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イレッサ裁判と遺族の思い

2013年04月14日  

カープ、調子いいですね。
今日は先発 戸田。
若手の起用もいいですね。
野村監督、いい流れを作って若手を育成し
今年で引退してもらいたいものです。

さて、イレッサ訴訟の最高裁判決が出ました。

イレッサ訴訟、遺族側の全面敗訴確定 最高裁が上告棄却
iza産経新聞2013/04/12 15:23
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/trial/645955/

亡くなられた患者さん、御家族には、
まず、お気の毒なことでした、と申し上げます。
その上で、
この判決は妥当であり当然であろうと考えます。

イレッサというのは、分子標的薬のはしりの薬です。
癌細胞に生じている遺伝子変異のうち、
癌が成長するのに重要な役割をしている分子をブロックしてやれば
癌が消えるのではないか、という考えの薬です。
実際に、効く人にはよく効きます。
癌が画像検査で全く消えてしまった人も経験しています。
(効かない人には全く効果ありません。
効くか効かないか、その2つしかなく、中間はありません。)
しかし
完全に治ってしまうわけではなく、
仮に効果があった場合であっても
約1年後には薬が効かなくなって癌が再増殖をしてきます。
癌細胞が、この薬剤が効かなくなるような
2度目の遺伝子変異をおこすためです。
つまり イレッサというのは、
約1年間、元気で暮らせる時間を得られる可能性のある薬、
ということです。

どんな薬にも副作用はあります。
メリットとデメリット、その天秤のうえで
薬を投与するか投与しないか、を決めていきます。
通常の抗癌剤は、薬によって癌が消える率が2%、
抗がん剤で死亡する率が2%、
こういうバランスで使用されています。
薬が少なすぎれば癌に効かない、
十分に効く量にすれば副作用が避けられない、
そういうことなのです。
効果を期待するためには数%の死亡率はやむを得ない、
そういう薬剤量を設定しているのが抗がん剤なのです。

イレッサについては
間質性肺炎という副作用をおこす危険性が4%
副作用で死亡する率が2%、
いったん副作用が生じれば
食い止めることはむずかしく、
短期間で亡くなられます。
しかし、もし効けば、安定した生活を1年保つことが期待できる、
と、こういう薬です。

抗がん剤が効くかどうか、
副作用で死亡してしまうかどうか、
というのは賭け、ギャンブルです。
結果をあらかじめ予測することは不可能です。
つまり、
イレッサで死亡するのは仕方がない。
運がなかった、賭けに負けた、ということです。
ここは裁判の争点にはなっていません。

争点になっていたのは
死につながる間質性肺炎という薬の副作用、
これが薬剤添付文書の4番目に記載されていました。
こんな副作用ならば添付文書のもっと上の方に記載して
注意を喚起していなければならなかった、
国と製薬メーカーに責任があるはずだ、
というのが今回の裁判の争点です。

しかし、ですね、
私の肺癌治療医の立場・経験からすると
癌治療医は添付文書のすみずみまで読んでいます。
製薬メーカーから薬の説明を受け、
学会や講演会などで情報を集め、
それでようやく使用するのです。
添付文書の上の方に書かれていようが
下の方に書かれていようが
実際には何の影響も与えません。

抗がん剤で治療をすること、
それはギャンブルなのだ、
ということを理解していただきたいと思います。
抗がん剤は安全で優秀な薬ではない、ということを御理解ください。
結果としてギャンブルに負けたことはお気の毒ではありますが、
裁判をおこすという性質の出来事ではないと思っています。

遺族の無念な気持ちはわからないでもありません。
でも、
この記事を読むかぎり、考え方が間違っていると思います。

<イレッサ訴訟>全面敗訴へ 遺族「命はこんなに軽いのか」
毎日新聞 4月2日(火)20時53分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130402-00000077-mai-soci
「東京高裁の判断が維持されるなら、結局娘がなぜ亡くなったのか分からない。がん患者の命はこんなに軽いのか」
***引用終わり

娘さんが亡くなられたのは癌のためです。
イレッサを使っても、使わなくても、癌で亡くなられています。
イレッサという最後の頼みの綱に賭け、
賭けに勝てなかった、というだけのことです。
(仮にイレッサが効いていても、1年後頃には亡くなられているはずです。)
亡くなられた原因は癌であり、明明白白なんです。

癌治療医で、患者の命が軽いなどと思っている医師は一人もいません。
一人ひとりに真剣に向き合い、
最善の治療を模索し、
死亡する可能性のある薬であることを承知した上で
抗がん剤治療をおこなっています。
本人・家族にも、死亡することのある薬であることを
説明し、了解していただき治療をおこなうのです。
本人や家族が、それを知らなかったとは言わせません。

癌で死亡するのは
癌治療医が悪いのでしょうか、
癌治療薬が悪いのでしょうか?
癌で亡くなられたことはお気の毒ではありますが、
誰かのせい、何かのせいにするのは
筋違いだと思います。

抗がん剤の副作用がイヤならば
抗がん剤治療を受けない、という選択肢もあります。
薬があるから全員が治療を受けなければいけない、
という話ではありません。
私は、そういう人を何人も経験しています。
「もう十分生きさせてもらった。
もうこれ以上、積極的な治療はもういいです。」

それ以上の癌治療を選択されず
淡々と人生の最期を迎えられた多くの人を知っています。

いただいた日本酒。
おいしいのはおいしいのですが、
無理して辛口淡麗に振りすぎている感じがします。
個人的には、もう少し自然な作りのほうがおいしい酒になったと思います。
辛口淡麗が好きな方にはオススメです。
P1010699.JPG
★新型インフルエンザ情報
中国のH7N9。
タミフルなど抗インフルエンザ薬が効くそうですから
現時点でパニックになる必要はなさそうです。
冷静に続報に注目していましょう。

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