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心にのこる出会い162 頭部打撲のあと認知症がひどくなったSさん 

2023年06月25日  

カープ、大瀬良投手、みごとな出来でしたね。
3位にはいるためには、 3位 巨人との差を詰めておかねばなりません。
欲を言えば逆転し3位に上がっておきたいところ。
今日は森投手です、応援しましょう!

さて、毎月 最終日曜日は 心にのこる出会いです。

Sさんは83歳。
私どもは すでに亡くなられたSさんの奥さんの 在宅主治医でしたので、
Sさんとは 顔見知りではありました。
あるときSさんは転倒して頭部を強く打撲。
頭蓋内に血腫が出来ており、入院して手術を受けたのでした。
ところが 認知症が急速に悪化してしまい、 とても家に帰って生活できそうにありません。
自宅ではなく高齢者アパートに退院することとなり、私たちに訪問診療依頼がありました。
そのアパートの自室で 久しぶりの出会いです。

Sさんは、私たちのことを 覚えていませんでした。
それどころか、ついさきほどまで入院していたことも、頭の手術を受けたことも。
若い頃に事故にあったことも、何もかもおぼえていないのでした。
なるほど、これでは元の生活には 戻れそうにないですねえ。

数年前の御自宅での生活では、毎晩 晩酌をしていることは 私たちは見て知っておりました。
しかし
「酒を飲んでいた」ことも 忘れている様子でしたので、このまま 酒なしで生活していただくことにしました。
そもそも お金がないので、お酒は買えません。
お金を節約するためケアマネージャが工夫し、昼食は弁当をとらず、ランチパックとバナナ に なっておりました。
配食弁当よりも、そのほうが安いんです。
それがSさんの好物でもありましたので Sさんは喜んでおりました。

最初のころは ヘルパーさんに連れられて 近所のスーパーまで買い物に出かけることは 出来ておりました。
しかし、じょじょに足腰が弱って、外出できなくなりました。
あるとき 床で寝転がっているところを発見されました。
どうやら足を滑らせたらしいのですが、一人で起き上がることが出来なかったようなのです。
幸い、骨折などはなく、ふだんどおりの生活に戻りましたが、
今後も筋力低下、衰弱が進行すると思われました。
今後もし何かあったときに、病院に行きたいか、行きたくないか。
Sさん本人の希望を確認したところ、「病院には行かない」と意志表示されました。

時がすぎ。
Sさんは しだいに寝たきりになっていきました。
食べる量も減ってきました。
踵(かかと)にじょくそうが出来ましたが、これは何とか処置して しのぎました。
この間も、 病院に行きたいか、最後までここにいたいか、
日を変え、職種をかえ、何度も本人意志を確認しました。

薬も飲めなくなってきて、水分が少し 飲める程度となりました。
飲み込みが悪ければ 吸引が必要になるかもしれない、と
吸引器の手配をしたところでした。
福祉用具さんが 部屋を訪れたところ、 Sさんは もう息をしておられませんでした。

Sさん、奥さんが亡くなられてからは さみしかったですね。

 

【解説】
転倒して 頭をぶつける、ということは よくあります。
ちょっとタンコブが出来た、というだけの話なら いいのですが、
「軽い打撲」のようでも 頭蓋内に血腫(けっしゅ:血の塊)が出来ることがあります。
しかも、かなりの量の血液が 貯まることもあるのです。
そうなりますと 歩行障害、発語障害、排尿障害などが出ることもありますし、
認知症が進行してしまう場合もあります。
その段階で 血腫を取り除く手術を受けると、
完全に元通りに戻る人も いないことはありませんが、
以前の状態までは 戻らない人が多いです。
目に見える血腫部分のほかにも 脳にダメージが生じているのであろうと思います。

頭部打撲のあと半年くらいは 「あれ、何か変だな?」と感じれば
頭のCT検査を受けましょう。
じわじわと 血がたまっているかもしれません。
何か変だな、と感じるのは 本人ではなく、周囲の人の気づきです。

 

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