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心に残る出会い31 直腸癌のTさん

2012年03月25日  

昨日はオペラ はだしのゲン を見に行きました。
最初に中沢啓治さんのメッセージが流れました。
会場でごあいさつを聞きたかったのですが残念でした。
昨日は満席近かったと思います。(後ろの席の状況はわかりません)
河野先生もお見えでしたよ。
本日も公演あります、
空席情報は、ぜひお問い合わせください。

さて、
毎月最終日曜日は心に残る出会いを御紹介しています。

Tさんは62歳。
直腸癌の手術を受けたのですが、切除不能で
ストーマ(人工肛門)を作るのみで手術を終了していました。
その後も通院で抗がん剤治療をおこないましたが、
いずれの薬も効果があまりみられません。
抗がん剤点滴の2日後くらいから食欲がガクッと落ちるため
当院に訪問診療/在宅緩和ケアの依頼がありました。
私たちのはじめての出会いです。

抗がん剤による吐き気に対して、
今では、よい注射薬・内服薬が出ています。
そのため、吐き気はだいぶ抑えられるようになりました。
しかし、引き続く食欲不振に対しては
あまりよい薬がないのが現状です。
食べ物を工夫したり、漢方薬やステロイド薬を試みたりします。
Tさんには病院から臨時ステロイド薬が処方されていましたが
副作用を恐れてほとんど使用されず、がまんされていましたので
短期の服用なら問題ありませんよ、と説明し
服用を促したりしてきました。
食事についてはシャーベットやアイス、
ゼリーなどを工夫したりしてきました。
それでも抗がん剤治療を繰り返すたびに
体重が次第に減っていきました。

ある夜、電話が鳴りました。
これまでにない強い痛みで
臨時のオピオイド(麻薬)を使用してもおさまらない、
けいれんも起こしている、とのことです。
往診依頼だったのですが、
けいれんをしているとなると話は別です。
けいれんは急いで止める必要があります。
けいれんを止めるためには注射か坐薬を使用しないといけません。

このためすぐに救急車で病院を受診していただき、
Tさんは入院となりました。

在宅で診ていくうえで、
先を予測する、ということがとても大事です。
吐き気のときはこれ、
熱の時はこれ、
便秘のときはこれ、
というように、
想定される薬は少しずつ事前に処方し持っておいていただくと
イザという時にあわてなくてすみます。
脳転移のある場合や、経過中に一度でもけいれんのあった方には
けいれん薬(座薬)も出しておきますが
そうでなければ けいれん薬は普通は用意しない薬です。

いずれにしても、けいれんをおこすというのは非常に悪い徴候です。
Tさんは退院することなく2週間後に亡くなられました。

どこまで想定し、どこまでの薬を事前に出しておくか、は
むずかしい問題なのですが、
もし在宅医が「この薬を念のため出しておきましょうか?」
と提案した場合には
ぜひそれを受け入れてください。
今そんな徴候は全くないから、とか
薬代が発生するから、といって
予備・臨時用の薬はイラナイと言われる方もあるのですが
イザという時に困ることがありますので。

抗けいれん薬を事前に予備で出しておくべきか、
というのは宿題にして考えたいと思います。
(けいれん薬を臨時で使用することは
ほんとうにめったにない事なのです)。

そごうレストラン街 フレンチオオモト
デザート。あれも、これも、おいしいです。
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