心にのこる出会い155 日本語がカタコトだったRさん
昨日は 白神の祭りに行ってきました。
土曜日ということもあって、人は多かったです。
神楽見物の人は、例年(コロナ前)より だいぶ多く、肩車されて見ている子供も多かったです。
にぎやかさが戻ってくるのは いいことですね!
修学旅行生と思われるグループが 神楽を見ておりました。
中国地方以外の子供達は 神楽を見るのは はじめてかもしれないですね。
さて、毎月 最終日曜日は 心にのこる出会いです。
Rさんは80歳。
中国語は話せますが、日本語は カタコトの日常のあいさつ程度しか できませんでした。
御家族は 中国語も日本語もできますので、家族と一緒にいれば 生活に困ることはありませんし、さみしくもありません。
医療者との会話では、少しこみいった内容になると 言葉が通じませんので、御家族の誰かが立ち会って 通訳をしていただくことが必要でした。
肺気腫があり、在宅酸素が導入されておりました。
その後、肺炎で入院したことがあり、以後は訪問看護が導入されておりました。
あるとき、自宅で転倒し、胸椎圧迫骨折をおこしてしまいました。
K病院に入院となったのですが、言葉が通じないため うつ状態となってしまい、
本人も御家族も 早期の退院を望まれたのでした。
コルセットしていても痛みはあり、室内つかまり歩行程度ですので、通院は出来ません。
退院と同時に訪問診療が導入されることとなりました。
訪問看護から当院に訪問診療の依頼があり、退院後の御自宅で 私たちのはじめての出会いです。
Rさんの呼吸の状態は悪く、「訪問診療してくれる呼吸器専門医」が 必要である、というのが 当院に依頼があった理由でした。
Rさんは、痰がうまく出せなくなっており、常にゴロゴロいう状況でした。
痰を出し切れれば 楽に呼吸できるのですが、それだけの力は ありません。
低空飛行が続きます。
Rさんの御家族は 昼間は仕事に出かけていきます。
時にはお孫さんなどが顔を出してくれますが。
ひとりの時のRさんは いつも 中国語の映画やドラマを タブレットで御覧になっておりました。
中国語の専門チャンネルなど あるのでしょうね。
便利な時代になったものだなあ、と 思っておりました。
それから半年がすぎたころ、
Rさんに異変です。
息苦しく、酸素飽和度が下がっています。
肺炎で緊急入院となったのでした。
肺炎は乗り切ったものの、呼吸機能はさらに一層 悪化しました。
もはや終末期である、と診断されました。
人工呼吸や気管切開などは 希望されません。
次に何かあったら 助かりません、ということを御家族も納得のうえで 御自宅に退院されました。
入院期間は出来るだけ短くしないと本人が精神的に持たない、という 以前の教訓があることと、
コロナで家族の面会・つきそいが出来ないということもあり、
自宅で家族とすごすことを選択されたのでした。
痰の吸引手技を家族が習得して 退院です。
訪問看護も 毎日はいります。
退院されてから2週間ほどで、食事はほとんど摂れなくなってきました。
水分は 御家族が作ってくれる野菜スープ程度となってきました。
もう残された時間は ほとんどありません。
会っておきたい家族には 会ってもらっておくよう お伝えしました。
遠方の孫、ひ孫など 会いに来てくださいました。
ある朝、いよいよ呼吸が弱くなってきました。
往診にでかけてみると、Rさんのお宅には 御家族がおおぜい集まっておられました。
昔の楽しかった思い出や 感謝の言葉など 話しかけてあげてください。
その日の夕方、Rさんは静かにお亡くなりになりました。
娘さん達によると、亡くなった時に着る服装というのは、日本式と中国式とでは 違うんですよ、ということでした。
娘さん達と訪問看護さんとで Rさんにきれいに服を着せてあげておりました。
【解説】
外国語しか話せなくて 医療会話に手間取るケースというのは 時にありえます。
英語なら 何とかコミュニケーションとれる、という医療機関は 多いと思います。
その他の言語では、通訳として御家族・友人・同僚などが同席されることも多いですし、
事前に受診がわかっていれば 「医療通訳の派遣制度」なども 依頼できるかもしれません。
今では スマホの自動翻訳などを使えばよいので 外国語の受診でも、そう困らなくなってきています。
翻訳レベルは 「グーグル翻訳」レベルと思いますので、細かいニュアンスまで翻訳で伝わるかどうかは やってみないとわかりませんが。
Rさんのためにポケットサイズ音声翻訳機を買う? どうする? と思いましたが、
Rさんは 日常会話程度なら何とか出来たので、買わずにすませることが出来ました。
それと。
中国式と日本式とで服装が違う、とのこと。
言われてみれば そういうことも あるでしょうね。
Rさんの葬儀は どんな御様子だったのでしょうね。
【業務連絡】医師募集。内科・外科・総合診療科・緩和ケア科に限りません。
新型コロナ対応をきっかけに
「医療の在り方」、「医療の目指すべきもの」について
考えを深めた方・考えを改めた方も多いと思います。
もし
「今は東京や大阪(等)で働いているが、地元広島に帰って働きたい」
とか
「病院勤務医よりも もっと患者に寄り添いたい」
「今の病院の勤務形態では 体を壊してしまうのではないか」
「これだけ命を張って働いているのに、むくわれないというのは、病院というのはおかしいのではないか」
など考えはじめた医師の方は どうぞ当院に御連絡ください。
「給料よりも 生きがい・働きがい」を求めている方、よろしくお願いいたします。
(「給料優先」という方は、イナカの病院なら「過疎地手当」が上乗せされますし、
医師求人サイトで探されると「高給優遇」のところは見つかると思います。
ただし、高給優遇で求人するということは、キツい職場、あるいは やりがいは少ない職場だ(やり手がいない)という覚悟は必要です。)
広島はコンパクトな街で、衣食住、そして働くにも子育てにも いい所だと太鼓判押せますよ。
当ブログを御覧になり、院長の理念に賛同された方、どうぞ御連絡よろしくお願い申し上げます。
在宅診療は楽しいですし、在宅緩和ケアは やりがいありますよ!
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