心に残る出会い75 息子を育成してから亡くなったOさん
毎月、最終日曜日は 心に残る出会いです。
Oさんは92歳。
最期は娘にみてもらおう、と思っていたのですが
娘さんのほうが先に亡くなってしまい
建設業の息子さんと二人暮らしになっていました。
息子さんが小さい時から ずっと変わらず
息子さんのために食事や弁当を作ったりしていたのですが
Oさんは次第に足腰が悪くなり動けなくなってきたのでした。
買い物に行くことも出来ません。
そこで息子さんに買い物を頼むのですが、
これまで息子さんは家事というものをしたことがありません。
腹が減れば焼き肉弁当を買ってきて食べればいい、という生活をしてきていたのです。
「にんじんを買ってきて」と頼むと
しなびた人参を1本 買ってきます。
一番上にあったから、と。
しなびていない、普段見ている形の人参はなかったのかと聞くと
それは たくさんあった、と。
Oさんは、息子に面倒をみてもらうようになるとは思わなかった、
息子さんもまた 親をみるようになるとは思わなかった、と。
ああ、私は息子に何も伝えてこなかった、とOさんは悟りました。
それからというもの、
Oさんは 息子さんにあらゆることを教え、伝えていくことにしたのでした。
肉だけじゃなくて野菜も食べにゃ、いけんのんよ。
さすがに息子さんが毎日バランス良い食事を作ることは出来ませんので
それからは配食弁当を手配することになりました。
Oさんは、ベッド回りの移動しか出来なくなってきました。
息子さんは自宅を改築し
ベッドからそのまま仏壇が拝めるような作りにする、
ベッドから車いすに移れば そのままトイレまで行ける、など
Oさんのために いろいろがんばってあげていました。
尿路感染や肺炎で何度か入院を繰り返した後、
Oさんは もう入院はイヤだと言うようになりました。
訪問診療のたびに、先生 私はもう病院に行きたくないんじゃ、頼むよ、
とお話されていました。
ベッドの横にお姉さんが迎えに来た、ほら、そこに、
ということもありました。
(お母さんが迎えに来た、という人は時々いますが
お姉さんというのは珍しいです)。
次第に食べる量、飲む量が減っていき
Oさんは眠るように亡くなられました。
Oさん、息子さんは ようがんばっちゃったですね。
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