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心にのこる出会い156 妻に先立たれたMさん

2022年11月27日  

サッカー、本日の19時ですね。
テレビ放送、見なくっちゃ いけませんね。
応援しましょう!

 

さて、毎月、最終日曜日は 心にのこる出会いです。

Mさんは76歳。
内縁の妻と同居されていたのですが、妻が急に亡くなってしまいました。
もともとは マメな男だった、ということですが、 それからのMさんは 酒浸りです。
これまで大きな病院に通院治療を受けていましたが、足も弱って通院が困難となりました。
薬がなくなるので病院に相談しても、「連れてきてください」。
介護保険の主治医意見書を書いてもらおうとしても「現状を診察できていないので書けません」。
ケアマネージャを通じて 当院に訪問診療の依頼があったのでした。
診察し、主治医意見書を書かないと はじまりませんので。

御自宅で、ひげも髪も伸び放題のボサボサ。室内もゴミが散乱する状態です。
食事も1日1個の配食弁当と 酒。
妻の知人が見かねて 清掃したり、食事を作って運んでくれたり、支援をしてくださいました。
介護ヘルパーとしてではなく、ボランティアでの支援です。

次第に足が弱り、室内で転倒したりするようになってきました。
夏の暑さで脱水も心配される状況となり、訪問看護さんも 導入されました。
しかし、その訪問看護ステーションは、死亡に立ち会ったことが まだない、という所だったのです。

夏はなんとか乗り切ったものの、トイレに行くのもむずかしくなってきました。
ポータブルトイレを設置します。
食事や水分も ほとんど摂れなくなってきました。
知人やケアマネージャなど 周囲は 「そろそろ施設に・・・」と考えはじめていましたが、
まだ本人は自宅での生活を希望されている、という状況になっていました。
意志表示は明確で、無理矢理に施設入所、ということは出来ません。
ガリガリにやせてきており、いつ亡くなられても不思議ではありません。
「このまま食べんかったら 死ぬよ」
と医師が伝えると、
「ほうか、死ぬか」と言って にこっと笑顔を浮かべられました。

ある朝、ヘルパーさんが部屋にはいってみると、Mさんは床に倒れて冷たくなっておられました。
訪問看護に連絡がはいり、訪問看護はすぐに救急車を呼んだのですが、
「すでに冷たい」状況では 救急車は病院への搬送をせず、警察に連絡をします。
Mさんは検死になってしまったのでした。

Mさん、奥さんが亡くなられたというのが そういうことになったんですね。
最期まで自宅にいられて、それはよかったですね。
しかし、知人の方が 警察から根掘り葉掘り事情聴取を受けた、なんていう事態は
想定外だったでしょうね。

 

【解説】
あわてて救急車を呼ぶと、検死になってしまうことになります。
発見者・通報者、居合わせた人、かかわった人が 警察から事情聴取を受けることになるのです。
警察からの事情聴取は 「殺人犯として疑われているのではないか?」と 不安になったり、怒りになったり、 あまり気分がよいものではありません。
「検死・事情聴取にならないために かかりつけ医・訪問診療医がいる」というように 考えてもらってよいくらいです。
イザという場面で出動する「用心棒」みたいなイメージです。
救急車を呼ぶかどうか、そこはヘルパーさんや訪問看護さんの経験値にも左右される部分ではあります。

Mさんの妻の知人の方は、ほんとうに よく動いてくださいました。
Mさんの亡くなられた後の葬儀代や お寺への連絡・永代供養の手続きなど 全部Mさんと相談しながら すませてくださっていました。
そこまで先回りして配慮できて動ける人というのは なかなかおられませんです。

 

昨日の 長尾和宏先生の講演会。
東京では 「在宅死」が20%と、増加しているのですが、
そのうち半分は 中高年者の孤独死、というお話を紹介されました。
Mさんの場合には 家族こそおりませんでしたが、在宅チームも、知人も深くかかわっており、
「在宅ひとり死(上野千鶴子先生)」ではありますが、けっして孤立や孤独ではありませんでしたよ。

 

三越 広島店。京都展
成寿庵。黒豆大福、よもぎ大福。
会期は27日までです。

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