90代胃がん 手術メリットなし
中国新聞4月15日(水)朝刊 くらし面(16面)で
「90代でも胃がん手術 治療成績良好 学会で報告」 という記事がありました。
ひどい見出し記事なので反論しておきたいと思います。
記事前段として
「90歳以上の胃がん患者の場合に、手術すべきか、患者も家族も医師も迷う。かつては患者本人への負担を考えて見送られることが多かったが、高齢化に伴って手術例が少しずつ増えてきた。」 とあります。
これまでデータがなかったので、迷うわけです。
そこで国立呉医療センターの90代の胃がん患者15名について統計をとってみた。
対象は手術6名(最高95歳)、手術なし(緩和医療のみ)9名です。
ここから導かれた結論は、
1:手術の合併症はなかった。
2:生存率は手術してもしなくても差がなかった。
(手術を受けたグループは肺炎など他の病気による死亡が続いた)
生存率/生存期間に差がないのに、手術治療成績が良好 とは、どういうことなのでしょう?
昔から「手術は成功しました、でも患者は助かりませんでした」という表現があります。もちろんブラックジョークの意味を込めて、の表現ですが。
今の外科医には、まだこのブラックジョークのような発言をされる方がいる ということなのでしょうか。
考えてもみてください。
自分あるいは御家族が90歳を超えて胃がんが見つかったとします。
「治療をどうされますか? 手術されますか? 手術してもしなくても寿命は同じですよ。」
そう言われて、あなただったら手術を受けますか?
手術受ける人なんて誰もいないと思います。
手術で痛い思いをし、術後につらい思いをし、手術による体力消耗などにより最後は肺炎で亡くなる。
手術期間と肺炎期間は入院が必要となり、家で生活する時間はそれだけ短くなる。
手術に関する費用負担もかかる。
生存期間に差がないのであれば、わざわざ手術を受ける利点が見あたりません。
それならば、手術を受けず、これまでどおり家でのんびり生活をおくったほうが 幸せではありませんか。
この記事に私が見出しをつけるとすれば こうなります。
「90代の胃がん 手術受けるメリットなし」