ブログ

癌性胸水の治療

2010年04月20日 , 

カープ、中日戦3連勝、いいですねえ。
この調子でいきたいものです。
3塁側内野席に空席が目立つようです。
ここは安くしてはどうでしょうかね?
学生さんは3塁側内野席をドーンと安くし、外野席と同じくらいの価格にするとか。
学割!!

本日のお勉強
OK-432を用いた胸膜癒着術に伴いアナフィラキシーをきたした1例
日本呼吸器学会雑誌 2009年12月号
東京厚生年金病院内科 柏田 建 先生ほか
要点
子宮内膜癌の両側肺転移、両側癌性胸膜炎による呼吸困難。
胸水ドレナージに続きOK-432による胸膜癒着術を施行したところ
10分後にアナフィラキシーをおこし人工呼吸管理を要した。
これまで文献としてアナフィラキシーが報告されたものはないが
重篤な合併症を呈する危険性を認識することが肝要である。
(患者は72時間後に人工呼吸を離脱したが、
その4日後に癌の増悪のため永眠された。)

癌による悪性胸水(癌性胸膜炎)では、
息苦しいのを軽減してあげるために
まずチューブを胸に装着して胸水をできるだけ減らし、
その後 胸膜癒着術をおこなって胸水再貯留を防ぐ
という方法がよく実施されます。
多くの場合、OK-432(商品名ピシバニール)が胸腔内に注入されます。
多少の発熱はみられますが、
疼痛などの副作用が少なく、効果もまずまず期待できる方法で
使用実績も非常に多いからです。

ただし、製品の特性として
ペニシリンアレルギーの人にはアナフィラキシーなどアレルギー反応を
おこす可能性があります。
ペニシリンアレルギーを事前に予知することは困難なので、
率は低いのだけれども、そういう可能性はあります、
という説明をおこなって承諾書をもらって施行する、というのが実際です。

この論文を読んで、思ったこと2つ。
1:癌末期には癌性胸水をきたすことも多く、
OK-432を使用することも多いので、気を付けよう。
・・・これは全くありふれた普通の感想ですね。
医師が10人いれば10人がそう思うでしょう。

2:もし、この方が在宅医療をおこなっている人なら、どうだったか?
病院勤務医時代には、この視点は浮かばなかった、と思います。
では、少し考えてみますね。
この患者さんは、胸水の処置をおこなって、
結局7日目に癌で亡くなられています。
それだけ癌により全身状態が悪かったわけです。
7日間のうち、3日間は人工呼吸管理を受けています。
この間は、意識がない(薬で意識を落としてある)のが普通です。
最期の1日は意識がないことも普通です。
つまり、
この方に意識があったのは結果的に3日間だけであっただろう、と考えます。

もし、在宅であったならば。
最初はモルヒネを使用・増量で対応したと思います。
モルヒネは呼吸困難に効果があります。
在宅酸素療法も開始しているでしょうね。

それでも呼吸困難がとれない場合には、
翌日には 入院するか在宅医療を継続するか、
本人および御家族の希望を聞いて決定することになります。
もし入院を希望されて病院に連絡すれば、
おそらく今回と同じ結果をたどるでしょう。
同じ処置を受け同じ経過をたどったであろうと思います。

もし引き続いて在宅療養を希望された、としたならば
モルヒネをさらに増量し、
それでも呼吸困難が改善されない場合、
モルヒネの持続注射に切り替えると思います。
多少 眠気がきて、呼吸苦が軽減される程度までは増量を続けます。
さらにそれでも楽にならない場合、
鎮静 を提案することになると思います。
苦しみをとってあげるために、眠る注射を使用しましょうか?
という段階になるわけです。
3日目までには、そういう相談になっているでしょう。
実際に鎮静が開始されるのが3日目、と仮定して
そこまでは意識はあります。
つまり、意識があるのが3日間。

