ブログ

緩和ケア医 今日のお勉強

2009年03月31日 , 

アレルギー疾患のゲノム解析 その理論と方法
アレルギーの臨床 2009年3月号
筑波大学 野口恵美子先生

要点
1990年頃のヨーロッパでの研究で、喘息の罹患率は6.9%だが、
父親が喘息の場合には子の喘息発症危険率は 2.9倍、
母親が喘息の場合 危険率は 3.2倍、
両親ともに喘息の場合 7.0倍  と報告されている。
このように遺伝因子の影響が大きい疾患があるわけで、遺伝子研究が重要である。
これまで2003年にヒトゲノム解析は終了し、
SNP(単塩基多型)などの方法で研究がおこなわれてきた。
10年後には、ヒト一人のゲノムを解析する費用は10万円程度に
なると予想されており、
私たちは個人の全てのゲノム配列という「個人情報」を
手に入れる時代が 間近にきている。

遺伝子情報を手に入れるというのは、基本的には良いことだと思います。
Aという病気になった時、Bという薬が効きやすいかどうか、
ということが事前に予測できれば 治療に大いに役立つことでしょう。
将来Cという病気になりやすいかどうか予測できれば、
その点に注意して健康管理をおこなうことにより
病気の予防や早期発見・早期治療ができるかもしれません。

しかし、良いことばかりではないかもしれません。
将来Dという病気にかかりやすい遺伝子であることを理由に
就職や結婚において 差別される場面が絶対にないとは 言えない現状でしょう。
=遺伝子差別=

パーソナルゲノム時代においては、
情報共有や情報管理、倫理面でのしっかりした対応が必要条件となります。
まずは差別のない社会を実現しないといけませんね。

緩和ケア医 本日のお勉強

2009年03月30日 , 

胸部CT画像で発見される限局性GGO病変の経過観察
日本胸部臨床2009年2月号
栃木県立がんセンター 中原理恵 先生ほか

要点
マルチスライスCTという、胸部画像検査の進歩により、
小さい肺癌が検出できるようになってきた。
それはよいことなのだが、明らかに癌とは言い難い状態の画像も
たくさん発見されることになってきた。
そのひとつが、GGO病変(すりガラス状に見える病変)。
経過観察についての、わかりやすいガイドラインも提唱されている。
大きさ8mm以上のGGO病変では、
3ヶ月、9ヶ月、24ヶ月後にCT等の検査。

肺のついての検査としては、CT検査が一番おすすめの検査です。
通常の胸部レントゲンでは、ある程度大きな病変しか指摘できません。
癌の早期発見をしようと思うならば、
喫煙者や癌の方(治療後も含む)は、定期的なCT検査をおすすめします。

ところが、CTでは、「明らかな癌」とは言えない小さい病変も
検出されるようになってきました。
肺の検査はしんどいものが多く、(気管支ファイバーや生検など)、
繰り返し行えるものでもありません。
そこで CTによる経過観察 がおこなわれます。

経過観察の時期については、過度に不安に思う必要はありません。
かかりつけ医の指示にしたがって検査を受けてください。
かかりつけ医が その分野の専門医でない場合には、
専門医にセカンドオピニオンを求めることも良いでしょう。

緩和ケア医 本日のお勉強

2009年03月29日  
日本内科学会雑誌 平成21年2月臨時増刊号
人類の叡智を幸せにつなぐ内科学 : 2型糖尿病の現状と課題
東北大学 岡 芳知 先生

要旨
糖尿病の多くは2型糖尿病です。
ひとつの考え方として、
1型糖尿病というのは、インスリンを分泌する膵β細胞の数が減り、
最終的にはゼロとなる疾患=インスリン注射が絶対必要。
対する2型糖尿病は膵β細胞の機能の異常、というものがありました。
数の異常 と 機能の異常 という考え方です。
ところが、2型糖尿病でも、膵β細胞の数の減少が大きく関わっている
ということが次第に明らかになってきました。

