心にのこる出会い168 自営業だったFさん
本年の年末年始は それぞれ3日間ずつ 休診とさせていただきます。
新年の外来診療は 1月4日(木)午前9時から開始です。
その間の体調不良は 休日当番医を受診してください。
広島市ホームページや中国新聞で 調べることが出来ます。
さて、毎月最終日曜日は 心にのこる出会いです。
Fさんは78歳。
70歳頃から Fさん夫婦に認知症がでてきました。
Fさんのほうが 高度の認知症です。
御自宅で夫婦で暮らし、夫がFさんの面倒をみていたのですが、
夫が疲れて入院、という事態となってしまいました。
Fさんは一人では生活できません。
そこで まずFさんが 緊急でグループホームに入所され、
続いて 病院を退院した夫が 同じホームに入所されました。
そこで グループホームでFさんと私たちの はじめての出会い、
というはずなんですが、
実は 緩和ケア薬剤師の高校の近くに、Fさん御夫婦がお店をされておりまして。
緩和ケア薬剤師は かなり頻繁に そのお店を利用していたのだそうです。
つまり、40年近く前に 出会っていたのですね。
もちろんFさん御夫婦は お店をやっていたことも覚えていないような状況で
お客のことなんか まったく覚えておられませんでした。
何度か当時の話を 向けてみたのですけれど・・・。
残念ながら お店のことなど なんの反応もありませんでした。
入所して1年、まず先に Fさんの夫のほうが弱っていきました。
誤嚥性肺炎で入院したり。
転倒して大腿骨骨折をおこし、入院。
そのまま全身状態は回復せず 療養型病院に転院となり、そこで数ヶ月後に お亡くなりになりました。
グループホームに入所されて10年後。
Fさんの食事量は減ってきて、寝る時間が長くなり、じょくそうも生じてきました。
人生の最期の段階を どこで どう すごしたいのか?
もはやFさんに 意志表示にかかわる確認は 出来ませんでした。
息子さんがおられたので、息子さんを交えて相談しました。
胃瘻など不自然な治療は希望しない。延命治療も希望しない。
グループホームで可能な範囲の対応で じゅうぶんです。
Fさんの夫も 不自然な治療、延命治療は おこないませんでしたから、
それでお願いします。
食べられる物を工夫し、食べられるだけ。
飲み物も工夫し、飲めるだけ。
そうしていると、新しく介護職員として入職してきた方から 質問がありました。
「食べられそう、飲めそうなら 食べたり飲んだりしてよい、とのことですが、
なにか数値的な基準というのが ありますか?」
私どもからの回答は
「ありません。
熱が高くても 血圧が低くても SpO2(酸素飽和度)が低くても
食べられそうなら食べてよいし、飲めそうなら飲んでよいです。
ふだん身近にお世話をしている人が 状態をいちばん適切に判断できます。
数字の問題ではないんですよ。」
そうしてFさんは 苦しんだりすることなく 静かに旅立っていかれたのでした。
Fさん、もしかして覚えていてくれないかなー、
当時のお話を思い出してくれないかなー、
と 思ったのですが、
さすがにそれは無理でしたね。
残念なことでした。
【解説】
認知症の方であっても、「すべてを忘れてしまう」というわけでは ありません。
自分の人生の 絶頂期、あるいは逆に 苦労した時期について
かなり克明に 覚えておられる方は おられます。
人生訓として 私たちに語ってくださる方も 少なくありません。
ずいぶん前にお会いしていた、というケースも 時に あります。
患者さんや御家族が当方を覚えていた、という例では、
当方の講演会に 参加したことがあります、とか(多くの参加者のうちの1名)。
昔 病院勤務医時代に主治医だった患者の 妹の孫です、とか(病室で他の家族と一緒に一度だけお会いした。あいさつ程度)。
・・・すみません、そのレベルだと 覚えてないです。
当方が 患者さんを覚えていた、というケースも なくはないです。
誰だったかなー、どこかでお会いしたような気がするんだけどなー、
ということが 多いですけど。
双方が記憶をたどって 「ああ、あの時の!」と なることも あります。
数年前、数十年前に出会っていた、ということになるんですね。
今年最後の刺身定食の旅は 音戸の墓参りのあと、倉橋 お食事どころ かず。
カキフライ定食 + 刺身盛り合わせ
