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心に残る出会い96 デイサービスが大好きだったKさん

2017年08月27日  

毎月、最終日曜日は心に残る出会いです。

Kさんは102歳。
住んでいるビルの2階にデイサービスがあり
そのデイサービスに通うのが とても楽しみでした。
もちろん最年長です。
おとなしい、にこやかな方で、長老というよりも みんなのアイドル的な存在でした。
下着に血液が付着するようになり、病院で精密検査をうけたところ
大腸癌と判明しました。
高齢で体力もなく、手術などは希望されません。

癌の終末期になるという想定が必要、ということで
当方に在宅医療の依頼があり、御自宅ではじめての出会いです。
本人は、ここが大好き、最期までここにいたい、入院はしたくない。
この時点では娘さんからは
痛み苦しみが出ないようにしてほしい、
できるだけ自宅で、
という御希望があるだけで、
最期は自宅か病院か、というのは まだ判断が出来ていない状況でした。
痛むようなら緩和ケア病棟のほうがいいのでしょうか・・・?
という段階です。

食事は、本人は「食べています」と言うけれど
実際には量はかなり減っている段階でした。
エンシュアリキッドなどで栄養をおぎないながらの生活です。

夏になると、足のむくみがひどくなってきました。
栄養状態は悪いし、心臓も悪い、あまり動かなくなり足の筋肉を使わない。
これらが むくみを悪化させる原因となっています。
それぞれに対応をとっていき、
秋には少し食欲も戻り、むくみも改善してきておりました。
間食も少し食べられる、といってもバナナやビスコ程度のものなのですが
好きな物であればペロリと。

年末年始は デイサービスがお休みです。
娘さんのマンションで年末年始をすごしたい、と御希望がありました。
いいでしょうか?
もちろんですとも、いいですよ。何を食べてもいいですよ。

娘さんのマンションに行っている間に一度、
トイレに行こうとして床に倒れ起き上がれなかった、
ということがあったそうです。
娘さんは 「おむつにしたら?」と言ってみたが
本人は「トイレに歩いて行く」と 全然聞いてくれないのだ、と。

おむつではなくトイレに行きたい、というのは人間の根源的な欲求で、
人間の尊厳の部分でもあります。
慣れた環境である御自宅なら まだトイレに移動できると思いますよ。

それからは、狭心症の胸痛がでたり、
癌による腹痛が出てきたり。
娘さんはその都度 緩和ケア病棟がいいのだろうか、それとも家が・・・、
とオロオロされました。
心臓の痛みは狭心症薬、癌の痛みはオピオイドの使用で 対応が出来ています。
今の痛みの状態ならば、病院でなく このままここで診てあげることは可能と思いますよ。

3月中旬になり、食事は液体しか摂れなくなりました。
4月には お好きなアイスクリームですら 食べられなくなってきました。
常に口を開けたままにすることが多く、口腔内が乾燥します。
お口の世話など みなさんに御迷惑をかけてしまうので
やっぱり病院がいいのでしょうか? と娘さん。
出来る範囲のことでいいのですよ、と 娘さんに口腔ケアの指導もおこなって。
この段階でも デイサービスでは歌の時間には手拍子をしたりして
Kさんはデイサービスを楽しまれていたそうです。

その1週間後、Kさんは御自宅で静かにお亡くなりになりました。

Kさん、大好きだったデイサービスに最期まで通えて、よかったですね。

いただきものです。
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