心に残る出会い15 脳梗塞のKさん
Kさんは76歳。
4年前に脳梗塞をおこし、半身麻痺と失明、言語障害の状態でした。
息子さん二人と同居し、訪問診療を受けていましたが
訪問診療してくださっていた医師が高齢で引退されることになったため
引き続きの訪問診療を当院に依頼がありました。
Kさんは、食べることが大好きだったそうです。
このため息子さんたちも
「口から食べさせる」ことに
強いこだわりを持って看病を続けてきていました。
たとえば、
流動の栄養食(処方箋で出せるもの)に食パンをまぜてパンがゆ状態とし
さらにいろいろ混ぜて毎食毎食工夫して食べてもらっていたのです。
味についても本人の食がもっともすすむものを工夫し
「イチゴ味が好き」というように
言葉による会話はなくても思いやりの心にあふれていました。
しかし、次第に拘縮もすすみ衰弱も進んできて、
飲み込みが難しくなってきたのです。
口の中に食物が残るようになり、誤嚥するようになってきました。
ある日、とうとう誤嚥性肺炎で入院してしまいました。
入院治療をおこない、肺炎がなおって食事を再開したところ
やっぱり誤嚥します。
そこで、胃ろうを作ってはどうか、という話が入院担当医から提案されました。
息子さんたちは、
口から食べるということにこだわりをもって
何年も看病をしてきました。
これからも口から食べてもらいたい。
でも、もう飲み込みが悪く、食べたら肺炎になる・・・。
当方に、息子さんそれぞれから何度も電話がありました。
胃ろうとは、どういう治療方法なのか、
二度と口から食べられないのだろうか、
どういうものを与えることになるのか、
入浴はどうなるのか、
これで肺炎はおこらなくなるのだろうか、などなど。
どうしてよいか、わからないのだ、と。
生きる、ということを優先するのであれば
誤嚥性肺炎を繰り返す場合には胃ろうのほうがよいでしょう。
肺炎をおこす可能性はかなり減らせるでしょう。
でも、可能性はゼロにはなりません。
本人が口から食べたい、という思いが強いのであれば、
そして御家族に、その希望に応えたい、という思いがあるのならば、
誤嚥性肺炎をおこして命取りになっても「仕方がない」、と家族が腹をくくれば
胃ろうなしでいく、という選択肢もあるでしょう。
胃ろうと平行して、少し口から食べるという選択肢もあるでしょう。
これは私のほうでどうこう強制する話ではなくて、
本人と御家族の希望、何をどうしてあげたいのか、というお話なんです。
こうお答えするしかありません。
結局、胃ろうを作成することになりました。
胃ろう状態で、また自宅での生活に戻りました。
口から食べる、ということは断念されたのでした。
また息子さんたちによる献身的な介護の日々が続きましたが、
ほどなく再度の誤嚥性肺炎をおこし
再入院先の病院で亡くなられました。
(口から食べなくても誤嚥性肺炎はおきるのです)
胃ろうを作ったほうがよかったのか、どうか、
答えを出すことはむずかしい、と思われたことでした。
写真は三越 北海道展の小樽 政寿司、海鮮丼。
札幌で学会があった時に、半日時間を作って小樽に行ったことがあります。
小樽は寿司が有名で、寿司屋さんが何軒も軒を連ねている場所もあります。
そこの1軒で ウニいくら丼 を食べたところ、本当においしかった。
北海道のウニは違う、と、感激しました。
その寿司店の名前は忘れたのですけどね。
そういう思い出話をしながら食べました。
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