刺身定食。
今回も 刺身定食と刺身盛り合わせの まちがい探しクイズです。
ひらめ、さわら と 思いましたが、さわらは違うかもしれないです。
お食事処かず は 1月1日は 休業です。
あとは毎週水曜日が休業ですが、1月3日(水)は営業です。
正月2日から 刺身定食 大丈夫ですね。
刺身盛り合わせの持ち帰りも 出来ます。
今回は私の両親に刺盛りを持って帰りました。
今年も みなさまのおかげで 無事に1年をすごすことが出来ました。
厚生労働省モデル地域事業に指定されたり、
本の出版も具体的となりました。
ありがとうございました。
また来年も どうぞよろしくお願い申し上げます。
よいお年をお迎えください。
私どもの本が出ます。
出版は1月17日です。
予約受付中。
実店舗での予約でも いいですよ。
紀伊国屋WEB
在宅緩和ケア医が出会った「最期は自宅で」30の逝き方 – 光文社新書
髙橋浩一
価格 ¥924(本体¥840)
光文社(2024/01/17発売)ご予約受付中
https://www.kinokuniya.co.jp/disp/CSfDispListPage_001.jsp?qs=true&ptk=01&q=%E5%9C%A8%E5%AE%85%E7%B7%A9%E5%92%8C%E3%82%B1%E3%82%A2%E5%8C%BB%E3%81%8C%E5%87%BA%E4%BC%9A%E3%81%A3%E3%81%9F+%E3%80%8C%E6%9C%80%E6%9C%9F%E3%81%AF%E8%87%AA%E5%AE%85%E3%81%A7%E3%80%8D%EF%BC%93%EF%BC%90%E3%81%AE%E9%80%9D%E3%81%8D%E6%96%B9
出版社内容情報
広島で長年、在宅緩和ケアの革新的な取り組みをおこなってきた医師が、患者との出会いから看取りまでの数々のストーリーを紹介。「医療と関わりたくない」「自宅に帰りたい」「好きなものを食べて死にたい」など、さまざまな希望を聞き取り、それを叶えたり叶えられなかったりしながら亡くなっていく人たちの話を綴りながら、どうすれば在宅緩和ケアにつながれるのかがわからずに途方に暮れている家族たちにも必要な情報を伝える。
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アマゾンを利用される方のために。
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在宅緩和ケア医が出会った 「最期は自宅で」30の逝き方 (光文社新書) 新書 – 2024/1/17
髙橋 浩一 (著) 予約受付中
https://www.amazon.co.jp/dp/4334101992
公民館での講演など、お引き受けいたします。
日程次第です、御相談ください。
【業務連絡】医師募集。内科・外科・総合診療科・緩和ケア科に限りません。
新型コロナ対応をきっかけに
「医療の在り方」、「医療の目指すべきもの」について
考えを深めた方・考えを改めた方も多いと思います。
もし
「今は東京や大阪(等)で働いているが、地元広島に帰って働きたい」
とか
「病院勤務医よりも もっと患者に寄り添いたい」
「今の病院の勤務形態では 体を壊してしまうのではないか」
「これだけがんばって働いているのに、むくわれないというのは、病院というのはおかしいのではないか」
など考えはじめた医師の方は どうぞ当院に御連絡ください。
「給料よりも 生きがい・働きがい」を求めている方、よろしくお願いいたします。
(「給料優先」という方は、イナカの病院なら「過疎地手当」が上乗せされますし、
医師求人サイトで探されると「高給優遇」のところは見つかると思います。
ただし、高給優遇で求人するということは、キツい職場、あるいは やりがいは少ない職場だ(やり手がいない)という覚悟は必要です。)
広島はコンパクトな街で、衣食住、そして働くにも子育てにも いい所だと太鼓判押せますよ。
当ブログを御覧になり、院長の理念に賛同された方、どうぞ御連絡よろしくお願い申し上げます。
在宅診療は楽しいですし、在宅緩和ケアは やりがいありますよ!
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