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心にのこる出会い158 老衰死を希望されていたKさん

2023年01月29日  

昨日は やっぱり寒かったですね。
雪がときどき舞いました。
己斐の上のほうでは、日陰の道路には雪が残っている所がありました。
でも、それはきっと 雪ではなく 凍結だろうと思いましたが・・・。
もちろん そんな道路の端っこは走らないようにしましたので、問題なし、でした。

 

さて、毎月 最終日曜日は 心に残る出会いです。

Kさんは83歳。
息子さんと二人暮らしです。
当院には10年前から 高血圧で通院されておりました。
便秘気味になってきたため検査を受けたところ 大腸癌でした。
しかも、多数の肺転移も判明しました。
癌からの出血で貧血になってしまうものですから、大腸部分だけ切除し、
肺転移については 治療はしないことを選択されました。
術後は定期的に病院にも通い、CT検査などを受け、経過観察がおこなわれました。
肺転移は じょじょに大きくなっていきます。

症状としては、2年ほどは 安定した状況が続きました。
ときに便秘したり、下痢したり、という程度。
そのうちに咳も出てくるようになりましたが、とくに治療・薬は希望されませんでした。
もう年だから、好きに生きたいのよ。

年が明けると、急速に衰弱してきました。
食事量が極端に低下してきました。
足の力が落ち、浴槽をまたいで入ることが 出来なくなってきたのでした。
通院も難しくなり、訪問診療が開始となりました。
Kさんの御希望を聞いてみますと、
動けなくなったら 家ではむずかしいかな、とKさん。

Kさんは まだ介護保険の申請をしていませんでした。
当分 入浴していない、お風呂が一番困っている、ということでしたので
地域包括支援センターに電話で状況を説明し、介護保険申請を依頼しました。
この状況では 「要介護」認定が出るでしょう、ということで
地域包括支援センターがケアマネージャを選定し、ケアマネージャも決まりました。

その数日後には、ヨーグルトと蜂蜜しか 口に出来なくなっていました。
食べたいと思わない、のだそうです。
この段階で 「人生の最期を どこで、どうやって すごしたいか」、
Kさんの希望を再確認しました。
みんなに手がかかるけど、病院よりは家がええですね。できりゃ家のほうがええ。
入院もしない、点滴もしない、自然に。

はい、それは だいじょうぶですよ。
みんなで その方向で 支えますよ。

会っておきたい人がいれば 会っておくようにお話したところ、
兄弟は全員 亡くなった。もう会いたい人はいない。
とのことでした。

ケアマネージャさんが手配して デイサービスを利用させてもらって入浴。
気持ちよかったー。
その数日後には ほぼ動けなくなり、介護用ベッドも導入して。
こうしてKさんは 御自宅で 息子さんに見守られて お亡くなりになりました。

息子さんによると。
Kさんは 昔から「老衰で死にたい」と 言っていた、とのことでした。
最期は入院もしたくない、点滴もしたくない、という本人の希望に沿えることが出来ました、とのことでした。

 

【解説】
癌の経過では、食べられなくなる、動けなくなってくる、というと
そこからは急速に状態が低下していきます。
本人・御家族もその覚悟が必要となりますし、在宅チームにおいては 早い動き・対応が必要となります。
入浴、ベッド、排泄対応など 「そのうちに・・・」ではなく、先手先手で動けるようでないと いけません。
Kさんのケアマネージャさんは 非常に素早い対応をしてくださいました。

今、人生のどのあたりに きているのか。
本人・御家族と 在宅チームが 認識を同じにしておかねばなりません。
そのツールが 大井裕子先生の提唱している IMADOKO です。
https://ameblo.jp/hospice66yuko/entry-12779574827.html

入浴が難しくなってくれば IMADOKO ② です。
トイレ歩行が難しくなってくれば IMADOKO ③ です。
急カーブで下り坂になっていきます。
IMADOKO ② からは 残された時間は1~2か月。
IMADOKO ③ からは 残された時間は2週間程度。
ほとんど食べられなくなれば 数日です。
図で視覚的に状況を共有できますので、IMADOKOを もっと活用していきたいと思っています。

 

先週の花

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