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心にのこる出会い170 いつも悪態をついていたMさん

2024年02月25日  

昨日の益田市での市民講演会、
多くの方に御参加いただき、ありがとうございました。
益田圏域では、開業医の高齢化がすすんでおり、
往診・訪問診療に対応できる医師が減っていくのではないか、
という危機感をもっておられます。
住み慣れた場所で最期まで、と希望しても、それが かなわなくなるのではないか?
この問題は 広島県の過疎地域でも おなじことです。

私どもは、アイデアとしては、
「広島市の 複数医師のクリニックが、県内の過疎地域の在宅医療の支援に入るしかないのではないか」
と 思っております、ボンヤリとですが。
とはいえ仮に当院の常勤医師が1名増えたとしても、すぐに過疎地支援に動けるわけではありませんが。

過疎地域医療支援のために、たとえば荒木脳神経外科病院などは 医師派遣の取り組みをされておりますよ。
なかなか出来ないことです、素晴らしいです。

 

さて、
毎月 最終日曜日は 心にのこる出会いです。

Mさんは92歳。
うつ病、認知症のため 専門病院(精神科)に受診されていたことがありました。
自宅での生活が困難となり、サービス付き高齢者住宅(サ高住)に 入居されておりました。
ところが、訪問診療してくださっていた医院が閉院となり、
ケアマネージャを通じて 当院に訪問診療の依頼があり、
Mさんの自室で 私たちのはじめての出会いです。

Mさんは、とにかく 体の不調の訴えが多い方でした。
いろいろしゃべる内容には 支離滅裂なこともありましたので、
何を、どう、どこまで対応してよいのか 困惑することも しばしばでした。
自分の思うような症状改善が得られなければ、悪態をつきまくります。
どれくらい悪態をつくのか、というと。
転倒して受診した病院(整形外科)で 大声で悪態をつきまくり、
その整形外科から「出入り禁止」を宣言されてしまった、というほどです。

体調には波があります。
あまり悪態をつかず、おとなしいと、「Mさん、調子悪そうね」。
そして また悪態が復活すると 「調子戻ったみたいね」。
というくらい、健康のバロメータにも なっているほどでした。

 

家族との関係もうまくいかず、困った御家族が また精神科病院に連れて行き、相談されました。
抗精神病薬が追加処方され、それは確かに 興奮性をおさえる効果はありましたが、
副作用として 転倒しやすくなること、誤嚥しやすくなること は 知られています。
Mさんも転倒し、大腿骨骨折で手術を受けることにも なったのでした。

ある夏、 Mさんは あまり悪態をつかなくなり、「いい人」に なってきました。
私たちに対しても 診療に対して ねぎらいの言葉をかけるほどです。
「Mさん、いい人になってきたね」。
私たちにとっては それは「死期が近いんじゃないか」という 警戒警報を疑わせる状況です。

「いい人」になったMさんは、家族関係もよくなったようで、
妹さんや姪御さんなど お見舞いに来られるようにも なってきました。
「いい人」になった半年後、Mさんは誤嚥性肺炎をおこし入院され、
改善せず、そのまま病院でお亡くなりになったのでした。

Mさん、悪態をつく、という人は 時々いますけれど
悪態をつきまくる、という方は めったにおられなかったですよ。
最期の時期に 多くの御家族に会えてお話ができて、よかったですね。

 

【解説】
ふだん不平不満を言っていた方が それを言わなくなり、
感謝の言葉などを口にされる、ということが よくあります。
私たちは それを 「いい人になった」と呼んでいます。
それは「良いこと」のようですが、「死期が近い」ことも 多いです。
死期が近いことを悟り、人が変わったようになるのでしょうか・・・。
そうなる理由については よくわかりません。

「いい人」になった時に、御家族との関係が修復できる方もおられますし、
時すでに遅し、家族はとうに離れてしまって誰もいない、という方もおられます。

家族や世の中に 感謝の念をもちながら旅だって行かれるといいなあ、と 思います。

 

今週の花

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広島ブログ  

1月17日、私どもの本が出ました。

紀伊国屋WEB
在宅緩和ケア医が出会った「最期は自宅で」30の逝き方 – 光文社新書
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公民館での講演など、お引き受けいたします。
日程次第です、御相談ください。

 

【業務連絡】医師募集。内科・外科・総合診療科・緩和ケア科に限りません。
新型コロナ対応をきっかけに
「医療の在り方」、「医療の目指すべきもの」について
考えを深めた方・考えを改めた方も多いと思います。
もし
「今は東京や大阪(等)で働いているが、地元広島に帰って働きたい」
とか
「病院勤務医よりも もっと患者に寄り添いたい」
「今の病院の勤務形態では 体を壊してしまうのではないか」
「これだけがんばって働いているのに、むくわれないというのは、病院というのはおかしいのではないか」
など考えはじめた医師の方は どうぞ当院に御連絡ください。
「給料よりも 生きがい・働きがい」を求めている方、よろしくお願いいたします。
(「給料優先」という方は、イナカの病院なら「過疎地手当」が上乗せされますし、
医師求人サイトで探されると「高給優遇」のところは見つかると思います。
ただし、高給優遇で求人するということは、キツい職場、あるいは やりがいは少ない職場だ(やり手がいない)という覚悟は必要です。)
広島はコンパクトな街で、衣食住、そして働くにも子育てにも いい所だと太鼓判押せますよ。
当ブログを御覧になり、院長の理念に賛同された方、どうぞ御連絡よろしくお願い申し上げます。

在宅診療は楽しいですし、在宅緩和ケアは やりがいありますよ!

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