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心に残る出会い133 田中広輔選手が大好きだったFさん

2020年12月27日  

昨日、久しぶりに屋外ランニングをしました。
ずっと重症患者さんがおりまして、全く運動が出来ておりませんでした。
ジムも再度 閉鎖となっておりましたし。
1か月走っていないので、ダメです。スピードもスタミナもダメ。
2月にマラソン大会がなくて よかった、と思いました。
やはりコツコツ体を動かさなければ。

 

さて、毎月最終日曜日は 心に残る出会いです。

Fさんは70歳。
生まれつき軽度の知能障害がありました。
母親と二人暮らしだったのですが、数年前に母親を自宅で看取り、
一人暮らしとなっていました。
姉たちがしょっちゅう来てくれて 生活は維持できておりました。
ところが。
あるとき、ひどい腰痛・腹痛が生じ、
某病院で精密検査を受けたところ 進行膵癌と判明したのでした。
もう手術もできない状況です。
Fさんは 抗癌剤治療は希望されず、在宅で最期まで、と希望されました。
これまでの医師は往診・訪問診療をされません。
訪問看護と在宅担当医が必要です。
そこで当院に在宅医のお声がけがありました。
Fさんの御自宅で、私たちのはじめての出会いです。

訪問看護さんとも、現地で初顔合わせです。
訪問看護さんは、母親の看取りを担当したステーションであり、
Fさんも顔と名前を覚えているメンバーでしたので、安心です。

 

部屋は雑然としておりましたが、
目を引いたのは たくさんのカープグッズ。
御自宅にカープグッズがある、というのは これは当たり前の光景です。
それが、よく見ると 全部 田中広輔選手グッズだったのです。
マグカップ、ポスター、カレンダー切り抜き。ユニフォーム、ハートマークが大きな選手応援うちわ。などなど。
聞くまでもなく、田中広輔選手の大ファンなのでした。
広輔は2枚目じゃけねえ、 と言うと、ニヤリとされました。

 

膵臓癌は 進行が非常に速いことが多いです。
Fさんも、みるみる食欲が落ち、やせが目立つようになってきました。
痛みはオピオイド(医療用麻薬)で うまくコントロールできていましたが
残された時間は ほとんどありません。

 

今年、田中選手は国内FA権を取得しました。
権利を行使し、他球団に行ってしまうのか・・・?
それは選手の正当な権利なのであり、もしそうであっても しかたがないことなんですが。

結局、田中選手はFA権を行使せず、カープ残留が決まりました。
Fさんの心配事が なくなりました。
その数日後、Fさんは御自宅で安らかに永眠されたのでした。
旅立ちの服として、広輔のユニフォームを着せる、と姉たちと訪問看護さんたちは 決めておりました。

Fさん、田中広輔選手が残留で、うれしかったですね。
これからも田中選手を見守ってくださいね。

 

【解説】
旅立ちの時の服装は、選べる葬儀社が多いです。
なかには白装束でなければダメ、と その会社の規定の白装束を買わされる葬儀社もあると聞いてはおりますが、それは例外的にひどい会社です。
お気に入りの服、とっておきの一張羅を着せてあげて送り出す、という御家族が多いです。
でも、
どの服が本人のお気に入りだったのか わからない、選べない、と言われる御家族もあります。
エンディングノートを書く時に、もし写真や服装の希望があるのでしたら それも書き込んでおくと いいかもしれません。
そのように事前に決めて指示されている方もおられます。

 

マドモアゼルのケーキ

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