癌性胸水の治療
カープ、中日戦3連勝、いいですねえ。
この調子でいきたいものです。
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本日のお勉強
OK-432を用いた胸膜癒着術に伴いアナフィラキシーをきたした1例
日本呼吸器学会雑誌 2009年12月号
東京厚生年金病院内科 柏田 建 先生ほか
要点
子宮内膜癌の両側肺転移、両側癌性胸膜炎による呼吸困難。
胸水ドレナージに続きOK-432による胸膜癒着術を施行したところ
10分後にアナフィラキシーをおこし人工呼吸管理を要した。
これまで文献としてアナフィラキシーが報告されたものはないが
重篤な合併症を呈する危険性を認識することが肝要である。
(患者は72時間後に人工呼吸を離脱したが、
その4日後に癌の増悪のため永眠された。)
癌による悪性胸水(癌性胸膜炎)では、
息苦しいのを軽減してあげるために
まずチューブを胸に装着して胸水をできるだけ減らし、
その後 胸膜癒着術をおこなって胸水再貯留を防ぐ
という方法がよく実施されます。
多くの場合、OK-432(商品名ピシバニール)が胸腔内に注入されます。
多少の発熱はみられますが、
疼痛などの副作用が少なく、効果もまずまず期待できる方法で
使用実績も非常に多いからです。
ただし、製品の特性として
ペニシリンアレルギーの人にはアナフィラキシーなどアレルギー反応を
おこす可能性があります。
ペニシリンアレルギーを事前に予知することは困難なので、
率は低いのだけれども、そういう可能性はあります、
という説明をおこなって承諾書をもらって施行する、というのが実際です。
この論文を読んで、思ったこと2つ。
1:癌末期には癌性胸水をきたすことも多く、
OK-432を使用することも多いので、気を付けよう。
・・・これは全くありふれた普通の感想ですね。
医師が10人いれば10人がそう思うでしょう。
2:もし、この方が在宅医療をおこなっている人なら、どうだったか?
病院勤務医時代には、この視点は浮かばなかった、と思います。
では、少し考えてみますね。
この患者さんは、胸水の処置をおこなって、
結局7日目に癌で亡くなられています。
それだけ癌により全身状態が悪かったわけです。
7日間のうち、3日間は人工呼吸管理を受けています。
この間は、意識がない(薬で意識を落としてある)のが普通です。
最期の1日は意識がないことも普通です。
つまり、
この方に意識があったのは結果的に3日間だけであっただろう、と考えます。
もし、在宅であったならば。
最初はモルヒネを使用・増量で対応したと思います。
モルヒネは呼吸困難に効果があります。
在宅酸素療法も開始しているでしょうね。
それでも呼吸困難がとれない場合には、
翌日には 入院するか在宅医療を継続するか、
本人および御家族の希望を聞いて決定することになります。
もし入院を希望されて病院に連絡すれば、
おそらく今回と同じ結果をたどるでしょう。
同じ処置を受け同じ経過をたどったであろうと思います。
もし引き続いて在宅療養を希望された、としたならば
モルヒネをさらに増量し、
それでも呼吸困難が改善されない場合、
モルヒネの持続注射に切り替えると思います。
多少 眠気がきて、呼吸苦が軽減される程度までは増量を続けます。
さらにそれでも楽にならない場合、
鎮静 を提案することになると思います。
苦しみをとってあげるために、眠る注射を使用しましょうか?
という段階になるわけです。
3日目までには、そういう相談になっているでしょう。
実際に鎮静が開始されるのが3日目、と仮定して
そこまでは意識はあります。
つまり、意識があるのが3日間。
この計算では、仮定条件が多いですが、
胸水に対する積極的治療をおこなっても
(入院し胸水チューブを挿入し薬を注入する治療方法をおこなっても)
モルヒネや鎮静剤での治療だけをおこなっても
「本人に意識がある日数」には変わりがない、ということになります。
さらに、在宅では鎮静が必要ない場合が多いのです。
鎮静剤を使用することなく、最期のほんの直前まで
意識があって会話をしていたというケースはいくらでもあります。
自宅と病院とでは、苦しみの程度や感じ方に、かなり差があるのです。
家にいる安心感や満足感が そうさせているのでしょうか。
その場合には、意識がある日数は在宅のほうが長い、ということになります。
状態が悪く、もうあと数日、せいぜい1週間程度しか見込めません、
という段階に至っては
はたして胸水チューブを挿入するなどの治療は
意味があるのだろうか?
いまさら痛い思いをしていただく意義はあるのだろうか?
というように思いました。
「本人の希望したように自宅で看取ることができて本当によかった。
最期も苦しまず本当に楽そうで。ありがとうございました」、
と おっしゃる御家族が とても多いのです。
在宅医療には 人工呼吸もチューブ挿入もありませんが、
だから不幸だ、ということではないのです。
むしろ、そういうものがないからこそ幸せな最後の時間を共有できるのではないか、と
思ったりしています。
今週の花 モッコウバラ、ツバキ、フリージア、ハウチワカエデ。
★新型インフルエンザ情報
期限切れ新型ワクチン捨てられず…予算なく、いまだ保管中
4月19日1時54分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100419-00000504-san-soci
すでに輸入ワクチンは使用期限が切れてきています。
廃棄にもお金がかかるのだけれど
厚生労働省は廃棄費用を計上していなかった、とのことです。
しかし、保管にもお金がかかります。
廃棄が遅れれば遅れるだけ、保管費用がたくさんかかります。
期限が過ぎたら捨てる。
こんな簡単なことが、なぜできないのか、不思議ですね。
コンビニ業界、食品業界の人からみると
信じられない事態でしょう。
もっとも、コンビニで、まだ食べられる弁当を
賞味期限切れというだけの理由でどんどん捨てている、
というのも問題だ、とは思いますが。
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