当院の緩和ケア薬剤師は年に数回、
市内の小学校・中学校で薬物乱用防止教室の講師をしています。
覚せい剤については
有名タレントが逮捕されたりして報道されていますが、
その真のこわさが理解されているとは言えないようです。
最近読んだなかに、以下の論文がありました。
本日のお勉強
覚せい剤関連脳梗塞の1例
広島医学 2010年1月号
広島市総合リハビリテーションセンター神経内科 加世田ゆみ子先生 ほか
要点
覚せい剤については、精神的高揚や依存性など精神症状に関連した弊害のみが報道される。
しかし覚せい剤は交感神経の過剰興奮による重大な心血管イベントを誘発する。
覚せい剤関連脳卒中は若年に生じ、機能予後が不良である。
深刻な後遺症をきたすことを強調すべきである。
機能予後が不良、というのは
がんばって治療やリハビリしても もとには戻らない、という意味です。
深刻な後遺症というのは、半身マヒ、ねたきり、意識障害/知的障害などです。
ここから以下は、この論文を読んでの私(緩和ケア医)の感想です。
高齢者の認知症の場合、
大きな脳卒中で一度に認知症/知的障害になってしまう場合もありますが
小さい脳卒中(ラクナ梗塞)を繰り返しつつ じょじょに進行する場合も多いのです。
覚せい剤関連脳卒中でも、もし同様な状況があるとすれば
大きな脳卒中で一度に深刻な後遺症が生じる場合と
小さな脳卒中を繰り返して次第に脳機能が失われていく場合がある
のかもしれません。
ヤク中(薬物中毒)の性格・人格は次第に荒廃していきますが、
もしかしたら薬物の脳への直接影響だけでなく
小さい脳卒中を繰り返しつつ
次第に進行していく若年認知症のような状態も生じているのかもしれません。
ヤクを使用する回数が多ければ多いほど 脳がやられていくのでしょう。
いずれにせよ、こうした障害は基本的に不可逆変化です。
薬物をやめても、もう戻りません。
深刻な後遺症として 残っていくことになります。
覚せい剤はおそろしい、ということを もっと知る必要があるでしょう。
薬物乱用防止教室などのご要望があれば
当院緩和ケア薬剤師まで御相談ください。
今週の花 モモ、フリージア、ユリ、ツバキ、スイセン
★新型インフルエンザ情報
2月15日の第10回 国産ワクチン出荷を希望したのは
全国47都道府県のうち7県のみ でした。
広島県は、ずいぶん前の回からワクチン希望がありません。
(ワクチンを希望する医療機関がない、という意味です)。
国産ワクチンはあまっています。
第11回出荷分の各県わりあて数量も出ていますが、完全に絵空事ですね。
希望する県はほぼゼロでしょう。
厚生労働省HP
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/hourei/2010/02/dl/info0208-02.pdf
輸入ワクチンの初回出荷については、
広島県へも出荷がされています。
あれ? 希望する医療機関が広島県内にあったのか?
→ いいえ、ちがいます。
国立病院機構などの特定病院へ国から直接出荷されたものです。
無理やり出荷された輸入ワクチン、どうするんだろうなあ・・・