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心に残る出会い33 夜間興奮して騒ぐSさん

2012年05月27日  

毎月最終日曜日は心に残る出会いです。

Sさんは93歳。
若い頃に近所の病院で胃癌の手術を受け、
定期的にその病院を受診していましたが、
1年前頃から認知症となっていました。

ある日曜日の夕方、ケアマネージャーから当院に電話です。
数日前から昼夜逆転、興奮して夜に大声で騒ぐ状態になっており
今日の夜も心配だ、困った、と家族から相談を受け
今 御自宅に来ているのです、と。
何とか対応していただけませんか? と。

まったくの初診の方だと状況や病状経過がわからないので
初診での休日夜間の往診は対応できない(しないほうがよい)
ことも多いのですが、
今回はケアマネさんもいるので経過もわかります。
日曜日なので病院はお休み、家族も困っていることでしょう。
すぐに往診に行き、私達の初めての出会いです。

行ってみると・・・。
ご夫婦ともに認知症があるため、
長女さんが1年以上も泊まり込みで生活を支えておられました。
長女さんのご家庭は、すっかり犠牲になっていました。
次女さんもおられますが、次女さんと御夫婦の折り合いは悪く
次女さんが来るたびにお二人とも興奮されて
あとが大変なので
次女さんの力は全くあてにできない状況でした。

お部屋に上がり診察してみると
呼び掛ければ返事はあります。
しかし何を言っているのか、ほとんどわかりません。
尿失禁でパジャマがぐっしょり濡れています。
血圧も高く、酸素は低下し
聴診器で聴くと少しゼロゼロいっています。

心不全をおこし、
そのための低酸素もあって
せん妄をおこしている状況と思われました。
(せん妄とは、普段とは違う興奮状態にあることで
ふつうの思考が出来ない状況です。
周囲の説得・説明も耳に入りません。
その間のことは、本人はあとで全くおぼえていません。
せん妄がおきる原因は、
環境が変わったり、薬のせいだったり、身体疾患のためだったりします。)

高齢者のせん妄は、原因となっている身体疾患があるなら
それを治療すれば元に戻る可能性があります。
入院しましょう、とおすすめしました。
御本人が入院をいやがるかな、というのが一同の心配でしたが
「まだ逝きとうない」と言っている、
と娘さんが通訳してくれました。

入院の同意が得られたので、
すぐに病院に連絡し、
救急車に医師同乗して緊急入院となりました。
やはり心不全です。
しかし、
入院しても興奮状態は続き、
心臓治療薬にも反応が悪く、
2日後 心不全で永眠されることとなりました。

高齢者は体力ギリギリで生きておられる方が多く、
ほんのちょっとしたことで心不全になることもあります。
何かおかしい、どこかおかしい、という場合には
早めの御相談をおすすめします。
往診や訪問診療に対応している医療機関もありますし
当院は機能強化型在宅療養支援診療所となっています。
他の医療機関と連携して診療にあたっていく時代なのです。

幸水ジャム
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