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心にのこる出会い161 食べられなかったKさん

2023年05月28日 , 

カープですが。
森下投手に勝ちがついて、良かったですね。
今日はアンダーソン投手です、応援しましょう!

 

さて、毎月 最終日曜日は 心にのこる出会いです。

Kさんは89歳。
定年後は登山したり、庭の手入れをして わりと活発に動いていたそうです。
ところが、85歳をすぎてから そけいヘルニア手術やら 肺炎やらで
入院を繰り返すようになりました。
脚が弱り、外に出ず、閉じこもりとなってきたのでした。
最初頃は 「運動特化型」デイサービスを利用されたそうですが、長く続かなかったそうです。
通院以外には 外に出ることが なくなっていました。
妻が日々 介護します。

あるとき、黒い色の便が出ました。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃癌など 上部消化管出血が疑われます。
(血液が胃酸に触れると 黒色になります)
すぐに病院に紹介され入院・精密検査となったのですが、
出血の原因は 判明しませんでした。
貧血に対しては 輸血をおこなって。
ところが、運悪く 入院中に新型コロナに罹患してしまい、
食事量も落ち、歩行も不能となってしまいました。

食事量はだいぶ回復したから退院しましょう、という話になりましたが
妻が体調を崩してしまっており、自宅には帰れません。
そこで 「施設」に退院、ということになったのでした。
退院とともに 当院に訪問診療の依頼があり、私たちのはじめての出会いです。

病院からの紹介状には 食事量5割程度、と書かれていました。
しかし、目の前のKさんは、やせて ヘロヘロです。
活気も感じられません。
実際に、退院日の昼食は 1割ほどだった、とのことでした。

こりゃー、食事5割なんて とても無理だな。
栄養補助の缶を 処方します。
この缶が どれだけ飲めるかが 勝負です。

 

しかし、数日後でも やはり食事は1割くらいが やっとです。
栄養の缶も ほとんど飲めません。
Kさんは、わずかな動作でも 肩で息をするような状況となってきました。

このままでは体は持ちません。
御家族に状況を説明し、相談です。
退院時には病院から詳しい説明はなく、「帰っても大丈夫になったので帰りましょう」、という話だけだった、とのことでした。
再度の入院治療を希望されましたので、病院に連絡し、同日 再入院となりました。

その1ヶ月後。
病院から 「Kさんが死亡退院されました」と連絡がはいったのでした。

 

【解説】
どんな動物でも同じことですが、 食事を摂れなければ 体は持ちません。
ほぼ寝たきりの人が 食事だけはモリモリ食べる、ということは 通常はありません。
どれだけの量を食べられるのか、で 「そろそろ寿命」と覚悟する必要があります。

ここで、
「誰が食べさせているか」も 大事なポイントとなります。
自力で十分な量を食べられなければ、誰かが食事介助するでしょうか。
入院では、看護師という「専門家」が 食事介助をしているわけです。
自宅では 御家族が食事介助する場合もあるでしょう。
では、施設では どうでしょうか。
特別養護老人ホームや グループホームでは 介護職員という「プロ」がいます。
しかし、それ以外の施設では、 プロが食べさせてくれるとは 限りません。
介護付きの老人ホーム、サービス付き高齢者住宅では 食事介助してもらえるかもしれません。
しかし、単なる有料老人ホームや 高齢者集合住宅では 食事介助は想定されていないところが多いと思います。
「自宅では難しいので施設へ」、といっても 施設はいろいろ種類があるのです。
どういう施設を選ぶのか、よく説明を聞き、どういう介護を受けられるのか、
しっかり判断しないと いけません。

まあ、それ以前に
本人に食べる意欲があるのかどうか、
食べさせて欲しいと思っているのかどうか、が 本質的な部分かもしれません。
Kさんは もはや寿命であった、だから食べる意欲はなかった、食べられなかったのだ と 思います。

 

昨日は グリーンカーテンの準備をおこないました。
G7期間が終わるまでは、と 準備を遅らせていたのです。
例年より3週間 遅い準備となりました。
今年は 「野菜」の収穫にトライしたいと思っています。
ですから グリーンカーテン自体は 例年よりも 役に立たないかも、です。
何事も チャレンジ、チャレンジ!

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