この計算では、仮定条件が多いですが、
胸水に対する積極的治療をおこなっても
(入院し胸水チューブを挿入し薬を注入する治療方法をおこなっても)
モルヒネや鎮静剤での治療だけをおこなっても
「本人に意識がある日数」には変わりがない、ということになります。
さらに、在宅では鎮静が必要ない場合が多いのです。
鎮静剤を使用することなく、最期のほんの直前まで
意識があって会話をしていたというケースはいくらでもあります。
自宅と病院とでは、苦しみの程度や感じ方に、かなり差があるのです。
家にいる安心感や満足感が そうさせているのでしょうか。
その場合には、意識がある日数は在宅のほうが長い、ということになります。

状態が悪く、もうあと数日、せいぜい1週間程度しか見込めません、
という段階に至っては
はたして胸水チューブを挿入するなどの治療は
意味があるのだろうか?
いまさら痛い思いをしていただく意義はあるのだろうか?
というように思いました。

「本人の希望したように自宅で看取ることができて本当によかった。
最期も苦しまず本当に楽そうで。ありがとうございました」、
と おっしゃる御家族が とても多いのです。
在宅医療には 人工呼吸もチューブ挿入もありませんが、
だから不幸だ、ということではないのです。
むしろ、そういうものがないからこそ幸せな最後の時間を共有できるのではないか、と
思ったりしています。

今週の花 モッコウバラ、ツバキ、フリージア、ハウチワカエデ。
100419_154737konsyuu mokkoubara.jpg
★新型インフルエンザ情報
期限切れ新型ワクチン捨てられず…予算なく、いまだ保管中
4月19日1時54分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100419-00000504-san-soci

すでに輸入ワクチンは使用期限が切れてきています。
廃棄にもお金がかかるのだけれど
厚生労働省は廃棄費用を計上していなかった、とのことです。

しかし、保管にもお金がかかります。
廃棄が遅れれば遅れるだけ、保管費用がたくさんかかります。
期限が過ぎたら捨てる。
こんな簡単なことが、なぜできないのか、不思議ですね。
コンビニ業界、食品業界の人からみると
信じられない事態でしょう。

もっとも、コンビニで、まだ食べられる弁当を
賞味期限切れというだけの理由でどんどん捨てている、
というのも問題だ、とは思いますが。

肺炎予防推進プロジェクト「怖いぞ、肺炎! 予防が大事」キャンペーン

プラネタリウム夕凪の街 桜の国

2010年04月19日  

昨日は、
こども文化科学館プラネタリウム はやとくんのおつかい
を見にいきました。
RCC本名アナウンサーがナレーションを担当している番組で
じつはまだ見に行ってなかったのです。
最終日の最終回投影でようやく見ました。
良い番組でしたよ。

こども文化科学館のプラネタリウムは、
非常に大きく立派な設備(ドーム、投影機)を備えているのですが、
ちょっと古くなってきており
プログラムは自分たちで作らなければなりません。
(コンピュータ連動、プロジェクタで投影するタイプのプラネタリウムは
市販の番組を購入してくれば投影ができます。)
毎シーズン オリジナル番組を製作するプラネタリウムは
国内にはもうほとんどありません。
本当にご苦労様です。

さて、こども文化科学館は開館30年です。
こども文化科学館30周年記念プラネタリウム番組が
夕凪の街 桜の国
です。
原作は こうの史代 さん。

いったい、プラネタリウムで どういう番組になるのでしょうか?
楽しみですね。
投影期間は4月24日(土)から9月5日(日)です。
ぜひ御覧になってください。

ちゅるるちゅーら の ラーメン、白ヒゲじいさん。
豚骨、細麺に白ネギです。
焦がしネギのトッピングは無料でご自由に。
これはおいしいので、たっぷりとかけます。
このあと数時間ほど運転して帰るので、満腹になって眠気がこないよう
替え玉はしませんでした。
P1110869.JPG
★新型インフルエンザ情報
全国でもB型、A香港型が増加
4月16日13時25分配信 医療介護CBニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100416-00000000-cbn-soci

4月16日厚生労働省の発表で、
新型インフルエンザ2009A/H1 は79.3%まで減り、
かわってB型(15.8%)、A香港型(3.3%)の割合が増えている。
とのことです。

