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モルヒネの使用方法

2014年11月19日  

この2日間で
モルヒネの注射 についてテレビで2回 見ました。
在宅緩和ケア医として違和感をおぼえています。
その違和感につき、御紹介します。

まずは、後から出てきたニュースから。

処方の2倍のモルヒネ投与、男性患者が翌日死亡
読売新聞 11月18日(火)20時43分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141118-00050061-yom-soci
広島市立安佐市民病院(広島市安佐北区)は18日、末期がんの男性患者(75)に、処方の2倍量のモルヒネを約6時間にわたり投与するミスがあった、と発表した。
***


モルヒネの持続注射の使用については
大きく2つのパターンがあります。
1:鎮痛剤の内服が困難になってきた場合。
2:鎮痛剤の効果を急ぎたいが、その必要量がわからない場合に
まず注射で開始し、1-2日でその患者さんへの1日必要量を確定し
内服薬に切り替えていく場合です。
今回記事は1のパターンです。


この患者さんについては
モルヒネの持続注射と、鎮静剤の持続注射もおこなわれていた
と記事に書かれています。
ベースで流れている輸液もあるでしょうから
3種類の持続注射につながれています。

スパゲティ症候群。
言葉は聞かれたことがあるのではないでしょうか。
末期状態のベッドで、いろいろな種類のチューブやコードに
ぐるぐると繋がれている状態のことです。

静かに穏やかに亡くなられる場面において
そんなに注射や何やかやのチューブ類が必要でしょうか。
在宅では、そんなものなくても
自然に穏やかに亡くなることは可能です。
病院では、今でもスパゲッティ症候群なのだなあ、
というのが私の感じた違和感です。
心電図や酸素濃度のモニター、
導尿のためのチューブなども接続されていることでしょう。
枕元ではモニターがピコピコ24時間鳴っていることでしょう。
病院では、
自然に、静かに、穏やかに亡くなるということは
出来ない状況なのですねえ。



この記事では
「モルヒネ量を間違えるなんてけしからん!
それが原因で死亡したのではないのか!」
という論調になってなかったのは救いです。

モルヒネの効果が弱いと判断すれば
増量していきます。
この場合の限界量はない、とされています。
通常は30%-50%ごとの増量を繰り返しますが、
その前段階で
「臨時使用」の量や回数を勘案します。
臨時使用の量や回数が非常に増えている方の場合には
倍の量に設定する、ということは ありえない話ではないです。
つまり
倍の量にしたことが死亡の原因である、とは
この場合のモルヒネ量については ほぼ考えなくてよいと思われます。
とくに
すでに鎮静剤使用がはじまっている段階の方ですから
「最期の苦痛を何としてもとってあげましょう」、
という段階での薬剤使用です。
モルヒネの量にかかわらず、死期は同じであっただろうと思います。


以上のように考えてみれば
この病院側発表を取り上げてニュース報道する価値・意義は
はたしてあるのだろうか、
ということも違和感です。
なにか一般国民にニュース報道として知らせる意義はありますでしょうか。
誤薬・誤投与は、もちろんないほうがよい。
それを今後防ぐにはどうすればよいか、
院内のヒヤリハット委員会/事故委員会の中で
報告・検討されるレベルではないでしょうか。


長くなってしまいました。
2つ目のモルヒネ注射のテレビについては明日に。

福山のおみやげ
ばらジャム

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★新型インフルエンザ情報
とくに新しい情報はありません。

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