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心に残る出会い52 魚が好きなNさん

2013年12月29日  

寒いですね。
昨日は往診の時に雪が舞っていました。
己斐の上の方では、山に雪が少し残っていましたよ。
凍結などに注意しましょう。

さて、
毎月最終日曜日は心に残る出会いです。

Nさんは76歳。
一人暮らしです。
肺癌で緩和ケア病棟に入院していましたが、
状態が安定したので、いったん自宅に戻ることになりました。
食欲があまりないのが問題でしたが
自宅では自由に生活ができます。
Nさんは魚が大好物でした。
毎日の食卓に魚の刺身が並びます。
ほかにサンマやサバの煮物など。
退院してからは好きな魚料理がおいしくて、
たくさん食べることが出来るようになっていました。

しかし、癌は急速に悪くなりました。
骨転移の痛みは次第にひどくなります。
皮膚に転移した癌も、みるみる大きくなってきます。

痛み止めのオピオイド(医療用麻薬)には
便秘という副作用があります。
このため、下剤で便通を調整するのです。
そのうちSさんは便を失敗したり、言うことが次第におかしくなってきました。
せん妄、と呼ばれる状態です。
便秘をしたり、脱水状態になったりすると せん妄は出やすくなります。
せん妄が出るということは
もういよいよ最期が近い、という状態であることも意味します。
ある日の夜中、やはり行動がおかしくなり
家族も当方も駆けつけ、緊急の相談です。
このまま家で最期までみるか、再入院するか。
本人・御家族とも再入院を希望されたため、
緩和ケア病棟の担当医に電話して入院依頼の相談です。
夜の電話相談にもかかわらず、担当医がすばやく手配してくださり
さいわい、翌日午前に入院することができました。
もう病状の悪化を予想されていたのですね、さすがです。
入院した日の夕方には、Nさんは立つことが出来なくなっていました。
ぎりぎりのタイミングで入院が間に合いました。

数日後に当方が病室に顔を出したとき、
Nさんはもう会話も不可能な状態でした。
ほどなく、Nさんが亡くなられた、との知らせが病棟担当医から届きました。

Nさん、家で過ごせたのはほんの短い期間だったけれど
好きな魚をいっぱい食べられて、よかったですね。

期間限定 いちごビスコ
孫が大好きです
私同様に、期間限定という言葉に弱い??
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