広島での実感と合致しますね。

うがい手洗いを継続しましょう。

平成の歩き方16 くつ

2010年04月18日  

カープ、2試合続けてサヨナラ勝ち!
うれしいじゃありませんか。
昨日の試合は、前半でもうダメかと思っただけに
うれしさも倍増ですね。
球場に空席が目立ちます。
行ける人はぜひ球場に足をお運びください。

さて、もう少しクツのお話。
平成の歩き方14で少し御紹介しましたが、
くつの中敷きは 取り替えることができます。
用途にあった中敷きにする、というのは
スポーツマンはごく当然のようにおこなっていることなんですよ。

大型スポーツ店にいくと、中敷きを各種売っています。
膝などに不安のある人は クッション性を上げるために
中敷きを交換することを考えてもよいかもしれません。
これは店員に御相談ください。

私は某社のくつは中敷きを交換してはいています。
そのままだと足にイマイチフィットしないんですが、こうすれば大丈夫。

ちなみに
大半の人もそうだと思いますが、
私の足は左右で大きさも形もちがいます。
スキーのときは いつも左足が痛くなっていたので
今は足にあわせて中敷きを作ってもらい使用しています。
足裏のアーチも少し高めるような中敷きにしてもらいました。
それからは痛みもなく快適に滑れるようになっています。
中敷きは くつにとって大切な要素なんですよ。

九州に行ったときに連れて行ってもらったお店。
ちゅるるちゅーら  ら・みぃえん (Chururu Chu-ra ら・みぃえん)
変わった名前のラーメン店です。
北九州市八幡西区永犬丸。 ← これも読めない地名ですね。
http://r.tabelog.com/fukuoka/A4004/A400404/40000645/
FBS福岡放送(テレビ局)主催の九州ラーメン総選挙2008 で3位になった店です。
http://www.fbs.co.jp/kanshasai/ramen2008/
2009 というのが見あたりませんから、ランキングとしては最新でしょうか。
15時前に行ったのに、行列でした。
豚骨がベースで、魚介スープの比率を選ぶことができます。
面白い方法ですね、
何回も通って全部の組み合わせを試したくなります。
なお看板に出ているのはヨン様ではなく、ヨン様似の店員なんだそうです。
P1110873.JPG
★新型インフルエンザ情報
とくに新しい情報はありません。

肺炎予防推進プロジェクト「怖いぞ、肺炎! 予防が大事」キャンペーン

長引く咳 百日咳?アレルギー?

2010年04月17日 , 

広島市では、成人の百日咳が流行しています。
例年より、ずいぶん高いレベルで推移しています。
咳が長引くときは百日咳のことがありますので、受診してください。

本日のお勉強
成人遷延性咳嗽患者における感染後咳嗽の臨床的検討
日本呼吸器学会雑誌 2010年3月号
倉敷中央病院呼吸器内科 石田 直 先生ほか
要点
2006年7月から2年間の検討。
3週間以上、8週間未満持続する咳嗽を訴えて受診し、胸部レントゲン異常のない成人218例。
感冒後咳嗽       21.1%
マイコプラズマ気管支炎  5.5%
クラミドフィラ気管支炎  4.1%
百日咳          9.2%
全部加えると、感染後咳嗽は全体の39.4%を占めた。
家族内感染、集団内感染を予防するためにも、早期診断と適切な治療が必要であり
診断基準の確立と迅速診断可能な検査法の普及が望まれる。

他のデータでは
咳喘息     8.7%
気管支喘息   7.8%
アトピー咳嗽  4.1%
合わせるとアレルギー性の咳は 20.6% であった。
ということも報告されています。

今回の検討で、
成人の長引く咳の およそ1割が百日咳です。
広島市でも成人の百日咳が増加しています。
成人の百日咳は、小児ほど典型的な咳を示さないことがあります。
無治療だと初期には百日咳菌をまきちらすことになりますので、
同居の乳幼児などに感染をおこす危険性があります。

