心にのこる出会い157 最期 「いい人」になったSさん
昨日朝は 道路が凍結で、大変だったですね。
当院の職員は 全員 徒歩出勤でしたが、ツルツルすべって大変だったそうです。
とくに橋の上が凍結で 転倒する歩行者が続出だったそうです。
誰かが ツルッと やっちゃうと、その場所は 「磨きをかけた」状態となり、
次の人から ますます すべりやすくなっちゃうんですよねー。
今日も日陰は凍結している可能性があります、用心しましょう。
さて、毎月最終日曜日は 心にのこる出会いです。
Sさんは81歳。
あるとき肺癌が見つかりました。
手術を受け、比較的早期の癌だったので完治したかに思えたのですが、1年後に再発が生じました。
放射線治療をおこないます。
その1年後、こんどは肝臓などに転移が見つかりました。
そこからは抗癌剤治療です。
副作用が強く、しんどい治療であり、3ヶ月後には抗癌剤治療は終了となったのでした。
その後も病院への通院は続けていたのですが、
在宅酸素となり、通院もしだいに難しくなってきたのでした。
認知症もはいってきて、病院の予約を何度もスッポかすようにも なってきました。
通院時の酸素ボンベの管理も出来なくなってきました。
ボンベが空になって 病院で警報がピーピーなることが 数回あったのです。
そこで、病院の医療支援センターを通じて 当院に訪問診療の依頼があったのでした。
訪問看護ステーションも訪問薬局も 決まりました。
それから御自宅で私たちの出会いです。
Sさんは 一人暮らしでした。
御家族はいることはいるのですが、遠方であり、交流はありませんでした。
この時点では、Sさんは車の運転をおこない、買い物など自分で行っておりました。
約束の日を忘れたり、酸素ボンベが空になるような人が 運転を続けていてはダメでしょう??
と みんなで説得して、車は手放していただきました。
食事や 身の回りのことには 介護ヘルパーを導入です。
ベランダには プランターが何個も置いてあったのですが、
手入れができず、ほとんど枯れてしまっていました。
トマトが植えたい、という御希望で プランター1つだけ残して、あとは処分していきました。
病状は次第に悪くなります。
移動が難しくなり、ポータブルトイレも設置します。
トマトの世話もできなくなり、 小さい実をつけたのですが、食べられるサイズになる前に 枯れてしまったのでした。
出会いから半年となる頃には、食事もほとんど摂れなくなってきました。
胃にも転移しており、食べると吐き気もするのです。
果物なら 何とかいける。
ミカンがおいしい。
梨や柿も スライスしてもらって 食べました。
御自分の苦痛・苦悩についても 語ってくださいました。
痛みはたいしたことはないのだが、夜中に目が覚めて イライラすることがある。
そのイライラのため 訪問看護さんなどに きつい言葉で当たってしまったことがある。
そういう自分が苦痛である、とのことでした。
わかりました、痛みも もう少ししっかり取りますし、夜ぐっすり眠れるように調整しましょう。
その1週間後、Sさんは 「とてもいい人」に なっていました。
痛みはない、苦しくもない、先生ありがとうありがとう。
看護婦さん ありがとうありがとう。
みんなに笑顔で感謝の言葉を述べておられました。
しっかり握手し、ぎゅっと手を握ってくれたのでした。
その2日後、Sさんは御自宅で 静かに永眠されたのでした。
Sさん、もうちょっとでトマト食べられると思ったのに それだけは残念でしたね。
【解説】
最期の最期、という場面で まわりに感謝の言葉を述べられる方というのは おられます。
珍しいことではありません。
枯れるように亡くなられる終末期の方には、そういう おだやかな時間があります。
そして、その1週間以内には 亡くなられることが多いです。
おそらく その時点では、本当に苦痛は消失しているのではないか、と思います。
「薬の効果」、とかではなく、 「自然の経過」として 体も心も安楽で 幸福感にあふれる方というのが 多いようなのです。
今日の○○さん、「いい人」になっていたね。
じゃあ もうそろそろだね。
在宅チームでは そういう会話をすることが あります。
「先生 ありがとう」って言ってくれる人は あまり多くない印象ですが、
「看護婦さん、ありがとう」、とか 「みんな、ありがとうね」という声かけ、握手をされる人は かなり多い、という緩和ケア薬剤師の話です。
そのタイミングで、医師は御家族に対して 今後の数日間でおこってくる病状変化の説明などを 別室などでおこなっていることが多く、その時間を患者さんのそばですごしている看護師さんとか 緩和ケア薬剤師には 感謝の声かけ・握手されている、ということ らしいです。
12月24日 朝、広島市中区 吉島東の風景。
歩道は凍結です。
日が当たるところはキラキラしています。
【業務連絡】医師募集。内科・外科・総合診療科・緩和ケア科に限りません。
新型コロナ対応をきっかけに
「医療の在り方」、「医療の目指すべきもの」について
考えを深めた方・考えを改めた方も多いと思います。
もし
「今は東京や大阪(等)で働いているが、地元広島に帰って働きたい」
とか
「病院勤務医よりも もっと患者に寄り添いたい」
「今の病院の勤務形態では 体を壊してしまうのではないか」
「これだけ命を張って働いているのに、むくわれないというのは、病院というのはおかしいのではないか」
など考えはじめた医師の方は どうぞ当院に御連絡ください。
「給料よりも 生きがい・働きがい」を求めている方、よろしくお願いいたします。
(「給料優先」という方は、イナカの病院なら「過疎地手当」が上乗せされますし、
医師求人サイトで探されると「高給優遇」のところは見つかると思います。
ただし、高給優遇で求人するということは、キツい職場、あるいは やりがいは少ない職場だ(やり手がいない)という覚悟は必要です。)
広島はコンパクトな街で、衣食住、そして働くにも子育てにも いい所だと太鼓判押せますよ。
当ブログを御覧になり、院長の理念に賛同された方、どうぞ御連絡よろしくお願い申し上げます。
在宅診療は楽しいですし、在宅緩和ケアは やりがいありますよ!