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心に残る出会い180 食事中に崩れ落ちたTさん

2024年12月29日  

昨日も寒かったですね。
風が非常に強かった。
山は雪だったことでしょう。

当院の年末の外来診療は 昨日で終了です。
本日からは 日曜当番医や 年末年始当番病院を受診してください。
なお当院が担当している訪問診療の方については 年末年始でも 対応しております。

令和6年度 年末年始の内科・小児科診療
https://www.city.hiroshima.lg.jp/site/holidaymedicalcare/195631.html

土曜日午後なのに、インフルエンザの高熱などで往診がたくさんありまして、
仕事が終わったのは いつもの平日と結局同じでした。
インフル、大流行中ですよ。

 

さて、毎月 最終日曜日は 心にのこる出会いです。

Tさんは99歳
数年前から 認知症がありました。
ある時に転倒・骨折し、入院となり、要介護4となったのでした。
リハビリ施設を経て、老人ホームに入所されました。
入所されて 私たちのはじめての出会いです。

Tさんは 非常にやせており、体重は30kgそこそこしか ありません。
会話は可能ですが、活動性はあまりありませんでした。
認知症専門医から アルツハイマーの薬が出ておりました。
しかし、活動性を下げるタイプの薬です。
その薬を中止したところ、押し車でホーム内をスタスタ歩けるくらいに 元気になってきたのでした。

時がすぎ、Tさんは その老人ホームで ご長寿番付2番となったのでした。
おめでとうございます。
何歳になられましたか?
→ 72歳です。

 

Tさんは 夫を早くに亡くし、一人で子供さんを育て上げられました。
子供さんも 親孝行です。
ある時、新型コロナに感染してしまいました。
新型コロナは すでに5類に移行ずみで、 コロナ治療薬は無料でなくなっており、
かなり高額なお薬代が必要です。
御家族に処方の希望を問い合わせしてもらったところ
「処方してください」 とのことでした。
薬代が高いので 処方希望者はけして多いわけではありません。

 

Tさんは、しだいに食事の嚥下が難しくなってきました。
キザミ食に変更しますが、 それでも 完食できず残すことも 多くなってきておりました。
ある日のこと。
食事中にTさんが とつぜん食卓に崩れ落ちてしまったのです。
救命措置をおこないながら、救急車で病院搬送となりましたが、Tさんは残念ながら 助かりませんでした。
食事を詰め、窒息したのかなあ???
というのが 最初に思い浮かんだことですが、
病院での診断は 「大動脈解離」による急死でした。
ピンピンコロリだったんですねえ。

 

【解説】
認知症には お薬が ないことはないです。
でも、「薬がある」ということと、「薬を飲んだほうがよいかどうか」というのは
別な問題です。
アルツハイマー型認知症に使用される「認知症薬」は 主には2種類、4薬剤があります。
1種類は 胃腸障害が出やすく、興奮性が高まることがあります。
興奮・暴言暴力など 「こまった症状」が この薬由来のことも 多いのです。
胃腸障害で食欲低下すれば 体力はどんどん落ちて 弱っていきます。

もう1種類は 活動性を下げる方向に働くことが多い薬です。
興奮などの認知症症状を伴う方に よく使用されます。

認知症の薬は 使い分けが必要なんです。
家庭での生活をみていない医師には 専門医であっても 最適な薬を選ぶことは むずかしいと思います。
家庭生活で 本人が何を困っているのか、まわりが何を困っているのか。
そこがわからないと 薬はむしろ使用しないほうがマシ、ということが多いのです。

認知症の薬の 「やめどき」というのも、ふだんの生活を見ている医師でないと
適切な判断はむずかしいです。

 

それと
大事な事。
施設で食事中に急変したりすると
施設側に過失があるんじゃないか、どうしてくれる?
と 訴える方もおられます。
でも、高齢者で、自宅で生活できなくなったレベルの方だから 施設に入所されるのです。
高齢者、要介護状態ですので、いろいろ持病はお持ちです。
いつ突然に亡くなられても 不思議ではない状態と思います。
自宅では もっと前に 亡くなられていても おかしくありません。
それを 施設で きめ細やかに面倒を見ていただいて。
どうやっても助からない急変の病気もありえますし、予防も予知もできません。
「自分が親を看れない状態なので、かわって看ていただいてありがとうございます」、と
施設側には感謝の念で接していただければと思っております。

 

今年もそろそろ終わりです。
日本酒シリーズで。
やっぱり 活性にごり酒が好きです。
日本尊厳死協会の柳井セミナーのあと しあわせギフト工房 まつもと に 立ち寄りました。
https://gift871.com/
柳井・大畠方面に行った時には、時間が合えば 立ち寄るお店です。
なにが良いって、地酒が良いお店です。
広島では 手に入らない酒とか、買いそびれた酒が 手に入ります。
何が置いてあるかは 毎回 行ってからのお楽しみ。
(新酒、限定酒などは 予告チラシにて予約することも 出来なくはないですが)

今回購入したのは
岩崎酒造(萩市) 長陽福娘 純米酒うすにごり活性生
酒井酒造(岩国市)五橋 五(five)グリーン 純米生原酒おりがらみ

美酒かどうかは あなたの自慢の舌で判断してほしいんだぜーっと!

どちらにも 開栓注意の札が下がっておりました。
どこかに遠征(出張でもドライブでも)したなら
そこの地酒を買って帰るのが楽しみです。
開栓注意を2本も買えるなんて もう最高にうれしいことです。

よろしければクリックお願いします。はげみになります。
広島ブログ  

1月17日、私どもの本が出ました。

紀伊国屋WEB
在宅緩和ケア医が出会った「最期は自宅で」30の逝き方 – 光文社新書
髙橋浩一
価格 ¥924(本体¥840)
光文社(2024/01/17発売) 電子書籍もあります
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784334101992

公民館、集会所などでの講演など、お引き受けいたします。
日程次第です、御相談ください。

【業務連絡】医師募集。内科・外科・総合診療科・緩和ケア科に限りません。
新型コロナ対応をきっかけに
「医療の在り方」、「医療の目指すべきもの」について
考えを深めた方・考えを改めた方も多いと思います。
もし
「今は東京や大阪(等)で働いているが、地元広島に帰って働きたい」
とか
「病院勤務医よりも もっと患者に寄り添いたい」
「今の病院の勤務形態では 体を壊してしまうのではないか」
「これだけがんばって働いているのに、むくわれないというのは、病院というのはおかしいのではないか」
など考えはじめた医師の方は どうぞ当院に御連絡ください。
「給料よりも 生きがい・働きがい」を求めている方、よろしくお願いいたします。
(「給料優先」という方は、イナカの病院なら「過疎地手当」が上乗せされますし、
医師求人サイトで探されると「高給優遇」のところは見つかると思います。
ただし、高給優遇で求人するということは、キツい職場、あるいは やりがいは少ない職場だ(やり手がいない)という覚悟は必要です。)
広島はコンパクトな街で、衣食住、そして働くにも子育てにも いい所だと太鼓判押せますよ。
当ブログを御覧になり、院長の理念に賛同された方、どうぞ御連絡よろしくお願い申し上げます。

在宅診療は楽しいですし、在宅緩和ケアは やりがいありますよ!

【おまけ】
当院には釣り部も出来ました。
カープ、サンフレファンの医師のかた、
および 釣り好きな医師の方、
当院に就職すれば いいことありますよ。

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