長引く咳は、医療機関を受診し検査治療を受けてください。
また乳幼児のワクチンは、きちんと受けましょう。

生ういろう、季節限定の桜ういろう。
下松サービスエリアにて。
P1110887.JPG
★新型インフルエンザ情報
とくに新しい情報はありません。

教科書を疑え

2010年04月16日  

昨日から、とある専門学校で
臨床医学の講義をはじめました。
木曜日午後なら、ということでお引き受けしたものです。
これまでにも介護福祉士や看護の専門学校で講義してきたことが
ありますから、講義の経験はありますが、
やっぱり準備に時間はかかり、緊張もします。
第1回の講義が無事終わり、昨夜は祝杯でした。

数年前に書かれた教科書をテキストとして使用するのですが、
けっして古い教科書でもないのに
すでに現実と乖離した内容があります。
医学の進歩は、すごく早いのです。

最新の知識、新しい考え方も講義で紹介していきますが、
それとて数年後には 古い知識 になっていきます。

教科書を疑え
先生を疑え

医療・医学に従事する者は、一生が勉強です。
みなさんといっしょに、がんばっていきましょう。

緩和ケア について
知っている、聞いたことがある、という人は
クラスで2-3割というところでした。
知名度はまだまだですね。
講義のなかで緩和ケアのお話も 少し紹介していきます。

ぼたん  きれいに咲きました。いい香りです。
100410_122146hiraita botan.jpg
★新型インフルエンザ情報
とくに新しい情報はありません。

肺炎予防推進プロジェクト「怖いぞ、肺炎! 予防が大事」キャンペーン

B型インフルエンザ 散発

2010年04月15日 , 

一昨日は午前2時すぎに在宅で看取り。
夜は、広島市医師会夜間急病センターで勤務してきました。
そのため睡眠不足で、昨夜参加したかった勉強会は欠席。
体力回復までに時間がかかります。

夜間急病センターは、胃腸炎患者も少なく、
来院患者さんの数そのものは少なかったです。
しかし、このなかに
「同室者がB型インフルエンザと診断された」、
ということで数名が受診されていました。
簡易検査してみましたが、インフルエンザは全員陰性でした。

広島市では、B型インフルエンザが散発的に出ています。
3月下旬から 9名のB型インフルエンザが確認されているようです。
また、A香港型が今シーズンはじめて確認されています。
http://www.city.hiroshima.lg.jp/shakai/eiken/kan_center/syh_graph/influ_new/inf_new.htm

A香港は症状が重いことが多いので、今後の動向に要注意です。

今週の花 コデマリ、フリージア、アイリス
100412_162125kodemari.jpg

平成の歩き方15 正しい歩き方

2010年04月14日  

申込締切日の関係で、
平成の歩き方くつシリーズの途中ですが 歩き方教室の御紹介。

歩くのに、正しいとか正しくないとか、あるの?
と思われるかもしれません。
でも、あるんですよ。
歩行中や、その日の夜、あるいは翌日になって
足、膝、腰などに痛みが出るようだと
どこか正しくない、あるいは どこか健康ではない、と
考えたほうがよいでしょう。

正しい歩き方を文章で伝えるのはむずかしいです。
そこで
健康科学館の教室を紹介しますね。

お話と実技
健康は足元から
正しい歩き方をマスターしよう!
4月24日(土)13:30-15:00 広島市健康科学館
講師:広島市スポーツ協会 体育主事 舘野美栄子 氏
申込:4月15日から電話で先着50人
082-246-9100

ぜひお申し込みください。

いただいた花 アルストロメリア
100323_095425arusutoromeria.jpg
★新型インフルエンザ情報
とくに新しい情報はありません。

肺炎予防推進プロジェクト「怖いぞ、肺炎! 予防が大事」キャンペーン

胃ろう は幸せか? その2

2010年04月13日  

昨日のブログで
栄養補給をおこなわなければ死に向かうので
チューブ栄養をしないという選択肢は選ばれにくい、と書きました。
では、栄養補給をしても効果がない、としたら、どうでしょう?

