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黒字でも その内容によっては ダメ

2019年10月24日  

昨日は、吉島地区の開業医の在宅医療勉強会でした。
キャッシュレス決済 というのが、今の世の中の流れ、です。
これに対しては 補助金制度があります。
しかし
保健医療機関については適応外である、と明確に規定されております。
現時点では、医療機関にとっては、キャッシュレス決済の導入というのは メリットも何もありません。
料金収受の方法が複数になれば 混乱し間違う元です。
というわけで
医療機関にキャッシュレス決済の導入があるのは まだまだ数年先のことになると思います。
どうぞ御理解をお願いいたします。

 

さて、気になった記事と、その分析です。

広島市立病院機構、4年ぶり黒字
中国新聞 2019/10/19
https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=580872&comment_sub_id=0&category_id=112

広島市立4病院を運営する地方独立行政法人、市立病院機構(中区)の2018年度の決算が、機構が発足した14年度以来、4年ぶりに黒字になった。手術件数の増加やがん治療薬の価格の上昇などで、入院や外来の医業収入が底上げされた。純利益は4億700万円だった。
(以下、略)
***

 

市立病院が赤字、ということになれば
市の一般会計から赤字病院に資金を投入せねばなりません。
これは税金の投入であり、市民一人一人が 病院の赤字を負担する、ということを意味します。
これが続けば、市の他の事業を縮小せねばなりませんし、
税金が高くなることだって 考えられます。
これでは市民としては困りますよね。

赤字でなく、黒字になるよう 努力しろよ!

誰もが思います。

 

では、
黒字になった、よかったよかった、というのでは
新聞などマスコミとしては 切り込み不足と言わざるを得ません。
これは大本営発表をそのまま記事にしただけ、と同じなんです。

 

話題転換
かつて、医療機関(病院や医院)が黒字だ、として
薬をたくさん使用するから黒字、だなんて 「薬漬け医療だ、許せない!」
という時代だったのですが、覚えておられますでしょうか?
薬価差益で医者が儲かるから 薬ばっかりたくさん出すのだ、と批判され
今では薬価差益はほとんど出ない仕組みになっています。

当院のような「院外処方」ですと
薬を1つだけ処方するのも、100剤処方するのも、処方箋料は一緒です。
というか、7種以上の処方をすると 処方箋料は安くなります。
「薬価差益」なんて、院外処方の医療機関には存在しないのです。
点滴や注射についても 差益は1割もありません。
仕入れた10本のうち1本でも余って、期限切れ廃棄となれば 赤字です。
(1箱10本入り、で売られるのが普通です)

 

話題を戻します。
市立病院が 高額な薬(抗がん剤)で黒字になりました、と言われて
それは喜んでいいことですか?
薬漬け医療、として批判されたことと、どこがどう違いますでしょうか、説明できますか?

 

「黒字だったので、今のままでよい」、とは言えません。
薬価差益が出ない仕組みになっている、と言いました。
薬価は2年ないし毎年、「実勢価格」に基づいて 薬価を切り下げていく、という制度になっています。
つまり
薬問屋からの卸価格で 納入価格が1割安い、とすれば
次回の薬価改定で その薬は1割(程度) 薬価が低く設定される、という仕組みです。
どんどん薬が安くなり、差益が出ないようになっております。

薬価差益で黒字になりました、という病院は どうなるでしょうか?
このままでは翌年は赤字に転落するかも、ということです。

 

手術件数が増えて黒字になりました、というのは 病院経営として、とても良いです。
薬価差益で黒字になりました、というのでは 病院経営としてはダメなんです。

では、来年以降、どうやって薬価差益に頼らず黒字を維持し、黒字を拡大していきますか?
ということを
マスコミは取材し報道する必要があるのです。
大本営発表をそのまま垂れ流すのでは いつか来た道、ですよ。

 

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