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老人ホームに医師が来ない時代に

2014年02月27日  
雨ですね。
花粉やPM2.5の症状が多少改善され助かります。
昨日は関西・北陸・東北などで
PM2.5のニュースがたくさん流されましたね。
しばらく続きます。
予報に御注意ください。

さて、
4月からの医療費(診療報酬改定)は
施設医療にとっては激変をおこす可能性のあるものです。
施設の医療費が、これまでの1/4に減額となっているのです。
少し解説しておきます。

ここで、施設というのは
有料老人ホーム、認知症グループホーム、サービス付き高齢者住宅
といったものを指します。
(特別養護老人ホーム、老健などの介護保険老人施設は従来どおりです。)
こうした施設に入所中の方は
通院が難しく、訪問診療で対応することが多いです。

で、
今回の医療費改定で
施設への訪問診療費は半減ないし半減以下、
在宅医療の管理費(24時間365日体制の費用)については約1/4となっています。
施設で1名のみ診察した場合には従来とほぼ同様ですが
2名以上の場合に管理費が1/4になるのです。
合算しての概算では
2名を診察した場合には1名の場合の半額。
(1名あたり半額、ではないですよ、
2名の診療費合計で1名分の半額です。)
3名を診察した場合には1名の場合の3/4.
4名を診察すれば、やっと1名の診察費と同じ、
となります。

1名診察した場合にくらべ2名診察では半額にしかならない、
というのは あまりにオカシイ仕組みです。

これまで、施設での医療はもうけすぎである、という批判はありました。
おいしい所だけ摘み取り、患者が悪化すれば病院に放り出す、という
「ブラックな診療所」は確かに存在していました。
昨年8月の週刊朝日の在宅医療特集号にて
抱える患者数が莫大多くて、でも看取り数の極端に少ない診療所
というのが これに相当すると考えていいでしょう。
広島県内にも、そういう診療所はあります。
しかし
高齢化による看取り場所の確保、という視点で
在宅看取り、施設看取りを政府は推進してきておりました。
多くの診療所は、まじめに取り組んで、看取りの実績も積んできているのです。
悪貨が良貨を駆逐する。
今回は、その「悪貨」を駆逐するのが目的なのでしょうが、
多くの「良貨」にも影響が及びます。
採算性の高い部門で得た収益を
採算性の低い部門に充ててがんばっている医療機関も多いのです。
たとえば
当院は医師の訪問診療に薬剤師が同行します。
看護師が同行する診療所も多いです。
この同行看護師、同行薬剤師に対しては
診療報酬は算定ができません。
無料サービスであり、人件費の持ち出しとなるわけですが
質の高い在宅医療の実現のためには必要なことだ、
と考えて実践をしているわけです。

さて、
施設の医療費が1/4に下げられると、
どういう現象になると思いますか?

施設医療から手を引く医療機関が出てくるのです。
施設というのは、在宅と違って
本人と家族の関係が遠くなっています。
ですから
何かあった時に、家族への連絡などは在宅以上に時間がかかります。
在宅だと御家族に少しずつ何度も説明でき、
家族も毎日 患者の状態の変化をみていますから
「今後こうなります、この方針でいきましょう」、
という時の方向性の違いがあまり出ないのです。
しかし
施設入所者は 本人と家族のふだんの関係性が薄いですから
御家族に状況を理解してもらうだけでも一苦労です。
時間もかかります。
病状が悪化した時に、ふだん患者を見ていない「遠くの親戚」ほど
施設や医療者に対して 不平不満を言うことが多いのです。
ですから
施設運営側も 何かあったらすぐに医師に連絡を入れ
対応を求めてくることになります。夜間でも休日でも。
在宅患者よりも施設患者のほうが対応は大変だ、という一面があるのです。

診療報酬が激減し、でも患者対応はこれまでどおり時間をかける必要がある。
これでは やってられません、ということになります。
これが収益基準を下回るラインとなれば
施設の医師を辞退する、ということになります。

実際に首都圏では、今回の医療費改定が発表になってから
施設医師を辞退する電話がじゃんじゃん鳴っているそうです。
3月いっぱいで施設から手を引きます、と。
広島では、どうでしょうかね?

後任の医師で良い人が見つかればいいですが、
これまでと同様の医療が提供されるとは限りません。
低い報酬であることを前提で引き受けるわけですから
最初から「ここまでしかやりませんよ」
という条件を出してくる所もあると考えられています。
つまり
「夜間や休日は対応しません、看取り対応しません、
何かあったら救急車で病院に運ぶ、
それでもいいなら引き受けましょう」、と。
つまり、施設医療について「安かろう悪かろう」が実現してしまうわけです。
「老人ホームには(時間外や休日には)医師は来ない」
という時代となります。

これでは
施設での看取りを増やそうという政策とは逆になりますし、
施設からの救急車の依頼が増え救急病院がパンクすることになります。

今回の診療報酬改定にて
施設看取りの減少、
地域救急医療の疲弊・破たん
につながる危険性が指摘されています。
広島ではどうでしょうかね?

もう少し情報が出てきて、4月からの制度が確定してくれば
また取り上げて御紹介します。

私どもは、理念に基づいて行動しております。
4月からも、これまでどおり在宅医療・施設医療に取り組みます。
在宅や施設の医療について、
なにか相談したいことがあれば
遠慮なく御連絡ください。

奥出雲の 編集どぶろく
デイリンク吉島店で購入。
どぶろくを見れば買ってしまいますね。
開栓に手間暇かかりますので、まだ飲めていません。
P1060243.JPG
★インフルエンザ情報
先週から今週にかけての学級閉鎖は
B型インフルエンザのようです。

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