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心に残る出会い136 入院するたび暴言暴力を繰り返したOさん

2021年03月28日  

カープ、2戦目で勝利、いいですね!
昨日も 試合の終わりごろにちょこっとラジオ聞けた、という程度です。
土曜日午後も忙しく往診・訪問診療で走り回っております。
今日は野村投手です、応援しましょう!

 

さて、毎月最終日曜日は 心に残る出会いです。

Oさんは87歳。
アパートで一人暮らしです。
1年前に肺炎で入院したのですが、その時 肺に変な影が見つかり、肺癌と診断されたのでした。
手術は拒否され、放射線治療だけが施行されておりました。
それから半年後に、肺内に転移が多数出現してきました。
もはや治療手段はありません。

Oさんは、それから しばしば高熱が出るようになってきました。
熱と脱水でぐったりして入院、点滴して元気が出ると暴言・暴力、という入退院を
何回も繰り返すようになってきました。
今回の入院では、もっと暴言・暴力がひどくなってきて、
点滴は自分で引っこ抜く、看護師に対しては点滴台を振り回す、など
入院の意義が望めないほどの行動となりました。
今後はもう入院での引き受けは困難だ。
本人も、早く家に帰りたい。また次回の状態悪化時の入院は希望されませんでした。
こうして在宅看取りの方針となりました。
予後(残された寿命)は1-2週間と予想されたので、
退院にあたり、在宅医・訪問看護は必要でしょう。
ということで 当院に依頼がありました。
OKです、すぐ退院前カンファレンスやりましょう!
なんと 依頼から2時間後には 病院で退院前カンファレンス開催となりました。
その退院前カンファレンスで私たちのはじめての出会いです。

早く帰りたい、という本人の御希望が再確認できました。
いいですよ、今からの退院でも かまいませんよ。
というのが 在宅チームの意見でしたが、病院の事情もあり 翌日の退院となりました。
退院が決定すると、Oさんは満面の笑顔となったのでした。

退院して家に帰られると、すぐに マンゴープリン、あんころもち(とても小さい)を食べられました。
帰った、良かった。と話されました。
こういったものが 食べたかったんですね。

御自宅では暴言・暴力など まったく見られませんでした。
病院側からは、「気むずかしい方です」、と伝達されていましたが、
いえいえ とっても落ち着いておられました。

Oさんは、部屋でおだやかにすごされました。
退院して4日目。
お風呂に入りたいなあ、とOさんが言ったそうで、
すぐに訪問入浴が手配されました。
翌日 入浴できたOさんは、とてもうれしそうだったそうです。

食欲は回復せず、ほとんど食べられず、飲めなくなってきました。
起き上がれんようになったんよ・・・、と 少し悲しそうに話されました。
退院して10日目。Oさんは御自宅で静かにお亡くなりになりました。

 

【解説】
意識がはっきりせず、変な行動をとる高齢者は 珍しくありません。
暴言・暴力、点滴をひっこぬく、など 珍しいことではないのです。
本人は あとで その時の行動や発言など 全く覚えていないのが普通です。
これは 「せん妄(せんもう)」と呼ばれる状態です。
高齢者のせん妄は、熱や脱水、肺炎など、身体的な不調を原因として生じることも多いです。
また、環境が変わると おこりやすいです。
そうなりますと
せん妄の解決策は 「できるだけ早く元の状態に戻すこと」に尽きます。
長く入院していても いいことにはなりません。
一刻も早く自宅に戻る、というのが 実に有効な手段なのです。

Oさんの場合、自宅では全く暴言・暴力などみられませんでしたので
もともと入院には向いていない人であった、ということなのでしょう。

急いで退院、在宅チームの導入を、という場合には
病院の相談室、あるいは在宅チーム(訪問診療医、訪問看護、ケアマネージャなど)に御相談ください。
せん妄の場合には、医師から説明、同日に退院となることが多く、そのほうが本人のためでもあります。
今回の病院は 病院の都合で翌日退院だったので、「お役所仕事」と言えるでしょう。
もちろん当院もすぐ対応しますので、在宅医が必要な場合は 遠慮なく当院に御相談ください。

 

吉島公園は 満開です。
土手は まだ満開に至っていない木も多いですが。
緩和ケア薬剤師は 花粉が付着しにくいスベスベ素材のアウター。
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高齢者は黒っぽい服を買ってはいけません!

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