血糖を下げるホルモンは、インスリンだけです。
インスリンを分泌する膵β細胞が減ってしまうのでは、
インスリン産生量が不足してくるのは当然のことです。
この段階では、2型糖尿病であっても食事療法・運動療法だけでは不十分だ、
ということになりますね、インスリン注射が必要なのです。

糖尿病患者さんの中には、インスリン注射を非常に嫌う方がおられます。
コントロールが悪くなっても、「もう少し食事運動でがんばるから
インスリン注射だけは勘弁してくれ」 とおっしゃるのです。
インスリン注射は毎日のことだし、痛いし、誰もやりたくはありません。
その気持ちはわかります。
しかし、これまで食事・運動にすでに取り組んできた人が、
「さらにがんばる」、といっても 大きな効果は期待できません。
膵β細胞が減った状態では、インスリンを補充しないと改善は見込めません。
血糖コントロールが悪い状態で長期間経過するよりも、
早い段階でインスリン注射を導入し、コントロールを長期間良好に保つことが
あとあとの合併症を防ぐために非常に大切なことなのです。
今では、1日1回のインスリン注射も開発されています。
痛みの少ない、細い細い注射針も開発されています。
血糖コントロールが悪い方は、インスリン治療をぜひ御検討ください。

緩和ケア医のつぶやき 平和公園での花見は禁止(自粛)を

2009年03月28日  

吉島公園の桜、なかには見頃になっている木もあります。
黄金山の桜は7分咲きだそうです。
花見に行きたいものですね。

広島市内の桜の名所としては、平和公園も有名です。
一昨日 紙屋町からの帰りに、平和公園対岸を通って歩きましたが、
公園内ですでに花見をしているグループがおりました。
今週土日もかなりの人出と思われます。
しかし、
平和公園の敷地内で、花見で酒のんで騒ぐ人の気がしれません。
あなたの今いるその場所で、多くの人が亡くなった。
犠牲者追悼のその場所で、よく酒が飲めるな。
少なくとも平和公園内は 祈りの場 と わきまえたいです。

花見宴会は、どこか別な場所でおこないましょう。
(昼間のお茶とお弁当くらいまで否定しているわけではありません)

広島市医師会千田町夜間急病センター オープン

2009年03月27日 , 

広島市医師会千田町夜間急病センターが、3月23日診療開始しました。
http://www.city.hiroshima.med.or.jp/hma/yakanqq/index.html
夜間の時間帯に救急窓口を訪れる患者の大半が軽症であり、
本当に緊急・重症な患者の救急医療体制(市民病院)に
深刻な影響が出ていました。
このため、軽症患者を受け持つ場所が必要になっていたわけです。
医師会の医師が交代で勤務します。もちろん当院院長も勤務しますよ。

受付は 19:30~22:30まで  電話082-504-9990
ただし、薬は1日分しか出せません。
詳しい検査、入院は できません。

夜間普通に診療している病院もありますし、
土曜日午後も診療している病院、日曜診療しているクリニックもあります。
ちょっと調べれば、わかることなのです。
何でもかんでも市民病院へ、という考え方はやめましょう。
1カ所に集中すれば、パンクします。

市民マラソンは危険

2009年03月26日  

3月22日(日)の東京マラソンで、お笑いタレントの松村さんが倒れ
一時心肺停止になった、というニュースが流れました。
このブログは24日夕方時点での情報をもとに書いていますが、
急性心筋梗塞による心室細動でAED(除細動器)を使用したそうです。
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/entertainment/wide_show/

糖尿病や高脂血症、高血圧の方に 食事療法・運動療法のお話をしますが、
中に 「運動というからには、マラソンを走ってやろう」
と考える方が 時々いらっしゃいます。
「そうではなくて、まずは歩くところから始めて下さい、
次第に歩数を増やして、1日1万歩を目標にしてください、
いきなり走っては絶対にいけませんよ」、 と指導することになります。