アメリカでの研究になりますが、
重度認知症患者への栄養チューブ導入(胃ろうも含まれます)は、
生存率の改善や誤嚥性肺炎の予防、じょくそうの治癒および予防、他の臨床アウトカムの改善に無効である、ということが発表されています。

簡単にいうと
認知症患者が誤嚥性肺炎をおこしたり食事をとらなくなった時に
チューブ栄養をおこなってもムダだ、ということです。

しかし、
実際にはアメリカでもチューブ栄養をおこなわれることがあり、
急性期医療をおこなう大規模病院で実施比率が高い、ということです。
JAMAという世界的に有名な雑誌に発表されています。
(JAMA2010、544-550ページ)

この記事は、私はごく最近 Medical Tribune という医学情報誌で読んだのですが、
ググッてみると
すでに訳してブログで紹介している方がおられました。
すごい人がいるものです。
脱帽です。
http://intmed.exblog.jp/9919328/
チューブ栄養挿入の病院特性は、
for-profit ownership(営利目的経営形態)、病院の規模が大きいほど、ICU使用が多いほど多い。

日本でも、急性期医療を担当する基幹病院で 胃ろう が作成される
ケースが多いと思います。
脳卒中にせよ誤嚥性肺炎にせよ、運び込まれるのは急性期病院です。
胃ろうが作成される理由の一つは、
栄養を補給するのは当然、チューブ栄養を開始しないと衰弱して死んでしまう
という医療者の意識が背景にあります。
急性期病院では栄養補給の手技・知識については研鑽し身につけていきますが、
効果がない、という結末、研究結果は知らないのです。
もう一つの理由は
この研究結果について家族が説明を受けていないことです。
栄養や水分は必要だ、口から摂れないのだから栄養チューブ挿入が必要、
という説明を受けると
そうだよな~ と思ってしまうのは仕方がありません。

医療者側が、
「この状態で栄養チューブを挿入しても延命効果、肺炎予防効果はありません」、
ということを
家族にちゃんと説明できれば
胃ろう をめぐる状況は変わってくると思います。

欧米では、胃ろうや栄養チューブの人は あまり多くありません。
これに対し、日本では胃ろう患者がどんどん増えています。
「世界中で日本だけの特殊な医療状況」 というのが
胃ろうの領域でも 生じてきています。
そして、
寿命も延びず肺炎予防もできないのに栄養チューブ挿入を受けさせられる、
それは患者にとって幸せなことなのでしょうか?

ぼたん。咲きました。
100409_171607botan.jpg
★新型インフルエンザ情報
5年以内に新型ワクチンを半年で製造できる体制を整備する、
という民主党マニュフェストが出たとのことです。

医療分野の素案明らかに-民主党参院選マニフェスト
4月12日18時54分配信 医療介護CBニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100412-00000011-cbn-soci
体制の整備にかかる費用は約1200億円、とのこと。

ワクチン確保は社会防衛である、
と言うことが今回の新型騒動で理解されたと思います。
社会の安心安定のためには、これくらいの費用は安いもの、と考えます。
半年で製造する、というからには鶏卵法ではなく
細胞工学を使用した方法でしょうかね。

肺炎予防推進プロジェクト「怖いぞ、肺炎! 予防が大事」キャンペーン

胃ろう は幸せか?

2010年04月12日  

昨日は雨でした。
花見を予定していた人には残念な天気でしたでしょう。
今年の花見も これで終わりですね。

高齢者は、何かをきっかけにして
食事をうまく食べられなくなることがあります。
消化器癌(胃癌・食道癌・大腸癌など)の進行による食物通過障害なら まあ仕方ない、
とあきらめもつくことが多いのですが、
脳卒中による意識障害や誤嚥、認知症による食事拒否などは
体そのものは まだ元気なだけに
栄養さえ補給すれば 当面は延命できる場合があります。

そこで、
栄養補給のひとつの方法として 胃ろう が選択される場合があります。
大きな太いチューブが直接胃に入りますので
細い管にくらべ抜けたり詰まったりする心配は少なく、
病院などで栄養を管理する(=注入食を流し込む)側としては
楽な方法です。
病院を退院すれば、在宅あるいは施設入所することとなります。
送り出す病院側では、 これでは在宅は無理ですね、と言うことが多く、
このため特別養護老人ホームなどの施設では
胃ろうの人がどんどん増えている状況です。
(胃ろう管理 も在宅でおこなうことは可能なんですけどね)

