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心臓死と、治療の差し控え

2012年04月24日  

本日はマエケン。
連敗ストップに大きな期待がかかります。
彼ひとりに重圧を背負わせてしまい、申し訳ないですが
頼れるエースですので応援しましょう!
3位争い直接対決ですので、勝ち越しておきたいところです。

今年も日本呼吸器学会に参加してきました。
おもには教育講演、特別講演、症例検討会に参加。

本日お伝えするのは、
特別講演「肺移植の現状と問題点」
講師:京都大学呼吸器外科 伊達洋至 先生です。
要点
世界では脳死肺移植は3万8000例を超えた。
5年生存率は約50%。
日本では生体肺移植を含めても2月までに248例。
5年生存率はおよそ75%。ひじょうにすぐれた成績である。
国内では7施設だけが実施している。
世界では肺気腫の症例も移植の対象となっているが
日本では肺気腫の移植は少ない。

肺気腫というのは、基本は喫煙がベースにあって肺が壊れる疾患であり
年齢が60歳を超えて発病することが多い。
現在の移植対象の条件は、臓器移植法が制定される前のものであり
いずれは移植対象年齢を高くすることも検討課題となる。
***

在宅医療というのは、
積極的治療はやろうと思えば出来るけれどもおこなわない、
という局面が多い医療です。
これに対し、移植医療というのは
究極の積極的治療です。
正反対の位置にある医療なのですが、
生きるとはどういうことか、など「哲学」として考えさせられることが多く、
いつも気にしている分野です。

今回、主に2つ、考える点がありました。
タバコによって肺気腫になってしまった方にも
将来には肺移植を受けられる時代が来るかもしれません。
それが時代の流れ、になるでしょう。
しかし、
現時点においては
(=移植を希望しても受けられない人が大半である時点では)、
自分に何の落ち度もない若い人の肺疾患と
喫煙という「自己責任」で病気になった人と、
どちらを移植で助けたいか、というと
やはり若い人を助けたい。
どこにも明文化はされていないけれども
移植医としては そう思う部分がどうしてもある、
という話でした。

喫煙で病気になり、それで寿命が短くなるのは自己責任だ、
ということなのです。
生きるか死ぬか、という場面において、
「全員が乗ることは出来ない医療救命ボート」しかなければ
喫煙者に喜んで救命ボートを差し出す人ばかりではない、
ということなのです。
喫煙者の方には、よく考えてみてほしいことです。

もう一つ、
脳死肺移植のほかに、心臓死からの肺移植というのもあります。
DCD, donation after cardiac death というそうですが、
イギリスなどでは肺移植のおよそ1/3を占めています。
具体的には
「もう助からない」と判断された場合には
そこで人工呼吸器を止め取り外してしまい、
心臓が止まるのを待つ、ということなのだそうです。
で、心臓が停まったら死亡宣告し移植を開始する。

一つには、医療費の問題もあると思います。
死亡直前には 膨大な医療費がかかるのです。
人工呼吸器につなぎ、血圧を保つ薬を点滴し、
集中治療室で濃厚治療をおこなえば
1日で100万円かかることも珍しくありません。
死亡直前1か月の医療費が、医療費全体の4割を占める
と言われるくらいです。
治療をおこなっても助からない、社会復帰が出来そうにない、
と判断された場合については
「治療の差し控え」
=治療できる手段はあるが、おこなわない=
も必要な時代が来ていると思います。
何でもかんでも高度医療をおこなえばいいというものではない。
現場では実際には行われていることなんですけれども、
もう助からないと判断された後には
同じように人工呼吸器につながり点滴しているように見えても
薬の種類や量を実はじょじょに減らしている、
というようなことは しばしばみられます。

人工呼吸器を途中で止めると
「殺人だ!」なんていう人がいたりしましたが、
国の医療費が高騰し、国民の負担が重過ぎる時代になったのですから
どこまで医療をおこなうべきなのか、
「医療の差し控え」 というのを含めて
国民が真剣に考える時代が来ているのだ、と思いました。

もっとも、
生死にかかわる、かなり繊細な部分でもあり、
欧米といっても各国の取組は同一ではありません。
ドイツなどは上記のようなDCDはおこなっていないそうです。

ステーキランチコースのメインディッシュ
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