肥満や高脂血症の方というのは、「長年 続いてきた運動不足」が
背景にあることがほとんどです。
いきなり短期間でもとに戻そうなんて、無謀としか言いようがありません。
なぜか?
高脂血症や糖尿病、高血圧が長く続いていると、動脈硬化が生じています。
血管の内側に、油の固まりが こびりついているような状態に
なっているのです。(プラーク と呼びます)
このプラークが破れ、血管内に放出されると、その血管の先の
細い場所で 詰まります。 血管に詰まる、ということは、
脳であれば脳梗塞、心臓の血管であれば心筋梗塞をおこすのです。
ですから、激しい運動をするよりも、肥満や高脂血症、糖尿病、高血圧を
しっかりなおす・コントロールすることが先決です。
不安定なプラークを、しっかり安定化させなければなりません。
これには、時間がかかるのです。
マラソンをするのには、まず体重を落とし、
さらに少なくとも その1年以上先にすべきです。

マラソンを甘くみてはいけません。
毎年のように市民マラソン大会では死亡者が出ています。
今回は東京マラソンで、医療スタッフがしっかり配置されていたため
すばやくAED使用ができ救命できたもので、幸運でした。
田舎道を走るマラソン大会であれば救命できなかったと思います。

今週の花

2009年03月25日  

カラー、アルストロメリア、ドラセナ

DVC00028 0324

WBC日本優勝

2009年03月24日  

昨日と本日と、午前中の医院は非常に閑散としていました。
野球のワールドベースボールクラシックの試合が行われていたのです。
午前中に来られた方は、熱や下痢など治療を急ぐ方や
野球に全く興味のない方 くらいのものでした。

同じような状況は、勤務医時代にも経験しています。
甲子園の高校野球で地元高校が出場するときなど
患者さんはほとんど来ません。
我々も診療の合間にテレビで応援していました。

大きな大会の準決勝・決勝ですので
みんなで応援、というのも いいものです。
優勝おめでとう!
石原選手、栗原選手にも出番があって 良かったです。

肺炎球菌ワクチン 接種再開しました

2009年03月23日 , 

肺炎球菌ワクチンは、入荷が遅れており、
御希望の方には、お待たせして申し訳ございませんでした。
ワクチン接種 先週から再開しています。

肺炎の原因で重要なものとして、肺炎球菌 という細菌がいます。
困ったことに、ペニシリン系など抗生物質が効きにくい肺炎球菌が増えています。
また、肺炎球菌による肺炎は、短期間で一気に重症化することがあるので
集中治療室で積極的治療をおこなっても、助からないことがあります。
肺炎球菌による肺炎は、命にかかわる、とても重要な病気です。

幸いなことに、肺炎球菌に対しては、ワクチンがあるのです。
ですから、ワクチンで肺炎を予防する、というのが良い方法です。
ところが諸外国では肺炎球菌ワクチンは常識なのですが、
なぜか日本ではまだほとんど普及していません。

ある程度の高齢となってきた方(65歳以上)、
および何らかの持病のある方(呼吸器疾患、心臓病、腎臓病、
糖尿病、悪性腫瘍 など) には 特におすすめします。
肺炎球菌ワクチン御希望の方は、まず当院にお問い合わせください。
自費、予約制となっております。
(脾臓摘出術後など、例外的に 健康保険が適用される場合もあります)

スタッドレスタイヤ終了

2009年03月22日  

昨日、スタッドレスタイヤから通常のタイヤに履き替えました。

例年12月から4月上旬までスタッドレスタイヤにしています。
往診先までの間に 坂道があるといけませんので。
広島市内は川が多く、当然 橋もたくさんあります。
橋のまわりの上り坂・下り坂、および橋の上での路面凍結が要注意です。
このため、凍結路面用のスタッドレスタイヤを選択しています。

スキー場も今シーズンはほぼ終了のようです。
もう寒くなることはない、と判断して、タイヤを履き替えました。
3月に履き替えるなんて、温暖化を体感するできごとですね。
というわけで、冬モード終了です。

082-241-6836(代表)

和平会・診療についてのお問い合わせはこちら
平日午後(診療時間内14:30~18:00)