心にのこる出会い171 奥さんより先に亡くなられたIさん
昨日は 暖かかったですね。
桜は 百メートル道路では 西区フォルクスワーゲン前あたり。
己斐の上のほうでは 己斐上公民館あたりが きれいでした。
暖かかったので、どこも開花がすすんでいますね。
楽しみましょう!
そういえば 昨日 吉島では ツバメを見ました。
3月に飛来なんて、早くないですか?
昨日、己斐では モンシロチョウも見ましたので、
ツバメのエサの昆虫も 出てきているんでしょうねえ。
カープもサンフレも 満開というわけには いきませんでしたね、残念。
今日はアドゥア投手です、応援しましょう!
さて、毎月 最終日曜日は 心にのこる出会いです。
Iさんは84歳。
もともとは町内会長をつとめるなど、地域で活動されていた方だったそうです。
3年前に妻が認知症で施設入所となり、独居となっておりました。
それから認知症が目立ってきたようです。
ある寒い時期に、足先に皮膚潰瘍が生じました。
近医で加療しても なかなか改善しないため、T病院に入院。
下肢動脈の閉塞(=閉塞性動脈硬化症)と判明し、点滴などの治療で なんとか改善し、下肢切断などは 免れたのでした。
ところが 入院生活で認知症が急速に悪化。
食事を準備して食べる、ということが わからなくなってしまったのです。
いったんは御自宅に退院されたのですが、トイレの場所もわからなくなり、
トイレ以外の場所に排泄したり。
日常生活の維持が困難となったのでした。
そのため 食事や清掃を提供してもらえる高齢者寄宿舎に入所となったのでした。
その施設で 私たちのはじめての出会いです。
認知症といっても、 程度は変動します。
天気予報にたとえるなら、「晴れたり曇ったり」です。
調子のよい時に、Iさん本人の意志を確認します。
調子悪くなったら どうしますか? 病院に行きますか?
最期の最後は どこですごしたいですか?
「もう病院には行かない。最期までここで お願いします。」
それから しばらくたって。
Iさんの妻の状態が悪化している、今日明日かもしれない、とのことで
Iさんは職員に連れられて 病院にお見舞いに出かけました。
人工呼吸器につながれていたそうです。
お見舞いから帰ってきた その日から、Iさんは 全く食べなくなってしまいました。
何度か聞いてみましたが、やっぱり病院には行きません。
そうして Iさんは 寄宿舎でお亡くなりになったのでした。
奥さんは どうなったのでしょう?
奥さんについての続報は 私たちには 入ってきていませんでした。
施設長に確認してもらったのですが、
やはりIさんが 奥さんを追い越して 先にお亡くなりになったのでした。
Iさん、最後に奥さんに会うことが出来て、よかったですね。
でも、みんな、奥さんよりIさんのほうが先だなんて、思わなかったですよ。
【解説】
認知症が進行してくると いろいろな状況になることがあります。
「まだ食べていない・・・(実際には食事したばかり)」と言うなんてのは かわいいほうです。
かりに1日4食・5食たべたところで そう肥満になることもありません。
食べないと体は維持できませんので、食べないことのほうが問題です。
・食事を食べることを拒否する方。拒食と呼ばれます。
・食事を見ても 「食べ物」とは思わなくなっている方。
・食べるという事・食べ方を忘れて 飲み込むことをしなくなる方。
そうして 口の中に長い時間 食べ物が残って、誤嚥性肺炎につながったりします。
拒食の場合には 抗精神病薬で改善する場合がありますので、
精神科に入院紹介をすることもありますし、
私どもで抗精神病薬を処方することもあります。
しかし、そのほかのパターンは 認知症の終末期であり、
どんな薬物治療でも もう反応がみられることは ありません。
胃瘻にしないかぎり、「認知症による寿命」です。
Iさんは 人工呼吸器につながれた奥さんの姿を見てから
食事をまったく摂らなくなりました。
「妻とのお別れもすんだし、わしの人生、もうここまでで ええわ」と 思われたんでしょうかねえ・・・。
広島三越の地下、鮨 栁がわ
高齢者を連れ出すには おいしいものに限ります。
今回は 鮨。
鮨 栁がわ は 貝の寿司が すごいです。
注文を受けてから貝を開けます、だから固くない。
義母は いわゆる「上にぎり」では 半分の4カンくらいしか 食べません。
ところが 好きな寿司なら 1人前ペロリです。
貝が好き、なんだそうです。
8カン、それに玉子も食べて 計9カンでした。
これだけ食べてくれると 連れて行った甲斐があるというもの。
高いけれど、喜んでたくさん食べてくれるなら よし、です。
貝が好き、という広島の高齢女性は多いそうですよ。
常連の超高齢女性も 多いとのことでした。
私には なまこ軍艦というのも ありました、自分で作って食べるんですって。はじめてですねー。
1月17日、私どもの本が出ました。
紀伊国屋WEB
在宅緩和ケア医が出会った「最期は自宅で」30の逝き方 – 光文社新書
髙橋浩一
価格 ¥924(本体¥840)
光文社(2024/01/17発売) 電子書籍もあります
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784334101992
公民館での講演など、お引き受けいたします。
日程次第です、御相談ください。
【業務連絡】医師募集。内科・外科・総合診療科・緩和ケア科に限りません。
新型コロナ対応をきっかけに
「医療の在り方」、「医療の目指すべきもの」について
考えを深めた方・考えを改めた方も多いと思います。
もし
「今は東京や大阪(等)で働いているが、地元広島に帰って働きたい」
とか
「病院勤務医よりも もっと患者に寄り添いたい」
「今の病院の勤務形態では 体を壊してしまうのではないか」
「これだけがんばって働いているのに、むくわれないというのは、病院というのはおかしいのではないか」
など考えはじめた医師の方は どうぞ当院に御連絡ください。
「給料よりも 生きがい・働きがい」を求めている方、よろしくお願いいたします。
(「給料優先」という方は、イナカの病院なら「過疎地手当」が上乗せされますし、
医師求人サイトで探されると「高給優遇」のところは見つかると思います。
ただし、高給優遇で求人するということは、キツい職場、あるいは やりがいは少ない職場だ(やり手がいない)という覚悟は必要です。)
広島はコンパクトな街で、衣食住、そして働くにも子育てにも いい所だと太鼓判押せますよ。
当ブログを御覧になり、院長の理念に賛同された方、どうぞ御連絡よろしくお願い申し上げます。
在宅診療は楽しいですし、在宅緩和ケアは やりがいありますよ!
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