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心にのこる出会い169 自転車で転び骨折したFさん

2024年01月28日  

京都アニメーションの事件ですが。
控訴するのか、なんでかなー、とは 思っています。
報道からみて 本人は受け入れているのではないか、と思ったのですが
弁護側が納得いかなかったんでしょうか。
それとも やっぱり本人が納得いかなかったんでしょうか。

基本的に突き付けられた課題は、「孤立させない」、ということだと思います。
「二度と起こしてはいけない、事件の前に食い止める」青葉被告の命繋いだ救命医が提言
MBSニュース2024/1/25
https://news.yahoo.co.jp/articles/f13234cd988563161ea392d39e55186b6e2aff0b
「誰も孤立させない」社会を目指していく必要があると思います。
その論議を期待します。
高齢者医療・在宅医療とも、防災とも つながる課題だと 思うのです。

第5回 広島市防災セミナーのラジオ特番があります、本日です。
RCCラジオ特別番組
令和6年1月28日(日)20:00~21:00
29日には 防災セミナー全編のユーチューブ配信が始まります。
それもぜひ御覧ください。

 

さて、毎月 最終日曜日は 心にのこる出会いです。

Fさんは70歳。
事情は聞いていませんが、矯正施設にはいっておられました。
そこを出て、高血圧の治療継続目的で 当院外来を受診されました。
ここで私たちのはじめての出会いです。
妻も子供もいたのですが、とうに離婚・離縁しており、天涯孤独となっておりました。
アパートの2階で 一人暮らしです。
月1回の通院で 血圧管理も まずまずでした。
何ということもない、平穏な日々が続きます。

それから10年後。Fさん80歳の時です。
自転車で転倒、腰椎圧迫骨折をおこし、入院となりました。

入院中に血尿がでて、調べたところ膀胱癌と判明しました。
抗癌剤治療を受けて退院したのですが、
これは「術前化学療法」と呼ばれる抗癌剤治療で、
その1ヶ月後に再入院して 膀胱全摘術・回腸導管作成の予定でした。
ところがFさんは もう病院には行かない、手術も抗癌剤も受けない、と 受診予約をすべてキャンセルされたのでした。
病院の先生からは、「手術しないなら 抗癌剤と放射線だけでも やったほうがいい」、と説得されたのですが、 がん治療は受けないと言って 拒否されたのでした。

Fさんは 腰椎圧迫骨折で足が弱り、階段昇降が出来なくなっておりましたので 通院は出来ません。
Fさんのアパートの階段は急で 健康な人でも用心が必要なアパートだったのです。
コルセットをつけて、室内で 数メートルの移動がやっとです。
「もう血圧の薬がなくなるので 往診してもらいたい。」
そう連絡があって、当院の訪問診療が開始となったのでした。
ヘルパーさんと訪問看護さんもはいって 在宅療養を支えます。

「80すぎてるけ手術しない、そこまでせんでよい。今後 点滴なんかも しなくてよい。」
Fさんは 私たちに そう話してくれました。
「わかりました、痛いのだけは 何とかしましょう。」

腰痛はそれなりに続きましたが、湿布や鎮痛薬で 何とか対応出来ました。

そのうち、しだいに食欲が落ちてきて、動けなくなってきました。
訪問看護さんが、「この状態で このまま家にいますか、病院に行かなくていいですか?」と聞いたのですが、「最期までここで」とFさんは答えたのでした。
その翌日、予定どおりに私たちが訪問診療に行ってみると、Fさんはベッドの上で 息をしておられない状態でした。
とくに苦しんだ様相も みられませんでした。

Fさん、最期は何か 食べたり飲んだり 出来ましたでしょうかねえ。

【解説】
癌治療については 「癌を全滅させる、やっつける治療」を思い浮かべる方が多いと思いますが、今は いろいろあります。
治癒は望めないが 苦痛を軽減する目的でおこなう「緩和的医療」というのも あります。
放射線治療にも 「緩和照射」という治療がおこなわれることもあるのです。
それをおこなうことで 苦しみのない状態をしばらく維持できる・・・。

とくに 放射線治療は 体への苦痛・負担が少ないことが多いですので、
もし治療医から選択肢として示されたならば
いちおう検討してもよい治療法だと 思います。
放射線治療と聞くと、
吐き気、皮膚炎、脱毛 など 苦しい・つらいイメージの方もおられるでしょうが、
今はわりと 副作用は軽く 制御できるようになっていますよ。

 

正月の酒。 賀茂泉 うすにごり 正月バージョンです。

 

【業務連絡】医師募集。内科・外科・総合診療科・緩和ケア科に限りません。
新型コロナ対応をきっかけに
「医療の在り方」、「医療の目指すべきもの」について
考えを深めた方・考えを改めた方も多いと思います。
もし
「今は東京や大阪(等)で働いているが、地元広島に帰って働きたい」
とか
「病院勤務医よりも もっと患者に寄り添いたい」
「今の病院の勤務形態では 体を壊してしまうのではないか」
「これだけがんばって働いているのに、むくわれないというのは、病院というのはおかしいのではないか」
など考えはじめた医師の方は どうぞ当院に御連絡ください。
「給料よりも 生きがい・働きがい」を求めている方、よろしくお願いいたします。
(「給料優先」という方は、イナカの病院なら「過疎地手当」が上乗せされますし、
医師求人サイトで探されると「高給優遇」のところは見つかると思います。
ただし、高給優遇で求人するということは、キツい職場、あるいは やりがいは少ない職場だ(やり手がいない)という覚悟は必要です。)
広島はコンパクトな街で、衣食住、そして働くにも子育てにも いい所だと太鼓判押せますよ。
当ブログを御覧になり、院長の理念に賛同された方、どうぞ御連絡よろしくお願い申し上げます。

在宅診療は楽しいですし、在宅緩和ケアは やりがいありますよ!

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広島ブログ  

1月17日、私どもの本が出ました。
紀伊国屋WEB
在宅緩和ケア医が出会った「最期は自宅で」30の逝き方 – 光文社新書
髙橋浩一
価格 ¥924(本体¥840)
光文社(2024/01/17発売) 電子書籍もあります
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