一時的な栄養改善が目的であればともかく、
いったん胃ろうを必要となった高齢者が
その後 自力で食物を食べられるように回復する見込みは非常に低く、
胃ろうは永続的なものとなります。
ほとんどの場合には、
胃ろう作成に至った基礎疾患の関係で
寝たきりとなり、意識もはっきりしなくなっていきます。

何が患者にとって最善でしょうか?
その人にとって、何が幸せでしょうか?
胃ろう を作る前に、しっかり検討しなければいけません。

意識のしっかりしている間に本人の意思表示があれば問題は簡単です。
胃ろうは望まない、という意思表示があれば 胃ろうが作成されることはありません。
今げんざい本人の意思表示がなくても、
過去にしっかりとした意思表示があれば これも簡単です。
どんなことをしても長生きしたい、という意思表示、
チューブ栄養や延命治療は受けたくない、という意思表示、
入院したくない、家で自然に最期をむかえたい、という意思表示。
こういった意思表示があれば、家族も医療者も
その意志に従って治療法を選択すればよいのです。

問題は事前の意思表示がなかった場合。
この場合には、周囲が本人の意志を「推測」して
決定を下していくしかありません。
そうなると、
栄養補給の提案を断る、という選択肢は選びにくいものとなります。
点滴やチューブ栄養、胃ろう は しなくて結構です、とは
なかなか言いにくい。
なぜなら、
栄養補給をしない、という選択は
ゆるやかに死へ向かう、ということを意味するからです。
死んでいく、という選択をすることは なかなか難しい。
自力で食べるための工夫はしっかりおこなうが、
それでも食べられなくなったり誤嚥性肺炎をおこせば その時は寿命、仕方ない、
という覚悟は決めにくいのです。

こういう場合、自分の身に置き換えて考えてみてはどうでしょうか?
もし自分なら、意識もない寝たきり状態で
胃に穴を開けられチューブから水と栄養を補給されるだけの毎日
というものを望みますでしょうか?

いったん誤嚥性肺炎をおこした場合には
胃ろうを作り絶食にしても 再度誤嚥性肺炎を起こす率は非常に高く
最終的にやっぱり肺炎が命取りになる、
ということを知って
胃ろうを選択されない御家族もたくさんおられます。
食べられるだけ自分で食べてもらい、点滴はしない、という選択をされる御家族も
たくさんおられます。
そういう医療手法は選択しないということで、
入院や入所は希望しない、最期まで自宅で、と希望される方も多くなっています。

胃ろうを作るのと作らないのと、
どちらの選択が本人にとって幸せでしょうか。

本日のお勉強
特集 高齢者と嚥下障害
嚥下障害と経管栄養 -PEGの適応-
日本医師会雑誌 2009年12月号
国際医療福祉大学 鈴木 裕 先生
要点
PEG(胃ろう)の対象となる患者の多くは自己決定権が行使できなかったり、
人間の根源とも言える食の享受がないことなど
通常の医療とは異なるデリケートな側面をもっている。
胃ろうは問題のすべてを解決した訳ではなく、
むしろ新たな問題を作り出している。

江波山桜。じつは江波山以外の他の場所にもあります。
写真は全国植樹祭で東千田公園に平成9年に植えられたもの。
P1120075.JPG
★新型インフルエンザ情報
とくに新しい情報はありません。
Yahooニュースで インフルエンザ と入力して検索しても
一日あたり新規ニュースが2-4件しか ひっかからなくなっています。
大半はインフルエンザそのものには関係ない記事なので
実質ニュースなし という状態になっています。

肺炎予防推進プロジェクト「怖いぞ、肺炎! 予防が大事」キャンペーン

井上ひさし氏 タバコ病で死去

2010年04月11日  

肺癌というのは、タバコ病です。
また一人、惜しい人をタバコが奪っていきました。

井上ひさし氏は、とっても大好きな人の一人です。
ひょっこりひょうたん島・・・子どもの頃のテレビ。
中国新聞に連載された ドン松五郎の生活・・・高校生頃だったかな。
吉里吉里人・・・これは大学生の時。
などなど。

