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iPS細胞臨床応用の誤報問題その1

2012年10月29日  

昨日は心配したほどの雨ではなく、よかったですね。
白神社の祭りに行ってきました。
りんご飴、タコ焼き、ベビーカステラ、
それと江田島のたこ天、いが餅。
例年通りのお楽しみです。
今日29日が本来の祭りの日です。

さて、
誤報問題も、ピーク過ぎましたかね。
こんなの、本質的には報道する価値ゼロなんですけどね。
報道すべきは
iPS細胞についてわかりやすく(原理)、
どんな疾患に応用が可能か(意義)、
その臨床応用にはいくらくらいのお金がかかるのか(実用可能性)、
どんな副作用・問題点が想定されるのか(乗り越えるべき課題)、
などについて
マスコミは伝える意義はあると思うのですけど。

iPS細胞の臨床応用をやった、と発表した森口氏、
その発表をうのみにして新聞で報道した読売新聞。
とくに読売新聞科学部の程度が低い、
と断言しておきましょう。

その理由です。
科学の世界では(医学も科学の一分野です)、
誰が一番乗りか、ということに価値があります。
その発表は、内容が重要であればあるほど
権威ある一流雑誌・学会誌に投稿されます。
(これら雑誌・学会誌はインパクトファクターというランク付けがおこなわれており、
すぐれた業績を二流雑誌に投稿することはありえない世界です。)
いつ投稿され、いつ編集部が受理したのか、
ということも論文には明記されます。
誰が一番乗りか、という論争の証拠となる情報だからです。

ですから、
今回の山中教授たちも
「論文が雑誌に掲載されるまではじっと待つしかなく、
気が気でなかった」、
という内容のことを述べています。

では、
学会発表というのはどうでしょうか?
実は、医学の世界では学会発表というのは「屁」です。
成果を発表したうちに入りません。誰もそんなことでは評価しません。

アメリカでは、新発見があれば、
まず論文に発表し(少なくとも投稿し受理されてから)、
その後に学会で発表して学会で議論を戦わせます。
学会というのは公表された論文・結果に対する議論の場なのです。
例外的に癌関連の学会で
ある治験プロジェクトについての解析結果などは
まず学会発表され、その後論文化される例もありますが、
それは速報に価値(公共性)があると思われるためであり
また、治験プロジェクトは著者独自の「新発見」とは言えませんので
ノーベル賞とは無縁の世界の発表内容です。

つまり、
世界初のiPS細胞臨床応用6例!
なんていうのが
論文でなく学会発表、という時点でオカシイと
アメリカで学会発表経験のある者ならわかるのです。
(私もアメリカで発表したことあります。)
それも、
「ポスター発表」というのは
「誌上発表」に次ぐ下から2番目ランクのチンケな発表です。
優れた内容の発表ならば
ポスター発表から「口述発表」に繰り上がるし、
(自分の口で話し説明する時間をもらえる、という意味です)、
さらにはシンポジウム発表に選ばれたりします。

ときどきいるのですよ、
自分の研究を新聞社に売り込む人が。
今度の○○学会で発表します、と。
それに飛びつく新聞社もあります。
でも
学会のよっては、
「学会費さえ払えば誰でも発表できる」
という学会もあるのです。
トンデモ科学の内容であっても発表できる学会もあります。
しかも学会会場の議論でコテンパンにされても
それは記録として残り伝わることはありません。

学会で発表します、というだけなら、それは「屁」です。
それを取り上げる新聞記事も「屁」。
新聞社には、しっかりしてほしいものです。

極 黒豚めし。
鹿児島産黒豚の柔らかさ・旨さを存分に味わえるものです。
http://rail.hobidas.com/travel/ekiben/archives/2011/02/post_165.html
白神社の祭りの帰り、フレスタで購入。
a kurobuta.jpg
★新型インフルエンザ情報
とくに新しい情報はありません。

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