ブログ

スーパー耐性菌の問題

2010年09月7日  

多くの抗菌薬が効かない菌が検出され、
問題になっています。
大学病院の対応を非難する報道が多い印象ですが、
これについては、当方はまだ論評を避けたいと思っています。
事実関係がまだよくわからないからです。
一般の方は、今の時点で心配される必要はありません。
今すぐ世に出て世間で流行する菌ではありません。
落ち着きましょう。

抗菌薬をめぐる状況について。
菌を殺す薬=抗菌薬を使用すれば使用するほど
抵抗力をもった菌=耐性菌 が出現してきます。
ですから新しい薬が開発されますが、
開発され市販されるまでには10年20年かかります。
膨大な研究開発費が必要であり
新規抗菌薬を開発できるのは世界規模の巨大製薬会社のみです。
数年から10数年に1剤が出てくればいいほうです。

これに対し、
その新薬が効かなくなる=耐性菌がでてくる のは、すぐです。
数年もすれば耐性菌がでてきて
10年もたてば耐性菌の率が非常に高くなります。
つまり、効かなくなる率が高くなります。

これを防ぐには
「抗菌薬の適正使用」 が必要となります。
みんなが新薬を大事に大事に使用し、その薬の寿命を延ばさないといけないのです。
本当にその新薬を必要とする状況なのか、
以前からの薬で対応できる状況ではないのか、を
しっかり判断して使用していかねばなりません。
感染症の専門家ほど、薬剤の選択には注意深くなっています。

ところが
今の日本の医療現場では
誰でもいつでもどんな薬でも処方ができます。
「新薬出たのか、じゃ使ってみよう」
という感覚で処方しても
誰にもこれを止める権限がありません。

ですから
勤務医時代の経験ですが、
呼吸器専門医である我々がまだ使用したこともない新規抗菌薬を
いなかのおじいちゃん先生がすでにたくさん使用・処方している
といった事態が実際に生じていました。
勉強していない先生ほど
必要性を判断できない先生ほど(専門医以外ほど)
新薬をじゃぶじゃぶ使ってしまう、という状況もあるのです。
しかも使い方すら間違って。
(たとえば
2錠を1日1回服用するのが適切とされる新薬を
0.5錠ずつ1日3回毎食後として処方してみたり。
少量をダラダラ使用する、という状況が耐性菌を作りやすく
一番ダメな使い方なのですが、
おじいちゃん先生は薬は何でも1日3回と思っていたりします。)

これは
新規インフルエンザ治療薬についても同じことが言えます。
タミフル・リレンザに次ぐ第3の薬も
誰でも処方ができるのです。

抗菌薬やインフルエンザ治療薬の新薬なんて
集中治療室を有する基幹病院でしか必要性はありません。
処方できる医師を登録制にする、などの対応が
必要なんじゃないか、と思っています。
(抗菌薬ではありませんが、
抗がん剤など一部の薬では登録医師制度になっているものが実際にあります)

折口内科医院では、カゼ症状だけの場合には抗菌剤を処方しないことがあります。
抗菌剤が必要かどうか、考えて判断しています。
何も考えずにパパッと抗菌薬を出すほうが簡単なんですけどね。

そごうレストラン街の波奈
はもの湯引き
P1130229.JPG
★新型インフルエンザ情報
とくに新しい情報はありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です