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心に残る出会い9 膠原病のTさん

2010年03月28日  

毎月さいごの日曜日は、心に残る出会いを御紹介しています。

Tさんは85歳、これまでに大腸癌手術などを受けてきました。
最近息切れがひどくなったため大病院を受診したところ、
呼吸器内科と循環器内科にまわることとなりました。
間質性肺炎と、肺高血圧症があり、しかもかなり高度な状態なのでした。
大病院では待ち時間も長くかかり、受診することが苦痛でした。
そこで、息苦しいのを何とかしてほしい、在宅で診療してほしい、
ということで当院を受診されました。

緩和ケア、というと 癌 を思い浮かべますが、
どんな疾患であれ苦痛があれば対応するのが緩和ケアです。
緩和ケア病棟に入院ができるのは癌とAIDSだけですが、
在宅緩和ケア医が担当する病気は癌だけではありません。
息苦しい、というのも当然ながら守備範囲なのです。

Tさんを一目みただけで診断がつきました。
膠原病というのは、一つの疾患ではなく、
いくつかの疾患を総称して膠原病と呼んでいます。
膠原病のなかには、一目で診断がつく疾患がいくつかあります。
私(緩和ケア医)はリウマチ学会専門医で、
これまで多くのリウマチ・膠原病患者さんを担当してきたので、すぐにわかったのです。
(もちろん血液検査で、その診断が正しいことも確認できました。)
ただちに「特定疾患」の申請をおこない、
それと同時に在宅酸素療法の導入となりました。
その疾患によって肺高血圧になり息苦しさが出現していたのでした。
膠原病の中には、特定疾患 に該当するものがあり、
治療費の減免を受けられることもあるので、
しっかり正しい診断をつけることは患者家族にとってメリットも大きい場合があります。

Tさんは中区に住んでいましたが、
ある日、近郊の娘さんの家に行っているときに体調が悪化し、動けなくなりました。
入院はいやだ、ということで
在宅酸素など一式を娘さんの家に運び込み、そこへの訪問診療がはじまりました。
往診や訪問診療は、距離15km以内、という原則が決められています。
娘さんの家は、ぎりぎりOKの距離だったのでした。

夏でしたが、広くて風通しがよく涼しい部屋にベッドが用意されていました。
庭の花や野菜が風にゆられ、いい香りもします。
セミの声や、川のせせらぎの音も聞こえてきます。
大学生のお孫さんたちや親戚の方などもかわるがわるやってきて、
楽しくにぎやかな療養生活となりました。
大学の秋の試験休みに また帰ってくるからね、
というお孫さんが、だいすきなTさんでした。

肺高血圧では、心臓はギリギリまでがんばっています。
その限界をちょっとでも超えると、もう心臓は耐えられません。
あっという間に急変し心臓が止まってしまうことが多いのです。
Tさんも、ちょっと苦しいかな、と言い始めたその直後に、
そのまま娘さんの家で亡くなられました。

長期間ひどく苦しむ、というようなこともなく、
ご希望どおり在宅で、
娘さんたちに囲まれての最期でした。

写真は我が家の庭のツバキ
もう見頃は終わりです。
100302_140915tubaki mannkai.jpg
★新型インフルエンザ情報
グラクソの輸入ワクチン、32%の解約が決まったそうです。

ワクチン輸入 257億円分解約
3月26日12時10分配信 毎日新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100326-00000036-mai-soci

これで257億円分が助かりました。
ノバルティス社とは交渉中だそうです。
こちらもぜひ解約成功を願いたいものです。

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