昨年10月に肺癌と診断され抗癌剤治療を受けていました。
生存期間はほぼ6ヶ月でした。
肺癌のきびしい現実が ここにあります。
4月11日7時56分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100411-00000027-san-soci

1日40本以上のヘビースモーカーだったそうです。
井上ひさし 喫煙 で検索してみました。
2次情報で申し訳ありませんが、信州大学 柴野均教授のブログを御紹介します。
http://shibano.exblog.jp/10564320/

このブログで紹介されている内容に
2点、大切な点がありました。

1:
自身も病名を知っており、来年春以降の仕事復帰を目指して、闘病しているという。
(昨年12月の記事です)

その「来年春」に亡くなられているわけです。
ヘビースモーカーの肺癌治療は、非常に厳しい。
なのに「仕事復帰を目指して闘病」というのは、どうしてだろう。
担当した医師は、本人にバラ色の情報しか与えていなかったのでしょうか。
「やり残した仕事を仕上げるための時間をかせぐ」というのが
学者や作家、芸術家については 妥当な治療目標設定だったろうに、と思います。
治癒や復帰を目指していると、それがかなわない場合には仕事が未完で終わり
悔いが残ることも多いのです。
井上ひさし氏、
やり残しの整理はできたのだろうか、
悔いは残っていないだろうか、と思います。

2:
公の席で「喫煙率が半減したのに、肺ガン患者は2.5倍になっている。喫煙と肺ガンは無関係だ。肺ガンが大都会で多いのは、大気汚染が原因だからだ」といった発言を繰り返していたようだ。井上ひさしのような人でも、喫煙を正当化しようとして、こんなことを言っていたとは。
(上記ブログより引用)

喫煙者は、
自分が喫煙を続けるために 変な理屈をつけて正当化しようとします。
言い訳ですね。
もっと
癌についての正しい情報を
タバコの害についての正しい情報を
国民すべてが常識として共有する時代にしなくてはいけない、と思いました。
そのためには
タバコ1箱1000円、というのは実現可能な案です。
1000円になればイヤでも健康について、タバコの害について
お金の使い方について
考えるきっかけになるでしょうから。

禁煙については
禁煙補助薬を使用するとよいです。
館ひろし さんも禁煙にチャレンジしています。
お医者さんといっしょに禁煙しよう!

禁煙治療には条件を満たせば健康保険が適用されます。
すぐ禁煙.jp
http://sugu-kinen.jp/index.html
もちろん当院でも禁煙治療に対応しています。
遠方にお住まいの方は、お近くの禁煙治療対応医療機関も検索できます。

江波山桜。江波山気象館の手前あたりにあります。大木です。
今週末で見頃も終わり。
江波山は花見でにぎわっていました。
江波山桜で同級生にバッタリ出会いました。
P1120066.JPG
★新型インフルエンザ情報
ベンチャー企業がインフルエンザワクチン製造に進出、というニュース。
4月10日15時0分配信 河北新報
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100410-00000016-khk-l05
ワクチンは巨大企業による世界競争がおこなわれているのが現状です。
日本標準とか、護送船団方式とかではダメな時代です。
ベンチャーが活躍できる場があるかどうか、
ちょっと疑問にも思いますが、
安い早い というワクチンであれば選択されるかもしれません。
(早いというのは、新型インフルが登場した場合にすぐ製造、投入ができる、という意味です)

なお、記事では
2012年には国へワクチン承認申請をする
と書いてあります。
臨床治験をおこなわなければいけませんので
ちょっとそれは無理なのではないでしょうか、
記事提供元の言うことをそのまま書いちゃダメですよ
というのが印象なのですが・・・。
それともワクチンは特例でもあるのかな?

肺炎予防推進プロジェクト「怖いぞ、肺炎! 予防が大事」キャンペーン

082-241-6836(代表)

和平会・診療についてのお問い合わせはこちら
平日午後(診療時間内14:30~18:00)