心に残る出会い102 奥さんが先に亡くなったSさん
Sさんは89歳。
脳梗塞と心不全で寝たきりになっていました。
御自宅で妻と息子さんの3人暮らしです。
仙骨部(=おしりの中央あたり)に じょくそうが出来て
A病院の皮膚科を受診したのですが、その後の定期的通院が難しい。
このため、普段は在宅医で管理してもらいましょう、
ということでケアマネージャから依頼があり
御自宅ではじめての出会いです。
病院で指示されたとおりの方法で訪問看護さんが処置するのですが
なかなか改善してきません。
病院の指示から逸脱し、当方が じょくそう用のスプレーを試みたところ
非常によく効いて
結局3ヶ月かかって 皮膚がきれいになりました。
その後も心不全が悪化したり、
小さなピンチは訪れますが
何とか乗り越えていきました。
御本人に「歩きたい」という希望が出てきたため
訪問看護ステーションからの訪問リハビリで
座る練習が開始になっていました。
あるとき、高熱が出るようになりました。
いろいろ試みても熱が下がりません。
解熱剤もほとんど効果がないのです。
これはおかしい。
B病院に入院し精密検査を受けたところ
腹部のリンパ節がたくさん腫れており
その他の所見からも悪性リンパ腫と診断されました。
高齢で体力もなく、本人・家族からも積極的治療の希望はなく
対症療法のみおこない、在宅看取りの方針となりました。
覚悟を決めての退院です。
ステロイド薬が非常に有効で、熱は下がり、食事もとれるようになりました。
しかし、入院で足腰はかなり弱ってしまい、その後は完全に寝たきりでした。
奥さんが買い物や料理で がんばってSさんを支えています。
ある日、食事中に奥さんが食事をノドに詰めてしまい、
救急車で運ばれましたが、助かりませんでした。
その次の訪問診療のときに
Sさんが「ばあさん死にました」と 私たちにつぶやきました。
淡々とした その話ぶりを、忘れることは出来ません。
悪性リンパ腫と診断されてから1年がすぎ、
Sさんは御自宅で静かにお亡くなりになりました。
Sさん、「ばあさん死にました」というのは
どういう思いがこもっていたのですかねえ。
★インフルエンザ情報
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手洗い咳エチケット、よろしくお願いいたします。
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