かったわけです。
7日間のうち、3日間は人工呼吸管理を受けています。
この間は、意識がない(薬で意識を落としてある)のが普通です。
最期の1日は意識がないことも普通です。
つまり、
この方に意識があったのは結果的に3日間だけであっただろう、と考えます。

もし、在宅であったならば。
最初はモルヒネを使用・増量で対応したと思います。
モルヒネは呼吸困難に効果があります。
在宅酸素療法も開始しているでしょうね。

それでも呼吸困難がとれない場合には、
翌日には 入院するか在宅医療を継続するか、
本人および御家族の希望を聞いて決定することになります。
もし入院を希望されて病院に連絡すれば、
おそらく今回と同じ結果をたどるでしょう。
同じ処置を受け同じ経過をたどったであろうと思います。

もし引き続いて在宅療養を希望された、としたならば
モルヒネをさらに増量し、
それでも呼吸困難が改善されない場合、
モルヒネの持続注射に切り替えると思います。
多少 眠気がきて、呼吸苦が軽減される程度までは増量を続けます。
さらにそれでも楽にならない場合、
鎮静 を提案することになると思います。
苦しみをとってあげるために、眠る注射を使用しましょうか?
という段階になるわけです。
3日目までには、そういう相談になっているでしょう。
実際に鎮静が開始されるのが3日目、と仮定して
そこまでは意識はあります。
つまり、意識があるのが3日間。

この計算では、仮定条件が多いですが、
胸水に対する積極的治療をおこなっても
(入院し胸水チューブを挿入し薬を注入する治療方法をおこなっても)
モルヒネや鎮静剤での治療だけをおこなっても
「本人に意識がある日数」には変わりがない、ということになります。
さらに、在宅では鎮静が必要ない場合が多いのです。
鎮静剤を使用することなく、最期のほんの直前まで
意識があって会話をしていたというケースはいくらでもあります。
自宅と病院とでは、苦しみの程度や感じ方に、かなり差があるのです。
家にいる安心感や満足感が そうさせているのでしょうか。
その場合には、意識がある日数は在宅のほうが長い、ということになります。

状態が悪く、もうあと数日、せいぜい1週間程度しか見込めません、
という段階に至っては
はたして胸水チューブを挿入するなどの治療は
意味があるのだろうか?
いまさら痛い思いをしていただく意義はあるのだろうか?
というように思いました。

「本人の希望したように自宅で看取ることができて本当によかった。
最期も苦しまず本当に楽そうで。ありがとうございました」、
と おっしゃる御家族が とても多いのです。
在宅医療には 人工呼吸もチューブ挿入もありませんが、
だから不幸だ、ということではないのです。
むしろ、そういうものがないからこそ幸せな最後の時間を共有できるのではないか、と
思ったりしています。

今週の花 モッコウバラ、ツバキ、フリージア、ハウチワカエデ。
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★新型インフルエンザ情報
期限切れ新型ワクチン捨てられず…予算なく、いまだ保管中
4月19日1時54分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100419-00000504-san-soci

すでに輸入ワクチンは使用期限が切れてきています。
廃棄にもお金がかかるのだけれど
厚生労働省は廃棄費用を計上していなかった、とのことです。

しかし、保管にもお金がかかります。
廃棄が遅れれば遅れるだけ、保管費用がたくさんかかります。
期限が過ぎたら捨てる。
こんな簡単なことが、なぜできないのか、不思議ですね。
コンビニ業界、食品業界の人からみると
信じられない事態でしょう。

もっとも、コンビニで、まだ食べられる弁当を
賞味期限切れというだけの理由でどんどん捨てている、
というのも問題だ、とは思いますが。

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