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心に残る出会い20 乳癌のTさん

2011年02月28日  

心に残る出会いは昨日の日曜日に掲載の予定でしたが
昨日朝は忙しかったので本日になりました。
忙しかった理由のお話は明日に。

Tさんは53歳。
7年前に乳癌の手術、引き続いて抗がん剤+放射線治療を受けました。
それがよほどしんどかったのでしょう。
その後のホルモン剤などの治療には同意されず
医療機関には受診しなくなってしまいました。

2年前から腰痛や歩きにくさが出現。
医療機関には行かず、整体のみで治そうとされていました。
昨年になり、いよいよ動けなくなったため医療機関を受診、
多発性の骨転移など全身転移と判明したのでした。
それでもホルモン薬治療などは同意されず、
そのまま自宅ですごされていました。

次第に息苦しくなり、訪問看護と訪問診療がはいることになり
当院に依頼がありました。

往診してみると
食欲不振がひどく、低栄養と高度の貧血、下肢の浮腫。
腰椎は骨転移による骨破壊があり、骨が盛り上がった部分には じょくそう も。
酸素の取り込みも悪く、両側の胸水の存在もありました。
ちょっとやそっとではなく、毎日ものすごく我慢されてきたのだ、
ということがよくわかる状態でした。

入院の希望はありません。家にいることが望みです。
とりあえず息苦しさの解消が先決です。
まずは在宅酸素を開始しました。
浮腫・胸水に対しては利尿剤が適応になります。
しかし、
今回も薬については なかなか同意いただけず、
処方した薬も本当にしんどい時のみ服用される状況で、
浮腫も改善されません。
もちろん麻薬の使用にも同意されませんでした。
(モルヒネ類は、息苦しさを軽くしてくれる作用があります)

薬によらないで息苦しさを改善できないか、ということで
一度輸血をおこないましたが、
でも思ったほどは楽になりませんでした。
息苦しさの原因が貧血だけではなかったからです。

ある朝。本当に本当にしんどかったのでしょう。
朝いちばんで訪問看護師が呼ばれ、行ってみると血圧が下がっています。
急変です。
すぐに当院に連絡が入りました。
在宅看取りの希望はなかったため、急いで病院を手配し、入院となりました。
その夜、病室を訪れた私たちと、Tさんは少しお話ができました。
夕方に訪問看護師が訪れた時には意識がなかったそうです。
御主人とも、御家族のみなさんもよくがんばられましたね、というお話ができました。
翌朝、Tさんは亡くなられました。

私たちには、いろいろな武器(治療薬)があります。
でも、その治療薬を受け入れることができない状況は、なぜだったのだろう、
と考えました。
最初の入院での乳癌治療がしんどくて
もう病院には行きたくない、治療は受けたくない、と
思えるほど つらいものだったのでしょうか・・・。

最初の治療の段階で緩和ケアがかかわることが出来ていれば
ちがった経過となったかもしれないのになあ・・・
もう少し苦しさを軽くしてあげられただろうになあ・・・
と思ったことでした。

先週の理科教材フォーラム
登壇者のいちばん右にいるのが緩和ケア薬剤師です。
P1140386.JPG
★インフルエンザ情報
皇太子さまがB型インフルエンザ、という記事。日経新聞。
皇室関係者なんて、みなさん厳重に体調管理しているでしょうに、
どんなに用心しても感染する時には感染してしまう、ということですね。
どのような治療を受けられたのか、は書いてありません。
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819695E0E5E2E0988DE0E5E2E0E0E2E3E39180EAE2E2E2;at=DGXZZO0195583008122009000000

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