心に残る出会い42 前立腺癌のOさん
毎月、最終の日曜日は心に残る出会いの御紹介です。
2月末は講演とその準備で忙しく
最終日曜日であることを忘れていました。
遅くなりましたが1週間遅れで、御紹介します。
Oさんは80歳。
5年前に前立腺癌がみつかり、放射線治療、抗がん剤などを受けたのですが
骨転移があちこちに出現。
全身状態が悪化してきたので治療は終了となっていました。
病院の外来には何とか通院していたのですが
それもむずかしくなりました。
もう10日もほとんど食事がとれない、
入院の御希望はないので在宅で、
と当方に病院の地域連携室から在宅診療の依頼がありました。
癌の末期が近づくと
次第に食事量は減ってきます。
食事量が減る、ということは
お別れの日が近い、ということなのです。
それが、もう10日も続く、ということは
残された日はそんなにない、ということを
意味しています。
状態は悪そうなので急いで在宅チームを編成し
依頼のあった当日から訪問診療の開始です。
軽度の脱水はあるので
回復の希望にかけて点滴を開始することになりました。
しかし、やっぱり食欲は出ず、
全身状態は上向きませんでした。
その2日後にはOさんは部屋で転倒し、
起き上がることができなくなりました。
奥さん一人の力ではベッドに上げることも出来ません。
もうダメだ、もう無理だ、と
奥さんがギブアップして緩和ケア病棟への入院を希望されました。
当方がS病院に連絡してみると、
ちょうど運良く緩和ケア病棟に空きがでたところで、
すぐに入院となりました。
S病院でも 回復の可能性はありそうだ、ということで
高カロリー点滴も開始になったのですが
やはり回復することはなく、
その1週間後にOさんは亡くなられました。
癌の末期で、食欲が落ちてきた時、というのは
点滴をおこなっても寿命は延びません。
高カロリーの点滴で栄養補給をおこなっても
やはり寿命は延びません。
体に栄養が届かず、癌ばかりが成長するのです。
この段階では、余命は平均的には3週間です。
点滴も、高カロリー輸液も意味がない。
つまり、癌末期で食べられなくなってくれば
点滴をおこなうのではなく、
食べるための工夫をおこなう、ということが良い選択です。
食べられなくなれば点滴、とか
食べられなくなれば入院、とか
そういう考え方を捨てましょう。
点滴をすれば浮腫(むくみ)が生じたり
痰が増えたりして、苦しさが出ることも多いのです。
点滴はせず、軽い脱水気味で経過し、
枯れるように亡くなられるのが一番苦痛が少ないです。
最期は何もせず自然に。
本人と御家族がそういう決断をして腹をくくれば
最期まで自宅で、楽にすごすことが可能となりますよ。
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