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iPS細胞臨床応用の誤報問題その2

2012年10月30日  

誤報問題の続きです。
その1では、
どういう場で発表された内容なのか、
それだけでも内容の信頼性はある程度わかる、
というお話をしました。
今回は
わざとウソをつく研究者がいる、
という話です。

森口氏の記事、7本中6本誤報と読売新聞判断
読売新聞 10月26日(金)7時5分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121026-00000088-yom-soci
読売新聞の自己検証にて、
現時点では7本のうち6本が虚偽、と判断したようです。
1本、本当があるじゃないか、と思われかねない見出しですが、
残り1本は他人の研究データを再解析しただけ、のようです。
要するに自分では何ひとつ成果を出していません。

研究者は、(国から)研究費をもらってこないと
研究ができません。
研究費をもらうためには、実績を示すことが必要です。
そこで
虚偽のデータ、虚偽の結果を書く者が出てきます。
ねつ造、です。
有名なところでは
ES細胞(iPS細胞と同じような万能細胞)研究で
韓国初のノーベル賞受賞が有力視されていた人物のねつ造事件が
記憶に新しいところです。
Wikipedia 2012年10月28日現在 から引用。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%84%E7%A6%B9%E9%8C%AB
***一部引用
黄禹錫(ファン・ウソク、1952年1月29日 – )は韓国の生物学者。
かつて、世界レベルのクローン研究者とされ、ヒトの胚性幹細胞(ES細胞)の研究を世界に先駆け成功させたと報じられた。自然科学部門における韓国人初のノーベル賞受賞に対する韓国政府や韓国国民の期待を一身に集め、韓国では「韓国の誇り」 (pride of Korea) と称されたこともあった。
しかし、2005年末に発覚したヒト胚性幹細胞捏造事件(ES細胞論文の捏造・研究費等横領・卵子提供における倫理問題)により、学者としての信用は地に落ちた。この捏造の影響により、正攻法でES細胞を作り出そうとしていた民間企業が研究継続の断念に至るなど、山中伸弥がiPS細胞の生成に成功するまでの間、ES細胞や再生医療分野の研究の世界的な停滞を引き起こした元凶とされる。「科学における不正行為」をテーマとした書籍でたびたび言及される人物でもある。
***引用終わり

実験データを多少ごまかす、という程度なら
なかなか見抜きにくいです。
(予想や理論から 大きくはずれたデータを
「なかったもの」として削除して解析する、等です。
2つか3つの測定データをなかったことにすれば
相関関係が出てくるグラフになることなどもあります。)
本当は
その「理論からの実測値のずれ」を追及していくことが
ノーベル賞につながったりするのですけれども。

実際にちゃんと実験したデータかどうか、
わかりにくい場合もあります。
そういう時には、「聞いてみる」。
じつは論文には全部書いてあるわけではなくて、
微妙なコツなどは あえて論文には書かないことがあります。
敵に手の内は見せない、ということです。
それと、あまり冗長な論文は良い論文とはされませんので、
主題に関係なさそうな部分は詳しく書かないのです。
ですから、実際に「他人の論文に書いてある通り」にやっても
実験がうまく行かないことがあるのです。
その、書かれていない部分を聞いてみれば
その著者・論文が信頼に足るものかどうか、
実際に手を動かして実験したかどうか、の参考にはなります。

私の博士論文の審査会のとき、
審査会がはじまる前に主審査員の免疫学教授が
マスス1匹から得られる肺胞細胞数・回収液量について
何種類の免疫染色が可能か、
世間話的に聞いてきたことがあります。
自分の教室でも今後やってみようと思ってね、なんて。
もちろん自分自身で何年も手を動かしてやってきた実験ですので、
その質問にはすんなり答えられました。
「いや、これはぼんやり聞いたのではなく
本当に真剣に実験してきた人間かどうか、
探りを一本入れたのではないか」、と
後になって思ったわけなんですね。

あまりに筋道通りの結果の実験は疑う、
実験の細部について質問してみる。
日本を代表する新聞で科学記事にしようというのならば
大ニュース! と記事にする前に
それくらいのことはしてほしいと思っています。

新垣家 島らっきょう
これも定番ですね。
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★新型インフルエンザ情報
とくに新しい情報はありません。

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