心に残る出会い65 尊厳死協会にはいっていたMさん
【業務連絡:医師募集】
在宅医療に興味ある医師の方、
いっしょに働きませんか?
常勤でも、非常勤でも、相談に応じます。
病院での当直勤務が身体的・精神的にきつい、という方や
将来は開業を、とお考えの方も御相談ください。
毎月、最終日曜日は心に残る出会いです。
Mさんは85歳。
かかりつけの病院で、膵臓癌、肝転移と診断されました。
年齢・体力的にも手術や抗癌剤の対象にはなりません。
膵癌は進行が早く、御家族にはあと2ヶ月程度と説明がされました。
食欲が落ち始めており、早ければ1週間程度のことも、とも。
本人には検査入院である、とだけ説明されました。
近いうち衰弱し通院できなくなる、と想定されたため
御家族が当院に訪問診療を依頼され
御自宅ではじめての出会いです。
出会ったその日に、わずかに黄疸がではじめていることに気づきました。
その後、黄疸は誰の目にも明らかになってきて
腹水も貯まってきます。
病院の担当医に胆道ステントについて相談しましたが
Mさんの場合にはステントはほとんど効果は期待できないであろう、
ということで見送りになりました。
食欲は落ち、本人は「食べています」と答えますが
実際には1回の食事で数口程度になっていました。
痛いとも おっしゃいませんが、笑顔がみられません。
御家族によれば痛みをがまんしているのであろう、
とのことでした。
このため痛み止め薬(=医療用麻薬=オピオイド)を強化し
状態は少し改善し、穏やかな表情が戻ってきました。
御家族は緩和ケア病棟を希望され
病院への紹介状も準備はしておりました。
しかし、本人に病名が伝えられていません。
意識もしっかりしています。
意識が落ちてきてからの入院にしたい、と御家族が希望されていました。
ほぼ寝たきり状態となった ある日。
御本人が 実は自分は尊厳死協会の会員なのだ、
と おっしゃり、会員証を出してこられました。
最期まで家にいたい、苦痛だけ軽くしてもらったらそれでいい、と
家族の前でお話されました。
これで御家族の気持ちも決まりました。
入院ではなく、最期まで自宅で暮らす。
全員でそれを支えます。
仕事での出張の多い御家族でした。
このため、インターネットを利用した多職種連携システムに
御家族も登録し
出張先からでも いつでも病状や医師からの説明内容を見ることが
出来るようにしておりました。
もうそろそろですよ、という状況が近づき
出張の予定をキャンセルされたり日程調整をされました。
そうして家族が一番多く集まれる日に、Mさんはお亡くなりになりました。
Mさん、尊厳死協会にはいっていることで
御家族の心が一つにまとまり、よかったですね。
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