真の緩和ケアとは何か
昨日は広島赤十字・原爆病院 地域医療連携研修会に出席してきました。
講師は国立病院機構新潟病院 副院長 中島孝 先生
現代に求められる真の緩和ケアとは何か?
~地域在宅ケアと診療所の在り方を英国緩和ケア運動の実際から考える~
日赤病院は5年後をめどに病棟の建て替えをおこなうようですが、
(耐震基準をクリアしなければいけなくなったため)、
その時に緩和ケア病棟も作ろう、
そのために緩和ケアの勉強をおこなっておこう、
という文脈があるのだそうです。
中島先生はセントクリストファーホスピスについては日本で一番詳しい一人である、
と自負されていました。
以前 広島県内で活躍されていた看護師の阿部さんも
このホスピスで研修されていたことがあり
非常に詳しいおひとりのようです。
ところで
中島先生は非常に多くの内容を語られ、
時間の関係でかなりはしょっている部分があります。
これまで緩和ケアに取り組んでいない医師・看護師等にとっては
難しい・理解しづらい講演だったでしょう。
(日本語にしにくい部分は英語でそのままどんどん展開されましたしね。)
当方はほぼ理解できました。
懇親会のときに当方の理解を
「ひとことでまとめると、こういうことでいいですか?」
と確認にいき、
「そのとおりです」 と。
これまで私が取組の中から考えてきたことが間違っていないこと、
イギリスの緩和ケア運動の方向性と一致していることを確認でき
非常に元気づけられる講演会となりました。
一般の方に知っておいていただきたい、まず一番重要なポイント。
緩和ケアというのは、癌患者だけのものではない、ということ。
日本では緩和ケア病棟に入れるのは癌末期とエイズのみです。
そういう制限をつけてしまっています。
しかし本来の緩和ケアというのは、
生命を脅かす疾患すべてが対象のはずです。
癌に限定された「日本の緩和ケア」は問題です。
本来のありようから離れてしまっています。
→解説
在宅では、疾患による差異はありません。
当院では認知症でも、神経難病でも、呼吸器難病でも、
家で過ごしたい、という選択をされた方には
在宅緩和ケアをおこなっています。
日本の病院の緩和ケアが問題 ということです。
第2点.
英国の緩和ケアという場においては、
緩和に役立つことは何でも取り入れています。
たとえば
緩和的手術、緩和的化学療法、緩和的放射線治療・・・等々、
必要性があればあたりまえに実施されています。
そのために、医療費を包括にはしていません。
ところが日本の医療制度では、緩和ケア病棟は包括医療になっています。
一日の医療費が決められているのです。
その状況では、お金のかかる医療は緩和ケア病棟では提供されなくなります。
赤字になるためです。
たとえば、
緩和ケア病棟では輸血しません、とか
麻薬は全部注射に切り替えられてしまう、とか
(麻薬は内服や貼り薬より注射のほうが激安なのです)、
必要な医療すら満足に受けられない緩和ケア病棟があることも
当方も知っています。
在宅緩和ケアよりはるかにレベルの低い緩和ケア病棟というのが
実際にあるのです。
中島先生は、緩和ケアを包括医療にするのは間違っている、
とお話されました。
→解説
在宅緩和ケアでは、医療費は包括になっていません。
包括なのは「緩和ケア病棟」です。
最期は緩和ケア病棟で、と漠然と思っておられる方もおられますが、
質の低い緩和ケア病棟より、在宅緩和ケアのほうが
よほどいい環境を提供できると思います。
長くなりました、
一般の方にぜひ知っておいていただきたい点は上記2点です。
イギリスおよび当院の目指す方向性について、
続きは後日にさせてください。
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